山賊と姫様(N県むかしばなし/山居康介編著)

 むかし、■■川のあたりには山賊が棲んでいました。

 その山賊はとても乱暴者で、何かあれば近くの集落に行って酒や食い物を巻き上げ、若い娘をさらっていくような悪行を繰り返しておりました。

 ある日のことでした。その山賊が川の側にある大きな木の下で居眠りをしていると、すぐ近くで足音が聞こえました。

 山賊はとっさにその足音の主に飛び掛かります。すると、動けないように抑え込んだ腕の下で、相手がすすり泣いていることに気づき、おやとその顔を覗き込みました。


 山賊が組み敷いていたのは、綺麗な着物で白い顔をした姫様でした。


 泣きながら姫様は身の上を語りました。

 住んでいた城が戦で焼け、父も母も殺されてしまったところを侍女と一緒にこの川まで逃げ延びてきたのだが、その侍女も慣れない暮らしで身を病んでしまった。どなたかは存じませんが、どうか助けてはくれないか──。


 山賊はその話を聞いてから、掴んでいた姫様の手を放しました。


 そのままその綺麗な着物も何もかもを剥ぎ取って、丸裸にした姫様を木の幹に括りつけ、そのままどこかへ行ってしまいました。


<M市・郷土民話保存会>

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