第475話 世界樹の意味 下

 村に戻ってきたらすぐにお風呂の用意をしてもらった。


 あ、これは巫女たちと「ドキ! 皆でお風呂♥」になっちゃう!


 って思ったらライルス様に呼ばれてしまった。もー!


「チェレミー嬢。すまぬが報告書を作るのに力を貸して欲しい」


 報告書? そんなもの書いてましたっけ?


「上から渦の報告書を出せと言われてな。まさか護衛の途中で渦と遭遇するとは考えていなくて記録官を連れてこなかったのだ」


「記録官なんているんですか?」


「そうだな。わたしもすべてを見ていられるわけではない。騎士たちの働きを査定するために記録する者が必要なのだ」


 へー。そんな人がいたのね。ルティンラル騎士団にそんな人いなかったから騎士団長が皆の働きを見ているのかと思ったわ。


「そうなのですか。でも、そのまま見たことを書けばよろしいのでは?」


 なにか難しいことがあるの? 聖騎士ならそれなりの教育を受けているはず。文字くらい書けるでしょうよ。


「恥ずかしい話だが、そういうのが不得意でな。チェレミー嬢に書いて欲しい」 


 おいおい、それでいいのか聖騎士団! 見たことを書くのになにが難しいってのよ?


「……わたしでよろしいのですか……?」


「チェレミー嬢が見たことのほうが正しく上に伝わると思う」


 ハァー。聖騎士団、ちょっと教育し直さないとダメじゃないの? 


「そうですね。わたしからも報告したいことがありますし、今回はわたしが書きます。ですけど、記録官を呼んでください。最低でも三人。わたしだけでは見落としていることがあるかもしれませんからね」


「ああ、もちろんだ。わたしたちも無能と呼ばれたくないからな」


「わたしが書きますけど、聖騎士様から話を聞かせてもらいます。わたしは後方にいたので聖騎士様方の働きは見てませんので」


「もちろんだ」


 書くものを用意してもらい、村に訪れたときから書いていき、わたしの考察やら状況を時系列に書いていった。


 地面に聖騎士団の配置を書いてもらい、一人一人どう動いたかを聞いていく。


「連携が秀逸ですね」


 これで報告書作りも秀逸ならよかったのに、そうもいかないのが聖騎士団ってことか。


「チェレミー嬢は参謀もできそうだな」


「わたしは戦略を組むのは得意ですけど、戦術は不得意ですね。咄嗟の判断は現場に立つ者の経験と感覚が重要となりますから」


「それを理解できている者が上にいてくれるとありがたいのだがな」


「大丈夫でしょう。報告書を出せとおっしゃる方なら」


 聖騎士団の上が誰なのかは知らないけど、報告書の大切さを知っている気配がするしね。


「あとは、わたしのほうで書いておきます」


 ハァー。巫女たちとの御風呂は温泉まで取っておくとしましょうかね。

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