第496話 レベル5 上

 あー。わたし、前世でどんな業を背負ったのだろう? 誇れる人生じゃなかったとは言え、おっぱいを愛して生きてきたのにな~。


 って、現実逃避をしています。


 わたしの予想では渦は「よーいドン!」で生まれたと思っていた。


 これまでの渦がレベル3以下。それ以上はなかったから一斉に生まれたと思っても仕方がないじゃない。否定できる人がいたら教えて欲しかったわ。


 ちなみにレベルは7段階。文献の内容を読んでわたしが勝手に決めたものです。


 聖女が喚ばれるのはレベル5になってから。渦に冒された獣が魔獣化して各地を荒らし回っている段階になってからだった。


 もう手遅れな状況にも思えるけど、そこは聖女の力がチート級だったからできたこと。巫女たちではかなり苦労するレベルでしょうね。


 ゴズメ王国が失敗するまで預かった巫女を成長させる。それがわたしの計画だった。


 そう、だったと過去形にしなくちゃならない状況に追い込まれてしまった。


 ……わたしはただ、おっぱいに囲まれてスローライフをしたかっただけなのに……。


「チェレミー嬢、どうすればいい?」


 集まった人たちの目がわたしに集中する。


 知らんがな。と言いそうになるのをグッと我慢した。


 今日の朝、王都から伝令がやってきてログライス伯爵領内でレベル5に達していると思われる渦が発見されたと報告された。


 ログライス伯爵領は、ここから馬車で六日くらいの距離で、王都からは十日の距離。隣国に接した領とのことだ。


 ……辺境と思わなかったわ……。


 これまでは世界樹の影響力が外れたところで渦は発生していた。なのに、今回はその倍の距離で発生し、レベル5になるまで発見されなかったのだから想定外としか言いようがないわ。


「困ったものです」


 紅茶をもらって心を落ち着かせる。


「……打開策はないのだろうか……?」


「あれば聞かせて欲しいくらいです。レベル5ならログライス伯爵領はもうダメでしょう。よく王都に伝わったものです」


 誰かが必死で伝えたか、報告に向かった者が発見したのか。今のわたしにはわからないけど、手持ちの聖水や世界樹の葉が尽きたところで報告がくるとかなにかに嫌がらせされている気分だわ。


「聖騎士団の食糧はどうです? 手持ちの量で何日戦えますか?」


「二日が限界だな」


 二日か。まあ、各地で補給をしているから手持ちは二日から四日って量でしょうね。わたしたちもそう変わらない。無補給で旅をしようなんて考えてなかったからね。


「判断に難しいところですね」


 打てる手はそうはない。なにを大切にしてなにを切り捨てるか。誰かに決断してもらいたいものだわ……。

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