第11話 ベディエ サイト



 ベディエは道の無い道を母に誘導されながら歩いていたが、やがて開けた土地に出る。


「やはりか」


 とパステルナークは言う。


「村が消えているようですね」


「栄えていた村だったが時の流れは風景を変えても行く」


「母さん?」


「今夜はここで野営にしよう。妖魔の気配もない。疲れを取らなければなりません」


「母さんは?」


「私は剣です。疲れもなければ、食事も要らない。今は母よりも我が身を大切にしなさい」


「分かったよ、母さん」


 そう答えるとベディエは袋からコーンウォールの乾燥した実を取り出し、そのまま口に入れる。

ガリガリと音を立てながら口の中で砕き、水筒から水を飲む。


「明日はこの先の村を目指します。そこは既に廃村になっていた村だ。何もないがそこにあった井戸が涸れていなければ水を補給できるはずです」


「僕らの時代で廃村になっていたのでしょ? だったら再生しているかもしれないよ」


「そうかもしれぬが、期待せずに行ってみましょう。そして、今はよく眠りなさい」


 ベディエは陽が落ちる前に目を瞑った。

そして直ぐに眠りにつけた。

無理もない、この若さで初めての戦闘、しかも妖魔が相手、そして休む暇もなく歩き続けた。


 沈み行く陽の下で剣が優しく少年を包んでいるかのように寄り添っていた。

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