拾肆話「後世」
ムクリと目が覚める。
まだ夜中だったか。
この星空はもう何度見たかは分からない。
山に輝く星々は嫌な事を忘れさせてくれる。
だから嫌いだと空は言う。
チラリと横で眠る少年、空を見た。
彼は
特に目的のある旅ではない。
始まりはただ故郷を出るトコロから始まったモノだったのだから仕方ない。
もう何度か日が昇りそして月が顔を出した。
そろそろどこかで目的となるものか、それか足を止める何かがあれば良いと素直に思う。
母、雪も何もない旅よりはその方が良いと言うだろう。
母を思い出し、少しだけ頬に冷たい水が伝った。
明日は良い日になるといいなとそう願い、姫野白は再度眠りについた。
「小塚空?誰だ?おい歴史ヲタ。」
美宙は石碑を指差して隣を見る。
隣にいた宇野は不愉快そうな顔で答える。
「俺は歴史ヲタなんじゃなくて伝記を読むのが好きなだけだ。」
宇野はそう告げて再度石碑を覗き込んだ。
「でも小塚空なんて名前聞いた事ないぞ。もう一人の沖田天ってのも知らん。」
「けど石碑建つレベルのやつだろ?つーかこの石碑建てた館浜正義ってのも知らねーし。」
「その人縦浜の初代市長よ。」
聞き慣れた声が後ろからして二人は振り向く。
「あ。アオイじゃん。もう学校終わり?」
「おかえり。」
ゴチン。鈍い音を立てて宙美は二人の頭を小突いた。
「おかえり。じゃないわよ。説明面倒くさかったのよ?」
殴られた頭をスリスリ撫でながら美宙は宙美に視線を向け直した。
「……そんで?初代市長って?」
自業自得なのに不機嫌そうな美宙を細目で睨みながら宙美は答える。
「その館浜正義って人よ。この縦浜の初代市長で縦浜を築き上げた人。知らないの?」
初代市長の事など聞いたこともない男子二人は恥ずかしげなく頷く。
とはいえ情報は得る事が出来た。
「じゃあ市長に話聞きに行こうとか言いたいけどどうすりゃいいの?市長のとこなんて言っても門前払いだろ?」
ウンウンと宇野は頷くが宙美は首を傾げた。
「
疑問を持たずにいる宙美。
普通に考えたら無理だがどういう事なのだろうか。
美宙は宙美の前に立ち上がった。
「他にも方法があんの?」
宙美はあっけらかんと答えた。
「私のひいおばあちゃん元市長だよ。」
「………え?」
宙美葵、曽祖母の名は
先々代の一つ前、三代前に都会、縦浜の市長をやっていた。
若くして市長に就任し、そして少し早く勇退した。
現在は百歳を超える高齢の為家で殆どを寝たきりで過ごしている。
しかし意外にも意識ははっきりしており今もキチンと会話をできる。
そんな正子の前任から引き継いだ最後の仕事はーーー……。
【小塚空の事を後世に伝える事】
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