第464話 巡礼旅行 上

 よし! 気力体力時の運……はどうでもいい。まあ、五日ものんびりできたから温泉にいく準備を始めるとする。


 王妃様や第二王女もいくとなると明日にもレッツゴーってわけにはいかない。護衛の兵士を用意したりあちらの受け入れ体制を整えなくちゃならないとかで一月(ゴズメ王国の暦でね)は欲しいとのことだった。


「なら、各地を旅しながら向かいますか」


 わたしだけなら手持ちの護衛や食料で十二分に足りている。王妃様やルーセル様は準備が整ったら出発してもらいましょう。


「あ、巫女たちも連れていきましょうか」


 巡礼って名目にすれば各地の神殿を観光できるし、神殿側としても喜ばれるでしょう。


「神殿に手紙を書いてちょうだい」


 巫女たちを集め、王都の神殿に巡礼旅行をすることを報告させた。


 返信がくるまで待ってられないので、温泉があるルクセンク伯爵領はここから馬車で三日の距離。ざっと九十キロ。一月かけて向かうとなると……海までいけるかしら?


 ゴズメ王国は海に面している。ここから馬車で十日くらいの距離らしいのでわたしの馬車なら七日くらいでいけないこともない。


 王国の地図をわたしなんかに見せていいのか? と思いながら旅程を巫女たちと考え、王妃様に許可をもらうために説明した。


「わかりました。ただ、ルーセルも連れてってくれる? あの子にも王国を見せてあげたいから」


 王妃様の考えはなんとなく読めるけど、本心まではわからない。わたしはゴズメ王国の内情を知らないのだからね。


「わかりました。ただ、侍女は二人だけにしてください。あとはわたしのメイドにやらせますので」


 あと、兵士もいらない。うちの護衛騎士と兵士で事足りるからね。下手にいると旅程が遅くなる。わたしたちだけのほうが自由に動けるわ。


「ええ。陛下に知らせるから三日待ってちょうだい」


「わかりました」


 コルディーに運ぶものもあるし、タルル様にはがんばっていただきましょう。


「……お前は本当に容赦がないよな……」


「そろそろわたしという人間を学んでください」


「お前を学んだら人間不信になりそうだよ」


 なんとも失礼な守護聖獣様だこと。わたし、容赦する者には容赦してますからね。


「帝国菓子を作る材料を取りにいくのでお願いします」


「任せろ!」


 なんだ、このチョロすぎる守護聖獣は? ゴズメ王国の未来が心配で堪らないわ。いや、コルディーも心配になるけど!


「コノメノウ様。またわたしの部屋のお酒を盗りましたね」


「梅酒が飲みたくなったのだから仕方がなかろう」


 仕方がなかろうじゃないわ! 守護聖獣としてのプライドはないんかい! ほんと、うちの守護聖獣様は困ったお方なんだから。最初の威厳はどこにいったんだか……。

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