第4話 僕は誰、ここはどこ? 3
「うっわ! 本当に女の子の顔だ? 結構美少女?」
「自分で言ってちゃ世話ないぞ? まあ確かに物凄く綺麗な女の子ではあるのは間違いないな」
本当に可愛い顔をしていた。
確かにこれは女の子の顔だな。
と、いうことは僕、女の子だったのか? 何か違和感はあるんだよな。男の子と言われた方が気分的にはしっくりくるんだけど、どう見ても女の子だよね? やっぱり認めるしかないのか?
見た目の歳も10~12才くらいに見えるのも違和感があるな?
もうちょっと大人な気がするのは気のせいだろうか?
僕は、手鏡をドルガに戻してお礼をいう。
「ありがとうございました」
「おう、でもよく考えたら盗賊に襲われたなら、嬢ちゃんだったら盗賊の慰物になるか、奴隷として売られていただろうから、盗賊に襲われたと云うのは考えにくいのかもしれんな?」
「え? 慰物? 奴隷ですか?!」
「ああ、それだけ可愛ければ高く売れると思うぞ?」
「そ、そうなんですか? ま、まさかドルガさん僕を・・なんてするわけないですね」
「お? やけに簡単にわしを信じるんだな?」
少し嬉しそうな顔になるドルガさん。
「だって、そんな悪人面じゃないですし、何となくドルガさんは大丈夫だと思ったんで」
「そうか。まあ、ありがとうよ」
ドルガさん、歩く速度が少し上がったかな? それにちょっとリズミカルな感じで歩いている気がする。
それにしても本当に親切にしてもらっているよな。
親切にしてもらったのに何もお返しする事が出来ないのが心苦しかった。
「ドルガさん、親切にして頂くのは有り難いですが、僕、この通り無一文ですよ。何もお返し出来ませんよ。」
「なんじゃ、そんな事気にしとるのか?」
僕が正直に答えると、そう言って笑うドルガさんだった。
「そんなの見りゃ解るわ! 今はそんな事気にせんでえぇ」
ガハハハって笑ってくれる。
本当にいい人に会えたと感謝するしかないな。
とにかく、いつかどうにかして恩は返そう。
そう誓いながらトルガさんと村に向かった。
どれくらい歩いただろう?
ドルガさんは僕を背負っているとは言っても全然苦にすることもなく、森の中をドンドンと歩いている。
ちゃんとした道があるわけじゃないし、何か目印でもあるのだろうか?
そんな事を考えていると身体が疲れているのか、ドルガさんの背中が良かったのか時々寝てしまっていた。
だからどれくらい歩いたのか判らなかったけど、太陽が真上辺りをいるので昼頃だろう?
たしか気がついたのが朝だったと思うから、午前中いっぱい歩いていたのか?
「ここがわしらの住む、コルコネ村じゃ」
僕が色々と考えていたら、ドルガさんが村に着いた事を教えてくれた。
僕は村というから長閑な畑が広がるのんびりとしたイメージを持っていたが、まず目に飛び込んで来たのが、人一人の太さはあるだろう丸太杭を塀の様に隙間無く突き立て、さらにその上に丸太を縦横に5メートルくらいの高さまで組み上げられた、やぐらのある砦の様な防壁だった。
門も同じ様な丸太を組み合わせた縦も横も3メートルくらいありそうな大きな作りの物が、これもまた頑丈そうな太い綱で持ち上げられていた。
やっぱり魔獣とかの襲来に備えているんだろうな?
