カレー
辺りが暗くなり、夜中になる前に収容施設に戻るとケイティとヴィーナからのメモが管理室においてあった。
【帰ったら中央の広場に来ること】
エフと二人、なんだろうと首をかしげながらも中央広場に向かう。
始めてエフに出会った吹き抜けの広場、第一印象は儚げな雰囲気の機械的な女の子だと思った。でも話してみると案外好意的で、僕の想いに共感してくれたことを覚えている。
始めてあったのがエフで良かった。エフでなければここまで管理人としてやってこれなかっただろう。廊下には二人分の足音、辺りは静かで角を曲がれば広場に出る。
「エフ、なにか知ってる?」
「なにも、聞いてない」
特に思い浮かばなくて談笑しながらエフと広場に出ると不格好ながらも飾り付けられた壁があり、中央の噴水近くには大鍋の前で愉快そうに並ぶケイティとヴィーナの姿があった。
「え、えっと?」
「早く座れ。今日はお前らを祝うパーティーだ」
「ま、食材は少ないっすけどね」
「そういうのはいい! こういうのは気持ちが大事だろ!」
二人、言い合いながらも大鍋に作った料理を皿に乗せ振る舞ってくれる。香辛料のいい香り、野菜や肉がふんだんに入ったカレーが机に並べられていた。
「二人で作ったんすよ。てんやわんやでしたけど」
「おう。あ、あとで厨房は片付ける」
「二人ともありがとう」
「ありがとう、ケイティ、ヴィーナ」
エフは感情を表すように二人に抱き着く。三人とも、もう仲のいい友人だった。
明日、誰かが欠けるかもしれない。でも、この思い出はここにいる全員の記憶に残る。
「ほら、皆で食うぞ」
ケイティの主導の下、皆でカレーを頬張った。話をしながら、くだらないことを言い合って、夜更けまで語り合って。時間が過ぎることも忘れ四人で過ごした。
今までの人生の中で一番美味しいカレーだったと思う。
後片付けを済ませエフと共に管理室に戻る。
「今日は遅いし、明日また話そう。おやすみ」
「うん、おやすみ」
残りどれくらいの時間が残されているのだろう。
わからないけれど、その時まで僕は彼女たちと、エフと共に過ごしていたい。
ベッドに入り目を閉じる。
タブレットの通知音が鳴ったが、明日見ればいい。今日は幸せな気持ちのまま寝ていたい。
【通知】
・大規模作戦について(エンドの戦闘参加について)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます