第506話 説明 上

 お風呂から上がってくると、国王陛下までやってきていた。


 休ませろよ。と言えるわけもなし。国王陛下って立場の者が配慮とか教わって成長するわけでもない。できる者は持って生まれた性質があったから。もしくは御輿として国王につい者くらいでしょうよ。


「チェレミー嬢。いったいなにがあった?」


 ほんと、邪魔して申し訳ありませんでした、マルシス様。あなたもご苦労なさっていたのでね……。


「陛下。チェレミー嬢はまだ髪も乾いてないのですよ」


「あ、そ、そうなのか。急ぎすぎたようだな。もう少しあとでこよう」


 そそくさと部屋を出ていく国王陛下。王妃様のお尻に敷かれていたのね。いや、最近敷かれたのでしょう。病気が完治してパワフルになったから。


「ごめんなさいね。殿方は配慮に欠けるから困ったものだわ」


「でも、王妃様の教育で素直にはなったようですね」


「夫を教育するのは妻の役目と学んだからね」


 ほんと、この方がいることがゴズメ王国のためになっているわ。


「チェレミー様。髪を乾かします」


「あ、これを使って」


 十五センチくらいのグリムワールを出して侍女に渡した。


「それをクルクル回すと風が出るわ。弱く回すと小さく。大きく回すと強く。赤いところを持つと熱風になるから」


 いきなりは怖いでしょうから試させてから髪を乾かしてもらった。


「便利なものね」


「メイドたちが帰ってきたら予備をお渡ししますね」


 生活必需品はすべてメイドが管理している。このグリムワール(ドライヤー)は最初に作ったもの。今はクルクル回さなくてもいいようにしてるわ。


「服や下着、まるでわたしに合わせたかのようにぴったりですね?」


 肩や胸のサイズからしてわたしのために作られたものっぽいわ。


「あなたのために作らせたものよ。本当は帰るときに贈りたかったのだけれどね」


 なるへそ。道理でお姫様が着そうなドレスだと思った。


「それは申し訳ありませんでした」


「気に入ってもらえたなら嬉しいわ」


 わたしの好みではないけど、王妃様からのいただきもの。ときどき着させていただきましょう。


 髪を乾かしたらまた白湯を出してもらい、落ち着いたら食堂に向かった。


 そこには国王陛下もいたけど、まずは朝食をいただく。空腹だったから結構食べちゃたわね。また眠りたい気分だわ。


 それを許してくれる国王陛下でもなし。食休みをしたら自身に不眠の付与魔法をかけておく。こうやって自分を壊していくのね。早く済ませて温泉にいきたいわ~。


「チェレミー嬢。説明を頼む」


 ハイハイ。わかりましたよ。

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