第26話 怖くないダンジョン

 俺はまだ公開をしてはいないが、自分の作ったダンジョン内で魔物魔獣を倒した場合には死体が残らず、確率でドロップアイテムとして肉や素材などが手に入るシステムであることを知った。

 この時点で転移をしてきたダンジョンマスターには、そのダンジョンを作った者が同類だとバレてしまう。


 レイリーは自分の能力や強さが現状でこちらに転移をしているダンジョンマスターよりも高いから、俺は安全だというが……。

 俺の場合はたまたま頭のおかしい貴族令嬢がいて、ダンジョンポイントDPが大きく増えたから、サポートシステムを召喚しただけであって、普通なら簡単に召喚に使用できるポイント量ではない。


 しかも、俺はサポートをしてくれるのが女性タイプと考えたからそのポイントを使ったのであって、そういう下心がない場合には、『地球と物品が等価で交換できるスキル』や役に立つ魔法やスキルを取得したり、ダンジョンの階層を増やし、正当な感じでダンジョン運営をして守備をしようとするだろう。

 ボス階層を作ったりね。


 でもこれって転移組のダンジョンマスターはダンジョンに常にこもっている訳ではなく、俺のように出歩いている可能性も高いから、ダンジョンの外で敵対マスターと遭遇したら終わりだったよね?


 こういったシステムの穴と言うか、知らされていないことを教えてほしいと俺はレイリーに頼んだが、こちらが聞かない限りは基本的にそういう穴に関しては教えてくれることはないようだ。


 『サポートシステムですので』ってなんだよ! サポートだから聞かれたことを答えるだけってことか?

 でも助言もサポートの一環だし、一緒に行動して問題解決に当たってくれてるよな!?


 さらには、じゃあ俺が現状で倒せるダンジョンマスターの居場所を教えてくれと聞くと、『禁則事項です』の一点張りで教えてもらえることは少なかった。

 『禁則事項』って可愛い未来人が言うから良いのであって、中間域の声で、渋さと格好良さを兼ね備えた声で言われるとイラっとする。


 まあ、それは俺が男だから思うことで、女性が聞けば『禁則事項です』の一言と笑顔を見せられると納得するのだろうか?

 俺が現在作っているダンジョンのことやスキルや魔法については丁寧にサポートをしてくれるが、別のダンジョンマスターが絡む場合は一気に禁則事項も増えるようだ。


 俺より弱いマスターがいるなら倒しに行って、もう一つコアを手に入れることができればと思ったのだが、教えてもらえない以上は仕方がない。

 まあ、普通にこの世界にあるダンジョンを調べればある程度は判明するだろうしな。


 運よく俺はレイリーを召喚することができたとはいえ、やはり自分の身を守ることとダンジョンの強化は重要だろう。

 レイリーに聞くところによれば、召喚した魔物や、ポップ・リポップした魔物は基本的に俺に逆らうことはなく俺を攻撃することもないそうだ。

 そして、簡単な指示には従ってくれるようだった。

 まあ、ダンジョンを作りました――自分で召喚した魔物に襲われますじゃ話にならないよな。


 一定以上の知能があれば俺との意思疎通や会話も可能になるそうだが、そうなるには高ランクの魔物か、指揮官として召喚、もしくはポップした魔物が独自進化を繰り返すと最終的には会話もできるようになって、ダンジョンの外に連れ出せる個体の獲得が可能と言うことだった。

 それに関しては夢が広がる。

 レイリーに聞いた所によれば、俺の許可次第でその許可を受けたものがダンジョンコアの機能をある程度使うことも可能のようだしな。

 まあ、俺や眷属であるレイリーとは権限に大きな差があるので簡単なものと言う話だが十分だろう。


 試しに多くなりすぎたゴブリンをバトルロイヤルさせ、生き残った者同士でまたバトルロイヤルを繰り返させると、5回目で勝ち残ったゴブリンがホブゴブリンへと進化を果たした。

 先ずはじめに10体で争わせその勝者を残し、最後にその勝者5体で戦わせて残った個体であるので、ホブゴブリン作成にゴブリン50体が必要だったことになる。


 「ってまだホブゴブリンをダンジョンに召喚していないが、1体1,600DPで召喚可能、永続的なポップ・リポップ形成が16,000DPだから、50体全てのゴブリンを召喚したと考えたら40,000DPで大損か? いや、ポップするということで考えれば、時間さえあれば逆にほぼコストがかからずにホブゴブリンを手に入れることはできるのか? ただそれはホブゴブリンの永続的なポップ地点を作れば増え続ける訳だからやはり損……。うーむ」

 「戦闘で進化を果たした個体は召喚したホブゴブリンよりも強さや知能が高くなっているので、そういう意味では訓練をして強くなり進化した個体はポップしたものと違いがありますね。それらを踏まえると時間さえあれば、進化させていく方が圧倒的に強くなります」


 ふむ。

 

 「それなら今現在で召喚できて、一番DPが掛かる魔物のポップ・リポップ地点を形成しておけば、時間さえあればどんどん上位の進化個体が手に入るのか。ただ、階層に見合った魔物でダンジョンは作りたいんだよな。1階層に強力な魔物が出るダンジョンなんかを作っても訪れる人はいなくなってしまうだろ」

 「それはそうですね。さじ加減が難しいと思います」

 「ダンジョン3階層で余った魔物はバトルロイヤルさせて、強力な個体を作成しておけばもしもの時のダンジョン防衛にも使えそうだな」

 「はい、こちらでそのように手配しておきます。ポップ地点が多ければ多いほど進化をして強化された個体は増えますがどういたしますか?」

 「とりあえずはダンジョンポイントの問題もあるしそのままだな。言葉は話せるくらいに進化成長させた個体をまず1体作りたいと思うんだがどうだ?」

 「はい、私ほどとはいかなくとも、ダンジョン内でマスターの代わりに指示できる者がふえることはダンジョン強化に欠かせないと思います」


 俺はレイリーとそう言った話をしながら、ダンジョン強化に努めるのだった。






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