「あ!ドルガさん、お帰りなさい。どうしたんです? 今晩は野営する予定じゃなかったんですか?」
青年が本当ならまだ帰って来ないはずのドルガが帰って来た事に不思議そうに質問してきた。
「いやあ、ちょっと拾いもんしてしまってな連れて帰ったんだ」
そう言いながら僕を指差していた。
僕はお世話になる身としては第一印象が大事と思ってお辞儀した。
でも、身体もそんなに動けないし、ドルガさんにおんぶしてもらっているから首だけの挨拶になってしまったけどね。
「物凄く綺麗な人じゃないですか! !? 怪我してるんですか?!」
「ああ、だからアマネに治療してもらおうと思うんだが今何処にいるか判るか?」
「えっと、今なら家じゃないですか? さっき聖霊堂でのお勤めを終えたと言って家の方に向かって行ったはずですよ」
「そうか、ありがとうな」
「それより、ドルガさん、その女の子に変なことしてないですよね?」
青年が、にやけ顔でドルガさんに変な事を聞いてきた。
「馬鹿やろう! わしがそんな見境の無い獣に見えるんか!」
うん、十分に獣には見えますよ。
僕はその青年と目が合うと、同じ事を考えていたのか苦笑いで返し、頷き合う。
「おい、お前ら、何、頷き合ってるんだ?」
「「い、いえ! 別に!!」」
ドルガさんが鋭い視線で僕と青年を見て来たので、僕は顔を反らし青年はそそくさと見張り台から姿をけした。
それを確認したドルガさんが振り返る。
「チッ、まあいい、そんじゃあ先ず村長のとこに行って挨拶だ。事情を説明すれば当分は置いてくれるはずだ」
「はず、ですか?」
「まあ、心配せんでもいいぞ。村長はわしの幼馴染でな、面倒見が良い女性だからお嬢ちゃんを預けるにはちょうど良いんだ。さすがにわしの家という訳にもいかんからな」
「別に、僕はそれでもいいですけど?」
僕は別に変な事を言ったつもりは無かったんだけど、ドルガさんが目を大きく見開いて驚き狼狽していた。
「いやいや! それは駄目だ! そんな事してみろ! 村中から変態扱いされるに決まっとる!」
そうだろうか?
でもドルガさんの慌てぶりから案外本当なのかも?
良い人だから別に変な事するとは思えないけど、やっぱり見た目で損しているのかな?
ドルガさん、少し顔を赤くしながら門を潜り、村の奥へと向かって歩き始めた。
それにしてもこの門や塀はかなり頑丈だし、そうとうの長さがあるようだ。
「ねえトルガさん、この巨大な塀や門ってやっぱり魔獣とかから守っているんですか?」
「そうだな、ここは国境近くの大森林の入り口当たりに作られた村なんだが、前面に広がる広大な森林地帯には多くの魔獣や獣が生息していてるからな、それらから村を守る事もそうだが、山賊や、時には隣国の兵士が国境を超えて悪さをしに来る奴らが結構いるんでな、それらと迎え撃つ為の国境防衛も兼ねてるんだ」
「そうですか・・」
案外物騒な所ではあるんだな。
でも、こうして見回しても子供も元気に遊んでいるし、治安も悪くなさそうだし、そんな殺伐とした雰囲気は微塵も感じられない。
だいたい、老人が椅子に座って、日向ぼっこしてるあたり物騒な場所とは考えにくいな。
「あ!ドルガのおっちゃん!」
「今日は何を捕まえたの?」
「美味しいお肉取れた?」
そんな事を考えてドルガさんの背負われながら進んでいると、わらわらとドルガさんの所に遊んでいた子供達が集まって来た。
「ねえねえ、今回の獲物ってこれ? なんか人間ぽいね? 食べられるの?」
えー!?僕食べられるの?!
まさか!ここって!人喰い族の村だったのか!?
「おい! 涙流すな。顔に出すぎだ! 冗談に決まってるだろ! お前らもあんまり人をからかうのは止めておけ。こいつは怪我をして森の中で倒れてたんだ」
トルガさんが、子供達に僕の事を簡単に説明し始めてくれた。
子供達は最初、えー?みたいな事言っていたけど、説明を聞いてくれている内に、みんな涙目になってきて僕を悲しそうな顔で見始めていた?
「ぐす、ね、姉えちゃん? 元気だせよ!」
「そ、そうよ!人生色んな事があるんだから命が有っただけでも感謝しないとね!」
「俺達が遊んでやるからな、寂しくないぞ!」
明らかに僕よりはかなり小さい子供に励まされてしまった。
しかしこれが何故か心に、ジーンと来てしまって、涙が止まらない。
「う、うん!ありがとう!! 僕、頑張るから!」
手を取り合って大きく頷く、僕と子供達。
「お前、面白い奴だな」
そう言いながら、何故か大きくため息して、僕のことを哀れむように見つめるトルガさんの顔があった。
それから行き交う村の人達に挨拶しながら暫く進むと、ドルガさんが立ち止まった。
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