第494話 活性化 上

 なんかもう渦浄化の旅になってんな!


 ミロホム男爵領からあっちにこっちに渦の報告が届き、今、八個目の渦を浄化した。


 もう数えるのも面倒になってきているわ。あとは、記録官に任せるとしましょう。わたしのデータバンクには充分なくらい溜まったしね。


「巫女たちも慣れてきたようね」


 もう恐れることもなくなり、聖騎士との連携も取れてきている。もうわたしは見ているだけ。いや、ちゃんと失敗したときのために動いていましたよ。


「チェレミー嬢。渦が多くないか?」


「そうですね。嫌になります」


「いや、そうではなく、活性化しているのではないか?」


 あら、そんなこと考えるようになったのね。成長したじゃない。


「そうかもしれませんね。巫女が浄化してなければゴズメ王国は壊滅の危機だったでしょう」


 それで異界から聖女を召喚。一大スペクタクルラブロマンスが始まっていたかはわからないけど、国が滅ぶかどうかの状況にはなっていたのは確かだわ。


「……そう、だな。この状況になって王国がどれほどの危機だったかを悟ったよ……」


 今さらかよ。とは口にしない。国王陛下からしてそこんとこを理解してなかったからね。漠然とした不安を抱えていたのはタルル様や聖女召喚を企んでいた者たちくらいでしょうよ。


「人とはそういうものです。どんなに苦い薬を飲んでも数日もすればその苦さも忘れてしまう。ましてや数百年前の悲劇を自分のことのように感じられる人はいないでしょう」


 わたしもおっぱいを堪能したと思っても、数日経つとまたおっぱいに囲まれたいと思っちゃうしね。わかるわ~。


 そうじゃねーよ! って突っ込みは受付ません。


「……王国は危機なのか……?」


「危機的状況はありましたか?」


「……な、ないな……」


「それが答えです。と言っても油断できる状況でもありません。渦はこうして発生しているのですからね。活性化しているのは確かでしょう」


 わたしもこんなにポンポンと渦が発生するとは思わなかったわ。


「どうするかはゴズメ王国が決めることです。こうして渦を浄化する経験を積み、結果を出しているのですから」


 そこまでわたしがやることじゃない。それはゴズメ王国の責任でやることだわ。


「……チェレミー嬢はあくまでも裏方に徹するのだな……」


「ゴズメ王国の歴史にわたしは必要ありませんから」


 わたしに名誉欲はないけど、成果はちゃんといただきます。おっぱい──巫女二人という報酬をいただければ大満足だわ。


「本当に徹底した方だ」


「ただ、ゴズメ王国とはこれからもよき関係であることは願っておりますよ」


 王立植物園を持っているゴズメ王国とは今後とも仲良くすべき理由になる。あれは五百年先まで続けて欲しいものだわ。

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