露見 6 *
別れの挨拶もそこそこに村長の家を出ようとした三人に、さっきの少年が走り寄ってきた。
「あの、あの、どこへいくんですか?」
「我々は、アテナイに帰るが」
少年は、フレイウスの手に飛びついた。
「お願いです。僕もアテナイに連れていってください!」
「何?!」
「僕、ティリオン先生みたいなお医者になりたいんです。
先生のお薬を飲み続けたおかげで、僕の母ちゃん、すっかり良くなったんです。
だから、母ちゃんにもちゃんと言ってきました。
『僕、勉強して、ティリオン先生みたいになりたい』って。
母ちゃん笑って『行っておいで』って言ってくれた」
「しかし……」
「僕、何でもお手伝いします、一生懸命働きます。
僕、お役に立てるようがんばります。
どうかアテナイに連れていって!」
そして少年は、褐色の目を
「それに、アテナイに行けば、またティリオン先生に会えるんでしょう?
僕、大好きなティリオン先生に会いたい。
ティリオン先生はアテナイ人だから、必ずアテナイに帰ってこられるんでしょう?」
「………」
フレイウスは屈んで、少年の肩に手を置いた。
「そうだ、そのとおりだ。
ティリオン先生は、必ずアテナイに帰ってこられる。
必ずだ!
おまえの名は?」
「カリアス」
「よし、カリアス、今からおまえは我々の仲間だ、来い!」
こうして、少年カリアスを黒馬の前に乗せたフレイウスと双子は、一路、アテナイを目指して急いだ。
ところが、ここでまたもや不幸な偶然が起こってしまう。
平和会議の前には出会わなかったクレオンブロトスの一行と、フレイウスたち四人が、今度は出会ってしまったのである。
片やスパルタ、片やアテナイへの最短距離をとろうとした二つの道が交差してしまったのだ。
フレイウスの騎影を、
「「捕らえろっ!!」」
フレイウスと双子は、ティリオンをスパルタとの交渉で取り戻したいと考えていたため、こんな所でスパルタと事を構えたくはなかった。
かといって、捕まるわけにもいかない。
襲ってきたスパルタ兵をやむなく、何人か切り殺し、カリアスを連れて逃げることに成功する。
これによってクレオンブロトス王とカーギルは、アテナイと、アテナイ・ストラデゴスの息子ティリオンとに、さらなる怒りをたぎらせて帰国することになった。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
もし「応援してもいいよ」と、少しでも気に入っていただけましたら、
お星さま、ハートさま、などつけていただけると、とても嬉しいです。
読者さまの騎影を見つけた作者は、「捕らえろっ!!」と怒鳴ります。
読者さまは作者の部下を斬り殺し、フレイウスの気分を味わえます。(ヒェー
どうぞよろしくお願いいたします。 m(__)m
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