第453話 難しい立場 下

「どこからか話がきたときは断ってください。他から話がきていることを臭わせて」


「断れないところからきたら?」


「お妃様からも話が上がっていると、困ったように伝えてください」


「いくらなんでもそれは不味いのではないか?」


「構いません。どうせ言ってくるでしょうからね。早いか遅いかの違いです」


 攻める手は少ないのだからナジェスに婚約者を紹介するくらい言ってくるわ。


「もちろん、ナジェスに好きな女性ができたらわたしはその愛を応援しますわ。たとえ相手が貴族でなくてもね」


 貴族にする方法などいくらでもある。誰が相手でもわたしはナジェスの味方だわ。


「まあ、それはないとして、カルディム家のためになるなら叔父様が判断して決めてくれて構いません。我が家より地位の高い方の令嬢ならお父様も納得するでしょうからね」


「……なにを企んでいるのだ?」


「企んではおりません。いくつか予想を立てているだけですよ。恐らくレアナは、マルビオ家からお話がくると思います。カルディム家と繋がりを持ちたいような動きをしていましたから」


 本当はわたしが嫁げばいいんでしょうけど、ルゼット様はそれは無理と読んでいるでしょう。なら、レアナを求めて親戚関係を結ぶことを考えるでしょう。あそこは次男がいるからね。


「……マルビオ家か。メイベル嬢も呼んだんだろう? さらに出したりするのか?」


「ダメなときはメイベルをナジェスの婚約者に仕立てるかもしれませんね」


 婚約破棄をしたら確実でしょう。そのくらいやってしまうくらいの地位にいる家だからね。


「それもお前の企みか?」


「予想の一つですよ。企んではおりません」


 メイベルがわたしのところにくるように企みはしましたけど。


「それはまた話し合いましょう。まだ猶予はありますからね。まずはゴズメ王国の大使と会ってください。これから長い付き合いとなるのですからね」


「ゴズメ王国とどう付き合えというのだ。こちらは地方の領主代理でしかないのだぞ。あと、大使とはなんだ?」


「大使とはその国の代理者です。権限はそこまでありませんけど、国を背負っている者。叔父様は領主代理として大使と友好を築いてもらえば構いません。ゴズメ王国との交渉はこちらでやりますから」


 あちらもコルディーとの窓口は持っていない。わたしを通して繋がるしかないのだからわたしがやるしかないのよね。


「まあ、お酒でも飲みながら世間話でもしてください。大使はかなり優秀な方ですから」


 わたしは侍女たちのこともある。任せられることは叔父様に任せます。

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