第495話 活性化 下

「記録官はちゃんと仕事はしていますか?」


「ああ。記録書を読むか?」


「いえ。それはゴズメ王国の機密にしてください。ゴズメ王国には聖女召喚派やゴズメ王国を転覆させようとする勢力がいます。渦の秘密は王国で管理すべきです。これからわたしは渦に関わることをしません。聖騎士団で判断してください。ただ、巫女たちは抜きで行ってください。そろそろ聖騎士様方に渡した武器は渦を霧散させる力が宿っているはずです」


「……宿る……?」


「たくさんの渦を斬ることで武器が渦を学び、少しずつ滅することを覚えていく。これだけ経験すれば巫女がいなくともレベル3くらいの渦なら聖騎士様たちでも霧散はさせられるはずです。あとは、聖水や世界樹の葉を撒くことで渦が収束するのを抑えればよろしいでしょう」


 これだけ渦を浄化してくればわかることもある。まあ、ゴズメ王国としてどれだけわかっているかは謎だけど、そのために記録をさせたのだ。それで学べないのなら国として終わっているわ。


「わたしとしては、一度、大きな失敗をして欲しいところですね。このままでは渦を過小評価してまた前の状況に逆戻りしそうですから」


「それは、いくらなんでも……」


「あの浮かれ具合を見て言えますか?」


 一仕事終えた聖騎士たちはお酒を飲んで浮かれている。勝ち続ける驕りが出てきて始めている。あれは、よくないわ。勝って兜の緒を締めよって言葉、この世界にはないのかしらね……。


「聖騎士様方が大きな失敗をしたとき、わたしはその場にはいません。そのとき、矢面に立たされるのはライルス様でしょう」


「…………」


「そして、責任を負わされるのは巫女でしょう。ほら、状況は以前に逆戻り。ゴズメ王国はまた危機に晒されるということです」


 そんな未来が見えるようだわ。


「……どうしたらよいのだ……?」


「がんばってくださいとしか言いようがありません。こればかりはわたしではどうにもできませんから」


 そんな方法があるなら人は腐ったりしない。努力していくしかないのよ。


「ただまあ、失敗したら失敗したで、ゴズメ王国転覆を企む者を炙り出すことに使えばよろしいです。わたしが連れていく巫女はレベル5まで対処できるまで育て上げておきますから」


「……先見の魔女か。確かにそう言われるだけはあるな……」


「不名誉なことです。わたしは失敗したくないからあらゆる手を打っているだけなのに」


 怪嬢ってあだ名もどうかと思うけど、先見の魔女も酷いと思うわ。まあ、だからって可愛いあだ名をもらっても困るけど。


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