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 すれ違っていた想いは結ばれ、僕とエフは恋人になった。狭いベッドで二人一緒に寝たせいか体中が痛むけれど幸せだった。愛しい人といられるだけで幸福を感じていた。

 いつもの畑作業ですら二人でやれば楽しくて、ケイティとヴィーナが呆れ顔で見ていることにも気づかなかった。


「朝からイチャイチャしないでくださいっす。てか、忠告したのに恋人になるとかウチには考えられないっすね」

「なに言ってんだ、昨日まで『二人とも大丈夫っすかね?』とか心配してたくせに」

「ちょいちょい、それは言わない約束っすよ!」


 ケイティの口をふさぐため、賑やかに駆け回るヴィーナを見てエフと大笑い。

 ここに来てから半年、エフと共に初めた畑の作物も順調に育ち収穫を待つだけ。施設自体の復旧も終わり、あとは彼女たちを看取る準備を進めていくだけ。

 人間のように感情と意思を持ち、十代半ばの少女と変わらない彼女たちがエンドとして残り一年以内に死んでしまう実感はきっとその時がくるまでわかないのだろう。


 農作業を終え、洗濯された軍服に袖を通す。

午後からは各自自由行動になっているが、ケイティとヴィーナはやることがあるから二人で出かけて来いと収容施設を追い出された。


「どうする?」

「カナタに任せる」


 出会った頃は表情の乏しかったエフだが、今はもう等身大の少女のように笑顔を浮かべている。せっかくなら、どこか景色のいいところへ。エフの手を取ると恥ずかしそうに口角を上げていた。


 収容施設の周りは西側は海に面した崖になっており、東側には広大な農地が広がっている。茶褐色の大地を踏みしめ、行く当てもなく歩き続けた。ここは都市部からは離れており、恋人らしいデートはできないかもしれないが手を繋いで歩いているだけで楽しい。


「カナタ」

「なに?」

「カナタのこと、もっと教えて」

「いいよ」


 時間は有限かもしれない。もしかしたら明日エフはいなくなってしまうかもしれない。だから思いつく限りのことを話した。好きな物、幼い頃、夢のこと。エフにもっと知ってほしくて、エフが頷いて聞いてくれることが嬉しくて、時折休憩しながら日が暮れるまで多くのことを伝えた。


 やがて夕焼けが水平線に沈む頃、僕とエフは海を見つめながら肩を寄せ合い座っていた。


「僕のことばかり話しすぎたね」

「ううん。私の思い出は悲しくなる。それに、カナタで思い出をいっぱいにしたいから」


 まるで大輪の花のように、エフは笑っている。

 その笑顔が心をあたたかくしてくれる。彼女と過ごせる時間は長くない。切ない恋愛かもしれないけど、想いや記憶はずっと僕の心に残り続ける。


「ありがとう」

「どうしたの?」

「僕の想いに応えてくれて、ありがとう」

「ううん。カナタが幸せならいい」


 なにも言わなくても良かった。二人、一緒にいられることが楽しい。


「写真、撮ろうか」

「うん」


 携帯端末を取り出し、オレンジに染まる広大な大地を背にして。

 最初の思い出となる記念写真を撮った。

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