第461話 誰が始めた物語? 下

「では、お願いします」


 こちらから持っていくものをすべて転移してもらった。


 ……やはり気候や空気が全然違うわね……。


「ラグラナ。あとはお願い。わたしは王妃様とルーセル様に挨拶してくるから」


「畏まりました」


「ハーマイ。お二方は?」


「今は湖へウォーキングにいっております」


 王妃様、すっかりウォーキングが日課になったみたいね。付き合わされるルーセル様は大変だけど。


「そう。では、わたしもいきます」


 帰ってくるのを待ちたいけど、ウォーキングを始めた者としては不平は言えない。いくしかないでしょう。


「館周辺に兵士が増えたわね」


「はい。チェレミー様が一時帰宅した次の日には百人くらいやってきました」


 国王陛下が手配したのかしら? あの方、決めるまでに時間はかかるけど、決めたら迅速よね。まあ、そのせいでローイング侯爵様に利用されるのよね。


 湖に向かうと、護衛の兵士に囲まれて休んでいた。


「身分が高いのも大変ね」


 誰かに囲まれて過ごす毎日って休まらないでしょうね。おっぱいに囲まれるなら二十四時間体制でもウェルカムだわ。いや、そんな未来にしたいです!


「ただいま戻りました」


 兵士たちがわたしたちに気がついて囲みを緩めて道を作った。


 ……統率が取れているわね。ただの兵士ではないみたいね……。


「お帰りなさい。疲れているようね」


 ベールはかけているのに疲れているのが出ているようだわ。


「はい。少々疲れました。仕事が立て続けに舞い込むもので」


 隠しても無駄なので正直に答えた。


「ごめんなさいね。心労をかけてしまって」


「王妃様が謝ることではありません。わたしが判断して決断したこと。誰のせいではありません。わたしの能力が足りないだけです」


 能力がないのなら努力で補うしかない。わたしは誰かに責任を押しつけたりはしないわ。


「厳しいのね」 


「わたしが望んだ物語。どんな結果になろうとわたしは最後まで続けるだけです」


 望んだものが大きいことは知っている。それでも欲しいのだから厳しいくらいで諦めたりはしないわ。


「ルーセル。チェレミー嬢のようになれとは言いません。不可能ですから。でも、学べることは学びなさい。必ずあなたの糧となるでしょう」


 わたしを見本にするのは止めておいたほうがいいですよ。教育的に……。


「はい。わたしもチェレミー様のような女性になりたいです」


 おっぱい好きになるのなら大歓迎よ。一緒におっぱいを求めましょう。


 そうじゃねーよ! って突っ込みが聞こえたけど、まあ、気のせいよね。わたしはおっぱいハー──じゃなくてスローなライフを求め続けるわ。

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