第465話 巡礼旅行 下

 ………………。


 …………。


 ……。


 あ、最初から威厳なかったわ。メンゴメンゴ。


「梅酒はもう少ないんだから大事に飲んでください。サツリエ焼酎は飽きたんですか?」


「飽きてはいないが、今日は梅酒の気分だけだったのだ」


 気分でわたしの部屋に忍び込まないでくださいよ。守護聖獣としてのプライドはないんですか?


「どうせどこかに隠しているんだろう? 出し惜しみするな」


「出したらすべて飲むでしょう。梅酒はお妃様も好きなんですから送れなくなるので盗らないでください」


 なぜか女性に人気で消費が早いのよ。来年はどこかの領から買わないといけないくらいだわ。


「チェレミー様」


 コノメノウ様を叱っていると、巫女たちがやってきた。


 神殿を離れたからか、自然と笑みが出るようになっている。わたしとしては重い服ではなく体の線がよく出ているワンピースを着てくれたことが嬉しいわ。


 ……走っているときに揺れるおっぱいってなんでこんなに心が躍るのかしらね……? 


「旅に出ると聞いたのですが?」


「ええ。温泉の用意が整うまで一月ほど巡礼旅行を行います。神殿に寄るときは少々面倒になりますけど、あとは旅行です。そう深刻にならず楽しんでください」


「それは楽しみです!」


 本当に年相応の顔になったものだ。できることなら五人を連れて帰りたい。けど、さすがに二人がやっとでしょう。なんなら二人を取り戻そうとする動きが報告されている。


 二人は絶対に死守し、ゴズメ王国に残る三人には人生を楽しめる力を与えてあげましょう。このおっぱいを悲しませたくないわ。


「一応、三日後には出発を予定しています。なにか欲しいものがあるなら商人を呼んでも構いませんよ」


 巫女たちには民の暮らしを知る必要がある。民を知り、己を知らなければ誰かを守りたいなんて感情は出てこない。巫女はもっと人を世界を知るべきなのよ。異世界から犠牲者を呼ぶという発想がなくなるくらいにね。


「商人を呼んでもよろしいのですか?」


「構いません。呼べば明日にはくると思いますよ」


 商人に種族は関係ない。儲け話には敏感だし、先見の明もある。王妃様や世界樹の巫女、そして、わたしがいるのだ。繋がりを持つためなら夜を通して駆けつけてくるでしょうよ。できない者はできる者にその地位や富を奪われるだけだわ。


「では、お願いします」


「ええ。わかりました。ラグラナ。王都に人を走らせてちょうだい」


 ルース商会を通して商業組合に窓口を創ってもらった。そこに伝えれば明日にはやってくるでしょうよ。窓口の意味を伝えられるいい機会でもあるわ。わたしもお土産を買っておくとしましょう。


「あ、メイドたちにもお金を渡しておいて。欲しいものがあったら買いなさい」


 メイドたちもお土産を買いたいでしょうからね。


「畏まりました」


 さて。そろそろ王妃様たちとお茶をしましょうか。まったく、出発まで忙しくて仕方がないわ。

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