第2話 モトちゃん先輩とオカルト研究部
あの合格発表から2か月後、
入学式を終え、新しいクラスにも慣れた頃である。
「そろそろ部活を決めないといけないかなぁ」ふとそんなことを考える。
でもスポーツが得意なわけでもないし、
どちらかというと文化部かななどと考える。
ここ数日、学校ではそれぞれの部の勧誘が始まっていた。
しかし今年はどの部も勧誘が激しい。実はこれには訳がある。
今年に入って学校側が
「5月になっても部員が5人以下の部活は即刻廃部」
などという発表をしたからだ。
つまり5月までに最低5人の部員を確保しなければいけない。
もちろん既に4人以上確保しているところもあるが、
それでもこの勧誘合戦は続くだろう。
そしてそれは巧一朗の通う学校も同じだった。
そんな中、巧一朗は目をしぱしぱさせながら歩いていた。
(うう、まだコンタクトが目に合わない・・・)
高校デビューを目論み、メガネからコンタクトに変えたのだが、
どうにもまだ目が慣れない。そのせいか、やたら眩しく感じてしまうのだ。
そうこうするうちに、いつの間にか校舎裏に迷い込んでしまったようだ。
普段はあまり来ない場所だ。
(あれ?確かこっちには部室棟があったはず・・・)
なんとはなしに興味本位で入ってみた。
「お邪魔しまーす」と言って中に入る。するといきなり型を掴まれた。
「お、入部希望者?いらっしゃーい!」
その声の主は女生徒だった。ロングヘアで派手目な外見だが、
胸のタイの色からして2年生だが、やたらノリが明るい。
「あ、いえ、そういうわけではなくてですね、ちょっと興味があって見に来ただけで」
「まあまあいいじゃない!お茶くらい出すよ?」
半ば強引に奥へ通される。「部長!新入部員候補が来たよー!」
と大声で呼ぶ。
「部長はよせよ。なんか照れ臭い・・・二人しかいないのに」
「ええ?部長には違いないじゃん!モトちゃん!」
『モトちゃん』と呼ばれた女性が顔を出す。どうやら彼女が部長らしい。
しかし巧一朗はその顔見て声をあげる。
「ああああ!あ、あなたは?!」
その部長こそ、あの合格発表の日に自分を助けてくれた女性だったからだ。
「ん?どこかで会ったか?悪いけど覚えてない。」
「いや、あの、合格発表の時に公園で助けてもらったんですが・・・」
そう言うと彼女はしばらく考えて、それからああといった感じで、
「ああ!あの時の少年か!」と思い出す。
「はい!ありがとうございました。」
「何々キミら知り合い?」先ほど声をかけた女生徒が首を突っ込む。
「ああ、こないだ言っていた公園でお経を唱えていたら
なぜか感謝されたときの少年だ。」
(うわ、やっぱり分かってなかった・・・)
彼女はあれだけの能力を持ちながら一切「みえない」人だった・・・。
「ほほう、なかなか面白い話ですな~」
などと勝手に盛り上がる二人。
「じゃあそれも何かの縁てことではいこれ!」
と彼女が持ち出してきたのは入部届だった。
そこには「オカルト研究部」と記載されている。
「いやだから僕は別に入部したいわけでは」と言いかけたところで
「いいじゃんいいじゃん!この際幽霊とか信じてなくてもいいし。ね?」
「いや俺そもそもオカルトとか苦手ですし・・・」
オカルトなんて巧一朗にとっては最も恐怖する対象だ。
そんなものを熱心に研究するとか理解できない。
そもそも自分は霊感があるだけで
何も出来ない人間なのになぜこんな部に?と思うが、
彼女の押しの強さに押され、結局入部することになった。
もっとも彼女からの「部長に守ってもらえるかもよ」というセリフに
妙な説得力を感じたのもあったが。
「んじゃ、部員紹介するわ、
こっちは部長の
あたしは副部長の
「よろしくな」「よろしくね~」
亜由の方はともかく、樹斗の方はクールな印象を受ける。
「あ、こちらこそ宜しくお願いします。おれ1年A組の
「あ、コーイチ君ね。」
(なんか微妙な略し方をされたな・・・)と思ったが、
自分の名前が若者にしては長い名前なのは理解しているので
敢えて何も言わないことにした。
「零蓬寺先輩も二宮先輩もよろしくお願いします。」
「うーん、なんか苗字だと堅苦しいな。」と樹斗が言う。
「そだねー。うちらのことも下の名前で呼んで欲しいな」亜由が便乗する。
「はぁ・・・分かりました。亜由先輩、樹斗先輩」
「おう、それでよし」亜由は満足げに返事をする。
「いやまて、「モト先輩」じゃ私がもう先輩じゃないように聞こえるぞ」
と樹斗の方が不満そうだ。「えぇ・・・じゃあどうすればいいんですか?」
巧一朗の言葉に、樹斗は少しだけ考えてこういった。
「モトちゃん先輩・・・はどうだ?」
「・・・それならまあいいかな。」亜由が答える。
「なんか適当ですね」と巧一朗が苦笑するが、亜由は「気にしない」と言う。
「んじゃ、今度からそう呼ぶから。宜しく頼むぜコーイチ君」
あのクールな樹斗が「ちゃん付け」を要求してきたのは意外だった。
「は、はい・・・」
「さて、これで一応全員紹介が終わった訳だが、」
樹斗がそういうと、亜由が「あっ」と声を上げる。
「ん?どした?亜由」
「いやいや忘れちゃダメだよ!あと二人は最低限部員確保しないと!」
「ああ、部の存続条件か・・・」樹斗が困ったように頭を押さえる。
「去年、部員がごっそり卒業しちゃったからねぇ・・・」
何とか5月までに5人以上の部員を確保しないといけないのだ。
「でもまあとりあえずはコーイチ君をゲットできたし、しばらくは大丈夫でしょ」
亜由はちょっと楽観的になる。
「そうそう、なんとかなるって!それにさ」亜由がニヤリと笑う。
「何か案でもあるのか?」
「うん、実は候補は一人いるんだよね・・・」
「本当か!?誰だ?」
亜由がちょっと難しい顔をして語りだす。
「うちの生徒で、あたしの母さんの知り合いの子なんだけど・・・
その・・・保護者の方が条件出して来てて・・・」
「なんだ?親の許可がないと入部できないとか?
それとも変な宗教にはまってるとか?」
樹斗が不思議そうな顔で言う。
「いや、そうではないのよ・・・」
「どんな条件なんだ?」樹斗は思わず聞き返す。
「うーん・・・これは早速コーイチ君にお願いしちゃおうかなぁ・・・」
「何ですか?俺にできることなら何でもやりますけど」
「おお、流石モトちゃんの後輩。頼もしいわね」
亜由は嬉しそうにいう。
「それじゃあねぇ・・・」と亜由が言い出したことは意外なことだった・・・。
つづく
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