第456話 視察 上

 ロセランタ男爵のことは叔父様にお願いし、わたしはお城建築の視察をする。


「ラルフ様」


 伯爵ながら作業服に身を包み、職人の中で埃まみれになって働いている。わたし以上に変わった人よね。


「おー。帰ってたのか」


「はい。一時帰宅しております。数日しかおれないのでお城の様子を見に参りました。かなり進んでおりますね」


 基礎も早かったけど、もう土台とか、どんだけ仕事が早いのかしら? お城ってこんなに早く造れるものなの?


「ここは、変な注文もなければ予算の心配もない。食事も寝る場所も段違いだ。一生ここで仕事をしたいと思えば思うほど仕事の進みが早くなるよ」


「それならお城が終わればゴズメ王国の大使館を造っていただけますか? 資金はゴズメ王国に出させるので好きに造ってもらって構いませんよ」


「急転直下だな、チェレミー嬢は。大使館なんて言葉、久しぶりに聞いたよ」


「王国に大使館なんてあったんですか?」


 コルディーは他国と繋がりがあるなんて聞いたことないわよ?


「正式な大使館はないが、他国の者は密かにコルディーに窓口を建てているよ。コルディーもまったくないってのもいざってとき困るから容認しているのさ」


「ゴズメ王国の窓口もあるのですか?」


「あるとは聞いたことあるが、どんなものかまではわからん」


「そうですか。まあ、そちらを通さなかったということは小さい窓口なのでしょう。大使たるロセランタ男爵様を連れてきたので落ち着いたら会ってください。話は通しておくので」


「本当に仕事が早いな。大使なんてそう簡単に決められるものなのか?」


「優秀な人材がいたから国王陛下にお願いした。それだけです」


「それを通すのがどれだけ難しいか考えるべきだな」


 まあ、難しくならないよう道筋を立てたからね。話は簡単に進められたわ。


「大使館を造る資金も許可はこちらで取るので考えておいてください。場所はロセランタ男爵様と相談してもらえると助かります」


「ああ、こちらかも連絡はしておくよ」


「お願いします。他に不自由していることはありますか?」


「これ以上居心地がよくなると離れられなくなるからこのままで構わないよ」


 つまり、問題なく進んでいるってことね。なら、もうしばらく離れていても構わないわね。


 職人たちの邪魔にならないよう土台を見ながら職人たちに声をかけて回った。


「結構な人が集まってきているわね」


 職人だけで三百人は集まっているんじゃないかしら? 他に影響がなければよいのだけれどね。


 一時間くらい見て回ったら職人町のほうに向かった。

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