第477話 ムゼング公爵領 下
準備が終わればすぐに出発した。
急げば夜に着くと言うとおり、夕食くらいの時間にムゼング公爵領に入った。
「タルル様。渦は感じますか?」
「まだ遠いが、あちらのほうに感じるな」
夜なので視界が遮られているけど、道沿いにあるわけではないようだ。また山の中か……。
「仕方がありませんね。また巫女たちを向かわせるしかありませんな」
ほんと、ロスク伯爵領やロセランタ男爵領ではよく見つけたものだと思うわ。
「ライルス様。巫女たちを出します」
馬車を停めさせてライルス様に進言した。
「この暗闇では危険ではないか?」
「問題ありません。グリムワールを掲げてライトと発してください」
聖騎士に渡したグリムワールにはライトの付与も施してある。十人も光らせたら充分周囲を照らす光となるわ。
「ルジュクは渦までいっているだろうか?」
「そこまではわかりません。ただ、報告が上がったということは人目のあるところに魔獣がいるのでしょう」
渦と魔獣が一緒の場所にいるとも限らない。ってことは、二手に別れる必要がありそうね。いや、念のため三手に別れましょうか。
「ライルス様は、巫女を三人連れてルジュク様のところに向かってください。わたしが巫女を一人連れて渦に向かいます。万が一のときを考えて巫女は一人残します」
「まさか手勢だけで向かうつもりか?」
「レベル3の渦なら巫女一人で充分です」
「渦の周りに魔獣がいたらどうするつもりだ?」
「ご心配なく。コノメノウ様を連れていきますから」
え? みたいな表情しないでください。貴女も当事者なんですからしっかり働いてもらいます。
「魔力、奪われたばかりなんだが?」
「なにかあったときのために七割で止めておいたのですから問題はないでしょう」
九割もらっても文句言ってくるんですから三割も残っていれば魔獣の百や二百、問題ないでしょうよ。
「ハァー。そなたは容赦がないな」
「容赦して欲しいのなら他者にも容赦するものですよ」
わたしは容赦なく働かせられてますよ。
騎乗服に着替えたらジェン、マニエリ、ラン、巫女、コノメノウ様、わたしの五人で渦へ向かった。
山の中を走り、一時間くらいしてモノクルに渦が映し出された。
「マルジング伯爵領に発生した渦と同じサイズね」
渦のレベルは直接見たのと魔獣から測るものがある。
今回は魔獣を見てレベル3と判断したのでしょう。渦はただの黒い霧だからね。闇の中で見つけるのは困難でしょうよ。
「どうするのだ?」
「さっさと浄化しますよ」
浄化は世界樹でも可能。なら、世界樹の枝で作ったグリムワールでも浄化することは可能。付与魔法で浄化作用を増幅させてやればわたしでも渦を浄化することは可能だ。
「コノメノウ様。魔力を一割いただきます」
「勝手にしろ」
ってことで一割いただき、浄化の光を広範囲に拡散させた。
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