第512話 欲しいもの 上

 ルーセル様たちがお城にご帰還なされました~。イェーイ!


 なんてノリノリで迎えたのに、ラグラナたちからメッチャ怒られました。


「当たり前だ。しっかり怒られろ」


 コノメノウ様に助けを求めたらデコピンされてしまった。痛いぃ……。


 まあ、なんの説明もしないで消えたしね。心配かけたんだから仕方がないわね。


「愛されているのね」


 叱られるわたしを微笑ましそうに見る王妃様。助けてはくれなさそうだ。


 一通り(?)お叱りを受けたらルーセル様に皆を守ってくれたことを感謝し、任せてしまった謝罪をした。


「わたしはなにもしておりません。改めてチェレミー様の偉大さを知りました」


 わたし、偉大なことしてました?


「渦のこともそうですけど、メイドからあんなに信頼されているなんて夢にも思いませんでした。わたしも見習わないといけません」


 なんだか大人びたルーセル様。そんなに衝撃的でした?


「わたしを見習ってはダメですよ。下の者に心配をかけるようでは上に立つ者として失格ですから」


 今回は仕方がなかったとは言え、メイドたちを残して突っ走ったのはわたしの落ち度。想定できなかったわたしが悪いだけよ。


 ……裏に意思を持つ者がいるとは感じてたけどね……。


「ラグラナ。メイドたちを二日ほど休ませて。わたしのことはお城の侍女がやってくれているからね」


「いえ、わたしたちが行います!」

 

 メイド一同の強い意志により却下。仕方がないのでわたしは二日ほど部屋から出ないようにし、本を読んで過ごす……ことはできず、ライルス様に呼ばれ、説明と経緯を求められることになりました。チャンチャン。


 国王陛下や大臣も混ざり、二日ほど拘束されてしまった。


 やっと終わる頃にはげっそり。渦と戦うより疲れたわ。


「なんだかんだと三十日は過ぎてしまったわね」


 温泉の用意が整うまで二十日だったのに、三十日過ぎている不思議。渦を甘く見たわたしの判断ミスだわ。


 渦なんてわたしのせいじゃないのに、わたしが一番苦労しているわよね。おっぱいだけでは割に合わなくなってきてるわよね。


「温泉にいきましょうか」


 お城にいたらまた厄介なことを言われそうだわ。


「そのほうがよろしいかと。お嬢様はゴズメ王国に関わりすぎです」


 まだ離れられないことは黙っておきましょう。


「なぜそこまで関わるのですか?」


 おっぱいのためよ。ってことは言えないので苦笑いしておく。


「欲しいものができたからよ」


「なんですか?」


「秘密。手に入れたら見せるわ」


 今の段階でどうなるかわからないからね。ちゃんと成功してから教えるとしましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る