第5話 日記をはじめた理由

なんで俺が日記を書こうと思ったかと言えば、まで打っていたら、タイミングよく、知人から“あの子”のグッズが届いた。


友達は居ないんじゃなかったのか?と言う疑問はご最もだろうが、案ずるな、何処かに一緒に出かけたり、偶にやり取りするような間柄でもない。たまたま、譲ってくれた遠方の知人だ。それ以下でもそれ以上でもない。


開封したグッズには今日も可愛いあの子の姿と、そんな知人からの内容物を書き留めた手紙。隅には俺に手を振るあの子のイラストが描かれていた。


……彼女に見つかってみろ、 どうなることやら。ヤケ酒を飲んで、拗ね始める程度で納まってくれればいいんだが、これが今後の伏線にならないことを祈りたい。


……いや、お前は彼女の家に何を持ち込んでるんだと言う話ではあるが、近年、ホームシックがすごいんだ。定期的に彼女の許可を得て、彼女の仕事中に自宅へと戻り、自分の荷物を調達してはいるが、壁に飾られた一面のあの子を見る度に俺はなんで……と自業自得な癖に心を病んでいる。実家なんてとうにない人間でさえ、ホームシックは起こすものらしい。


と、まあ、おかげで久しぶりに人間の優しさに触れたような気がする。有り難い。絵のうまい人間は全員国宝にでも認定してくれ。


毎日優しさの煮こごりみたいな態度で俺に接してくれる彼女のことをまるで人間ではないかとのように書いてしまったが、俺からすれば彼女は宇宙人と大差ない。思考回路は未確認生物みたいなものだ。宇宙人に会ったことはないけど。


話が逸れてしまったが、なんで俺が日記を書こうと思ったかと言えば、就職が決まったんだ。めでたいだろう。彼女の勧めてくれた会社にそのままゴールイン。身元不確かな俺でも採用して貰えた。


……と、生活の兆しが見え始め、いよいよ俺は彼女と居る意味を失いそうにある。だが、無職の間、お世話になったのだから、せめて、形になるものか、そうでなくても、何らかのお返しをしてから、ここを去りたい。現状、金以外に思いつかないが、彼女にはかなり、ぼかして伝えたところ「その金があるなら、美容に使いな!」と言われてしまった。ちなみにこれを書いている間も彼女からのLINEは止まらない。毎日のことだから慣れてはいるが。


ひとまず、残りの約1年。俺が振られるのが先か、俺が彼女を振るのが先かはわからないが、記録として、日記を書いていこうと思い立ったのが主な流れだ。


以降は第を振るほどでもないので、適当に思い出したことや、起きたことを綴っていきたい。


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