第497話 レベル5 下
「……ライルス様。独身者を省いた聖騎士様を選んでください」
「わかった」
即座に答えると、その場から下がった。わたしの意図を察したようね。
「タルル様。ログライス伯爵領にいけますか?」
「いける」
タルル様が厳しい顔で答えた。
「では、聖騎士団とわたしを送り届けてください」
「巫女は?」
「残します。わたしたちが帰らなければ第二陣として出てもらいます」
今いっても巫女は役に立たないでしょう。文献とおりなら今のログライス伯爵領は魔獣に支配された地になっているはず。まずはその魔獣を排除しなければ浄化もなにもないわ。
「……その口振りでは第三陣もあるのか?」
「ゴズメ王国の総力を使って世界樹の葉をログライス伯爵領外に撒き、聖水による人海戦術を行ってください。浄化できるかわかりませんけど、抑えることはできるでしょう。あとは、次世代の巫女を育ててください」
五人の他に絶対聖女の血を受け継いだ者はいる。その者に託すしかないでしょうよ。
「コノメノウ様。万が一のときはメイドたちを連れてコルディーに戻ってください」
「死ぬ気か?」
「死ぬ気はありません。万が一のときの行動です。わたしの代わりにメイドたちをよろしくお願いします」
メイドたちを守るのがわたしの責任。守るべき存在を帰してこそわたしの責任が果たされるわ。
「お嬢様!」
「落ち着きなさい。まだ絶望的な状況ではないわ。やれることはまだあるわ」
「その口振りから方法は少ないのでしょう?」
「さすがにレベル5に対抗できる手段なんてそう簡単に用意はできないわ」
こんなときのために。なんて言葉は長い時間をかけて用意したから言えること。想定外のことまで対処できないわ。
「せめて護衛にジェン様を連れていってください」
「チェレミー様を残して帰るなど騎士として失格であり誇りに反します。くるなと言われても絶対についていきます」
「わたしも連れてってください! 魔力でお嬢様を支えさせてください!」
「……わかったわ。ジェンとアマリアはついてきて。ラグラナ。あとはお願いね」
「畏まりました。ご無事でお帰りください」
「最初から死ぬ気で挑むほど勇敢な女ではないわ。わたしは、最初から勝つ気で挑む小心者よ」
度胸があるなら令嬢なんて辞めているわ。先の暮らしを考えたら令嬢でいることのほうが得だから令嬢を続けているし、貴族の義務を果たしているのよ。
「着替えるわ。アマリアも騎乗服に着替えなさい」
一応、メイドたちには騎乗服を用意してある。万が一のときのためにね。
馬車に入り、着替えて出ると聖騎士たちが並んでいた。
「二十三名。最後までチェレミー嬢に付き従います」
「わたしが求めるものは勝利だけ。敗北はいりません。生きて勝つ気のない者は去りなさい」
が、去る者は誰もいなかった。
「タルル様。ログライス伯爵領へお願いします」
と言うか、人の頭に乗らないでくださいよ。真面目な場面なんですから。
「わかった。いくぞ」
視界が揺らぎ、ログライス伯爵領へと向かった。
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