第509話 言ってる意味がわかんねー 下

 なに言ってるかわかんねーとか言われそうなので、お風呂は朝と夜入ることにしましょう。


 本当になに言ってんの? とか突っ込みは入らないのでおっぱいパオ~ン。


 って、おっぱいハイになっているわね。少し落ち着くとしましょうか。変な失敗をしそうだわ。


 とりあえず魔力籠めで精神統一──してたら国王陛下が面会を求めてきた。なによ? 


「渦を宿した男が目覚めたそうだ。尋問しても構わないだろうか?」


 あ、すっかり忘れてた。そっちのことがあったっけ。


「男の様子は聞いておりますか?」


「大人しくはしているようだ」


「では、わたしが会ってみます。自害されては困りますので、これを首にかけてください」


 リリヤンで編んだ首飾りを国王陛下の侍従に渡した。


「ところで、その男性はどこに幽閉しているので?」


「神殿だ。そこならわたしの命令が行き届くのでな」


 いろいろ問題はある国王陛下だけど、神殿を掌握していることだけは褒めてもいいかもね。


「神殿に独自の調査機関を設立するべきですね。王国の調査機関では情報を改竄される恐れがありますので」


「それでは混乱するのではないか? どちらもわたしの名で行うものだぞ」


「ゴズメ王国にとって有益な情報を優先すれば構いません。ですけど、真実だけは正しく記録して残してください。将来、また渦が発生したときのために。王家が有利に立てるように」


 そうしてこなかったから国王陛下排除って未来があったのだ。今からその辺を変えていってくださいな。


「チェレミー嬢が人間であることが残念で仕方がない」


 さすがに異種族婚を強硬することはないようね。まともなところはちゃんとまともなのよね、この方って。


「そこはルーセル様を鍛えておきますわ。将来にわたしはいませんからね」


「見込みはあるのか? わたしに似て視野が広くないが」


 なんだ。自分のことわかってたんだ。


「それは世界を知らないから。与えられた情報でしか判断できないからです。細かいことは大臣に任せてもよろしいでしょうけど、情報だけは常に把握しておくべきです。大局を見誤らないためにも」


「……王とは孤独なものなのだな……」


「そうですね。孤独なものです。誰にも心のうちをさらせないものです。それを理解できる国王陛下は良君だと思いますよ」


 愚王でないのなら国民は幸せでしょうよ。


「……良君か。わたしは褒められたのか……?」


「はい。褒めました。国王陛下はよくやっております」


 きっと褒められたことがないのでしょう。王はできて当たり前。間違わない存在だ。けど、まともな神経を持っていたら自分を否定されているようなもの。まともな神経じゃやってられないから王は歪んでいくのよ。


「……そうか。わたしはよくやっているのだな……」


 なんとも嬉しそうに笑うこと。この方は褒めて伸びるタイプなのかもね。

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