第25話 レイリー③

 ルーナたちと別れ、俺とレイリーはまだ昼の3時と言うこともあってダンジョン作りを再開することにした。


 「マスター、魔獣は30分でポップするので、かなりの数のスライムやゴブリンがダンジョン内でひしめいていますがどうしますか? まだダンジョンを解放していないので、人間からの感情などを糧にダンジョンポイントDPを得ることができません。そのために、ポップのコストはポップ地点の形成では必要ないのですが、生命維持には魔素……魔力の初段階のものを使っていますから、それに多少のコストがかかっていてダンジョンポイントがそれに使われてしまいます」

 「食事もしないで大丈夫なのかと思ったら、そういうことか。たしか魔獣ではない普通の兎なんかもポップ地点の形成ができたよな? ゴブリンたちはその動物を食べたりしないのか? それなら冒険者が来た時に肉も取れるし一石二鳥のように思えるが……魔素で作られるなら普通の動物とは違うのかな」


 俺はダンジョンコアのレベルが上がり、兎などの動物もポップさせることができるようになっていたことを思い出して、レイリーに質問する。


 「魔素で構成されるので多少……違うと言えば違いますが、魔獣の肉もたべられますからそこは問題ないですね。ただ、マスターが作ったダンジョンはドロップタイプのダンジョンなので、ゴブリンが兎を倒すと確率で解体された肉が汚れないように薄い膜で覆われてドロップするのでそれを食べることになります」

 「それは想像するとシュールだな。と言うかドロップ型?」

 「はい。リアルタイプ型は一定時間、魔獣を倒してもその死体が残ってそれを解体したりダンジョンからそのまま持ち帰る必要があります。ただ、我々を作った管理者……ファンダ様が地球のゲームで遊んで、そのシステムが気に入ったために初期設定ではドロップタイプのダンジョンが作られる仕様になってます。ドロップタイプはダンジョン内の魔獣や動物を倒した時に、一定確率で肉やアイテムをドロップします。レアアイテムなんかも落としますね。植物など一定のものに関しては、保護が掛かっているのでそのまま採集できたりもします。もし、リアルタイプのダンジョンが作りたい場合は……最初にその設定に変えて作る必要があるので、今回のダンジョンではもう戻すことはできません」


 いや、それ転移者のダンジョンってバレバレじゃねーか。

 え? これってダンジョンの噂を集めるだけで相手の居場所もわかっちゃう?

 ダンジョンの解放なんてしたら、俺は即座に狙われて死ぬんじゃないの?

 しかもさりげなく、のじゃロリ狐女神の名前がファンダと言うことが判明したよ!


 「いや、ダンジョンのタイプなんかより重大なことが……。ドロップタイプイコール転移者の作ったダンジョンと確定だよな? それって俺がダンジョンを解放したら狙われて殺されるんじゃね?」

 「たしかに! これは盲点でした。何人か積極的に転移者同士で殺し合って、クズが勢力を拡大しているという話をファンダ様がしておられましたが……ダンジョンタイプで見分けていたのか」


 いや、神なら先に気づけよ! 

 ってかデスモードを選んだ転移者は全員死亡したと聞いたが、それ以外でも争って死んだやつらもやはりいるのか。


 「いやいや、まだこっちに来て短いのに、俺が死んじゃうだろ?」

 「それは恐らく大丈夫かと? いくつかのコアを吸収したダンジョンマスターの所在地からは距離が離れていることと、今現在でサポートシステムを召喚したのはコア情報で検索する限りマスターだけです。私はダンジョンポイント100万分……強さで言えばその2倍の強さがありますので、大半のダンジョンマスターでは私を倒すことが現状ではできません。それにこれから私も強くなりますから、お守りします」


 そう言われても命が狙われるとなると……安心はできないな。

 俺はそう思い、今増えすぎているゴブリンたちをお互いに戦わせて訓練をさせたり、兎や植物のポップ地点を形成して維持コストの軽減を試そうとダンジョン内を変更していった。


 「ダンジョン解放前にルーナたちだけを入れて訓練をすることは可能か?」

 「はい。それは問題ありません」


 よし、ダンジョン内に人が来ないことが問題ならルーナやヒナを呼んで訓練、ついでに増えすぎた魔獣を倒してもらえば一石二鳥だなと俺は考えた。

 

「魔法やスキルは俺はダンジョンポイントから取得しているが、通常はどうやって覚えるんだ? 俺もポイントを使わずにスキルや魔法を覚えることが可能か?」


 DPを使わずに魔法やスキルが覚えられるならポイントの節約にもなるし、ルーナたちをパワーアップさせるのにも役立つ。


 「それは覚えられる速度は素質にも大きく影響は受けますが……、魔力を感じることができるようになったり、それを体内で動かしたり体外へ放出することができれば魔法は覚えられますね。スキルも似たようなものですが、習得の仕方がわかりにくいものも多いですから、一般的には師匠が使うのを見て訓練をする形です」


 魔力を体内で動かしたり体外へ放出するって言うのは、ルシオラの威圧で考えればわかりやすいか。

 まあ俺はもう魔法がある程度使えるので、体外に放出する方法なんかも理解できている。


 スキルについては、たしかに鑑定を覚えたいと思っても雲を掴むような話だ。

 いろいろなものを目利きしたり、知識を蓄えれば覚えられるのか?

 急に何かを見て頭の中でその詳細がわかるようになるなんて常識では考えられないから、その認識をまず壊す必要もありそうだ。

 武技系のスキルであれば、誰かが使っている所を見ることでイメージはしやすいかもしれない。


 「なるほど。せっかくだしルーナたちもスキルや魔法を覚えられれば行動範囲も広がるから、ダンジョンで魔獣を間引いてもらうついでにそれらの訓練もしていくか」

 「了解しました。彼女たちはかなり素質があるように見受けられましたから楽しみですね」

 「へぇ。ヒナは身体能力が高そうだったがルーナもか。鍛えがいがあるな」


 俺たちはその後もダンジョン作成のことやルーナたちのことを話し合いながらその日を終えたのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る