第478話 従兄弟 上

 レベル3なら浄化させるだけで黒い霧は消え去ってしまった。


「巫女よ。世界樹の葉を撒いてちょうだい」


「はい!」


 世界樹の葉は巫女たちにも持たせている。周辺に撒いてもらいましょう。


 撒いたらモノクルで周辺を見回す。


「反応はないわね」


 あれで消えるってのも不思議なものよね。消えるエフェクトもないから肩透かしだわ。


「コノメノウ様。魔獣っていますか?」


「それらしきものはおらんな」


 魔獣は移動できるのに渦は移動できないのか。なら、ここに原因があるってこと? 


 地面を照らしてなにかないか探してみるもこれと言ったものはなし。なにか物質的要因ではないってことではないのか。


「……謎すぎて手がかりすら見つけられないわね……」


 ヒントなるものすらないとか世界は簡単ではないわね。


「さて。戻りましょうか」


 ここで考えてても仕方がない。謎の追究は神殿に任せるとしましょうか。


「もうよいのか?」


「はい。わたしにはわかりませんので」


「そなたにもわからんか」


「わたしをなんだと思っているんですか。世界のすべてを見透せるほどわたしの目はよくありませんよ」


 レオに跨がり、馬車へ戻った。


「今日はここで野営しましょうか。用意をお願い」


 肉体的疲れはないけど、明日も大変そうなので食事をしたらすぐに眠ることにした。


 朝起きると、ライルス様が戻っていた。どうしました?


「チェレミー嬢。こちらは公爵殿の子息、アルフェルト・ムゼング殿だ。わたしの従兄弟でもある」


「従兄弟?」


「わたしの母が公爵殿に嫁いだのだ」


 高位貴族は少ないからね。どこかで繋がっていても不思議ではないか。


「チェレミー・カルディムです。寝起きで失礼しました」


 公爵の息子がきてるんなら伝えて欲しかったわ。ベールをかけてなかったら失礼になるところだったじゃないのよ。


「いや、こちらこそ疲れているところを申し訳なかった。城に部屋を用意したのでゆっくりお休みください」


 これは逃れられない流れっぽいわね。


「ありがとうございます。短い間になりますけど、お世話になります」


 温泉にいかなくちゃならないので釘を刺しておく。わたしの優先度はおっぱいなんだからね。


「ライルス様。よろしくお願いします」


 お城にいくならお風呂に入っている暇はないわね。朝食をいただいたら出発するとしましょうか。


 ラグラナに任せ、わたしはもう一度馬車に乗り込んで備えつけの洗面で顔を洗い、下着から服まで正装に着替えた。


「アマリア。紅茶をお願い。頭を覚ましておきたいから」


「畏まりました」


 朝食が用意されるまで紅茶を飲んで頭を覚ました。

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