第458話 どこでも扉 上
そろそろわたしのキャパがオーバーロードしそうだわ。
どうしてスローライフを送ろうとすると激務になるのかしらね? 暮らしを快適にしようとして家電を買ったら破産したみたいな感じだわ。
「……わたしの意を汲んで動いてくれる人が五人くらい欲しいわ……」
って、わたし、人より五倍は働いているってことか。そりゃキャパもオーバーロードしそうにもなるわ。
「お嬢様」
椅子でぼんやりしていたらラティアに声をかけられた。
「ごめんなさい。ぼんやりしてたわ。なに?」
「ラグラナ様たちが帰ってきました」
「あ、そうだったわね」
椅子から立ち上がり、外に向かった。
外にはラグラナやルーセル様の荷物、ゴズメ王国で買った残りが届けられていた。
「ご苦労様。タルル様。これを王妃様に届けてください」
各所に宛てた手紙をタルル様に渡した。
「……お前は本当に容赦がないな……」
「容赦して欲しいなら他者にも容赦できるようになりましょうね。よき関係を続けたいなら配慮が必要ですよ」
容赦しないなら容赦されない覚悟も持ちましょうね。
「ラグラナ。ローラと一緒にルーセル様の侍女たちの面倒を見てちょうだい」
わたしは指揮官なのでラグラナたちに命令を下すのがお仕事。なのに、心労は溜まるばかり。糖分が欲しいわ。
執務室に戻り、モリエから財務状況を聞きながらもうしばらく留守にしても大丈夫ように指示書を作った。
さらに各所から上がってくる報告書に目を通し、問題があれば指示書を書く。ほんと、意を汲んでくれる者が欲しいとは言わないから秘書を増やさないと身が持たないわ。
「王宮から文官って呼べるかしら? お城の運営はそちらに任せたいのよね」
「伯爵夫人を呼んではどうでしょうか?」
「伯爵夫人?」
なぜ伯爵夫人なの?
「お妃様の派閥の方で、子育ても終わり、暇を持て余している方がおります。その方に任せてはどうでしょうか?」
「お妃様の考え?」
「………」
どうやらお妃様の考えらしい。ゴズメ王国の王妃様といい、お妃様といい、賢い方ばかりで頼もしい限りだわ……。
「じゃあ、任せるわ。モリエが代表になって取り決めてちょうだい」
こうなることを見越して用意していたんでしょうね。こちらの様子が正しく伝わっていてなによりだわ。
「それと、そこの壺をお妃様に渡してちょうだい。毎日魔力を籠めるように伝えて。ここと王宮を繋ぐためには必要だからね」
「……可能なのですか……?」
「可能よ。魔力があれば、だけどね」
わたしがやろうとしているのはどこでもド──扉。王宮とお城を繋ぐ扉。行き来をできるようにするためだ。
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