第11話 薬草クエスト②
ゴーン ゴーン
「しまった。読みすぎた。昼の鐘がなってしまってるじゃないか」
俺は一通り読み終えた後もためになる資料が多く、つい読み耽って時間を潰してしまっていた。
「悪いルーナ。もう行こうか。先に屋台で何か食べよう」
「問題ないわよ。私も勉強になったしね」
実は俺はルーナが文字を読めることに驚いていた。
ルーナはキチンと教育を受けている。
ナンナの家もそうではあるが、小さいということもなく裕福とまではいかないが町の中で言えば悪くない立地に住んでいた。
父親が上級ポーションを家に置いてあったことからも、もしかしたら有名な冒険者だったのかもしれない。
俺たちはギルドを出て広場にある屋台へ向かう。
「よう。肉串を2つくれ」
「て、てめーは!」
俺は前日にイチャモンをつけられた屋台に行くと肉串を二つ注文する。
「ん? なんだ? ここは客にそんな態度をとる店なのか?」
「い、いやそういうわけじゃねぇが、ちゃんと払うんだろうな?」
「買うんだから当たり前だろ? 何を言ってるんだお前は」
「チッ ほらよ。肉串2本で銅貨6枚だ」
俺はお金の入った皮袋を一度ジャラジャラと鳴らすと、銅貨を6枚取り出して店主に渡す。
「クッ。まいどあり」
皮袋でこれ見よがしに音を鳴らすと、店主は「やっぱりか!」という顔をしたが、その後に金を払うと何故か悔しそうな顔をする。
昨日は先に手を出されて俺が躱したから良かったものの、普通は殴り掛かると言う行為をする場合はやり返されても仕方がないと思って殴り掛かってくるはずだ。
穏便に済ませてやったというのに、ちょっと音を目の前で鳴らされたくらいで顔色を変えるなんてここの店主は短気すぎやしないだろうか。
「はい、ルーナ」
「あ、ありがと。はい、これ銅貨3枚」
俺たちは昨日座ったベンチへと座る。
「いや、お金は良いよ。ナンナさんの所でお世話になったからね」
俺はルーナがお金を渡そうとするのを拒否をしてその理由に言及する。
ただ
まあ、二週間お世話になっているから、まだまだその恩は返せてはいないが。
「そ。じゃあ奢られてあげるわ!」
ルーナはそれなら仕方がないわね! という感じで出したお金を引っ込めた。
異世界に来てからは雰囲気に当てられて昨日の屋台でのことのように、俺も言葉遣いがたびたび乱暴になることがあるが、ルーナは気にすることなくこんな感じで話をしてくれるのはありがたい。
「焼きたてだからか結構美味いな。何の肉だ?」
「なんだろう、ウルフやラビットではないような?」
「ははん。そりゃビッグボアの肉よ。まあ美味いのは秘伝のたれのお陰だがな! ガハハ!」
俺たちが会話をしていると屋台の店主が割り込んでくる。
「いや、客の会話に割り込んでくるなよ。そんなことをしてたらキモくて客がこなくなるぞ? しかもまあまあ美味いって発言に自信満々に美味いだろと言われてもな」
「クッ……。味の話をしてたから気になったんだよ! 俺は悪くねぇ!」
その後、俺たちは店主も含めひとしきり会話をすると席をたった。
「ごっそさん。串はどこに捨てれば良いんだ?」
「お、おお。ここに捨ててくれ」
店主が屋台そばのごみ箱を指さすと俺とルーナはそこに串を捨てて薬草採集へと向かう。
「あまり森の奥に入らずに採集できると良いんだが、さすがにそれだと多くはとれないか?」
「そうかも。でもカイフー草は採集してもすぐに生えてくるから、そこまで深く入って探す必要はないわよ? ってほら、あそこ!」
ルーナはそう言うと、カイフー草を見つけたようで採集をしに行った。
「お、結構あるな?」
「運が良いわね。ここだけでもクエストは達成できそう」
俺たちはそう言うと薬草を採取しては移動する。
2時間ほど薬草の採集をしていると、遠くで鐘の音が聞こえた。
「この辺りまで聞こえるのか。15時か。ルーナ、思った以上に採れたしもう帰ろう」
「ええ。それにしてもビックリするくらい採れたわね」
俺たちは山盛りに採れた皮袋を見てニマニマしながら町へと戻るのだった。
ギルドに到着すると全ての受付に列ができていたので、一番短い列に並ぶ。
どうやらこの時間帯にはルシオラはいないようだった。
「次の方」
「これ、二人で薬草採集のクエストを受けたんだが、確認を頼む」
俺たちは採集したカイフー草を入れた革袋とギルドカードを受付に渡すと驚かれる。
「結構採りましたね。ポーションの材料に必要なので助かります。査定をするので少々お待ちください」
受付嬢はそう言うと、皮袋を持って奥へ向かった。
俺たちがしばらく待っていると受付嬢が戻ってくる。
「薬草採集12回分のカイフー草を確認しました。1回分の報酬が銀貨2枚ですので、金貨2枚と銀貨4枚です」
俺たちはお金と共にギルドカードを返還されると「ありがとう」とお礼を言って受付を後にすると、クエストの報酬を半分に分けた。
「二時間くらいで一人あたり金貨1枚と銀貨2枚(12000円)か悪くないな」
「短時間でこんなに。今日はかなり運が良かったようね」
俺は会話をしながらルーナをナンナ宅まで送る。
「ルーナ、次は2日後で良いか? できれば2日に1回ほど二人でクエストに行きたいんだが……」
「もちろん。こんなに稼げるなら毎日でも良いくらい」
「ははっ、現金だな。まあ、毎日はまた考えるとして、とりあえず2日後に迎えに行くよ。俺は『人生は一度きり!』に基本的には泊まっていると思うから、何かあればそこに伝言を頼む」
「りょ!」
俺たちはそう言うと、別れてそれぞれの場所へと戻るのだった。
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