第517話 野良聖獣 下
………………。
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……。
「うん。とりあえずコノメノウ様、一週間禁酒ですから」
「はぁ!? なんでだ?!」
当たり前だ、クソ守護聖獣が! ちゃんと面会者のことを説明しろや! いや、勘違いしたわたしもわたしだけどさ!
「相手が一角獣なら一角獣って言ってくださいよ!」
「わたしはなにもウソは言ってないぞ」
そうね。なに一つウソは言ってないでしょうよ! ただ、正確な情報を語らなかっただけですけどね!
「一角獣ってもう幻獣でしょう! 聖獣ではないでしょう!」
「そんなもん、人が勝手に決めた区分だろう。こちらとしてはただの獣でしかないわ」
そりゃそうだけど! そうなんだけど! 長いこと人の世界で生きてた獣ならわかれよ! にわかじゃないんだからよ!
……こういうところが悪辣なのよね、長く生きた聖獣って……!
「ここで暴れたら去勢しますからね」
一角獣──この世界でも処女厨と有名で、姫を生け贄に国の守護聖獣となるのが多い聖獣だ。
けど、種付けするとメスを食い殺してしまうとかで滅びたとか言われているアホな種だ。なんで生まれたのか本当に意味がわからない種でもある。
「そんなことはしない。わたしは人に興味がないし、妻はたくさんいるからな」
どうやら知性的で理性的な一角獣のようだ。
「これは、興味本位なのですけど、一角獣のメ──女性も角が生えていますので?」
「いや、一角は男に生えるだけで、女は普通の馬だ」
馬とか言っちゃうんだ。まあ、馬は馬だし、なんでもいいや。
「それで、わたしになんのご用でしょうか? わたしは他国の者で大きなことはできませんよ」
と言うか、聖獣なら自力で解決しなさいよ。魔力はかなり高いみたいなんだけらさ。
「ミャマハルに渦が取り憑いた。浄化して欲しい。礼はこの角でどうだ? 人の世界では貴重と聞いた」
そりゃ貴重だ。一角獣の角には魔力の結晶と言われ、魔剣や魔槍の核となるものだ。
それなら乱獲されそうなものだけど、一角獣は単純に強い種だ。脳筋なクセに魔法も使いこなすデタラメな存在とされているわ。
「貴方にもどうにかできないので?」
「あれは、世界の異物だ。わたしの力ではどうにもならん」
異物? この世界の理ではないってこと?
って、また渦かい。どこまでわたしを苦しめたらいいのよ。ほんと、元から絶たないとダメな存在よね。
「少し、待ってください。貴方には関係なくともここはゴズメ王国。ゴズメ王国の判断なしに承諾はできませんので」
今さらって気もしないけど、館の者だけではなく村の方々まで集まっている。変なウワサを立てられたくないからね、王妃様の許可はいただいておきましょう。
「わかった。無理を言ってすまない」
ほんと、一角獣とは思えない知性的で理性的なお方だこと。
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