第10話 眠り



 屋根も出来上がり、三人は夕食の支度をしている。

エリオットがカロッサ王国から持ってきた小さな鍋に井戸で汲んできた水を入れ、白い豆を入れる。

コーンウォールの実を干したものである。

見た目は小さいが煮ると3倍以上に膨れ上がる。

味は少し苦いが毒消しの効果もある。

そこへ小さく切ったレールの干し肉を入れる。


「今夜は、これだけにしておきましょう。明日、草原と山を回って薬草を摘んでみましょう。ボードとテーゲがあれば良いのですが」


 レール、草食動物にして動物界の頂点に立つもの。

最高の精力剤になる。

幼い子供たちに食べさせて良いものかと考えたが、小指一本分を三人で分けるなら大丈夫かと考えた結果である。

特に、幼いイズーは、この小さな体であれ程の念動力を使ったのだ。

小指一本分のレールの干し肉くらいなら、イズーに全部を食べさせても良いくらいだとエリオットは思っている。


 コーンウォールの実がレールの出汁を十分に吸い込み、実が大きくなっている。

体は充分に内部から温まれば眠りにつきやすい。

三人は食事を済ますと、板の上に直接横になる。

明日は寝床になるような草も集められれば良いのだがとエリオットは考える。

天井を見つめながら明日からのことを試行錯誤していると小さな寝息が聞こえる。

イズー、深い眠りに落ちているようだ。

この子の力は底しれないものが隠れていそうな気がする、と思う。

暫くしてブランシュの寝息も聞こえてくる。

この子にはクノーを渡した、果たして正解かどうかは戦いが始まってからでないと分からない。

今は信じるしかない。

イズー、念通力ではなく念動力であったのか? ブランシュも念動力に優れているものと思っていたが念通力であったのかもしれない。


 二人とも、その底力に気付いてはいない。

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