第25話 コルディアム・ライダルス王国

 朝食を終えたら軽く指輪ライターや火つけ棒を創ったら、壺に魔力を籠める。


「わたしの魔力も増えたわね」


 少し前のわたしの魔力を千としたら千百になった感じかしら? 同じ量を籠めたのにまだ余力を感じる。やはり魔力は鍛えたら増えるのよ。まあ、微々たる上昇率だけど。


「アマリア。あとはよろしくね」


 マゴットの準備もできた頃でしょう。呼びにくる前に一息ついておきましょう。結構な量を買ってきたみたいだからね。


「はい。畏まりました」


 引き出しから紅茶とお菓子を出して一息。飲み干した頃にマーナがやってきた。


「お嬢様。マゴット様の用意が整いました」


「わかったわ」


 カップて皿を引き出しに戻し、マーナの先導でマゴットのところに向かった。


 向かった先は館の裏。厩と倉庫建設中のところで、地面にたくさんの箱や樽が並べてあった。


 さすが馬車三台分。なかなかの量になるわね。


「チェレミー様。先ほどだした料理人のレイドーラです」


 荷物を見てたらマゴットが三十前くらいの男性を連れてきた。


 帝国人は銀髪や灰色の髪が多いと聞いていたけど、レイドーラは赤毛で、褐色の肌をしていた。


「レイドーラです。コルディー王国の料理を学びたくて海を渡ってきました」


 正しくはコルディアム・ライダルス王国と言うけど、長いからコルディーって短く呼ばれているわ。


「向上心があって素晴らしいわ。けど、うちの国ってそんなに料理が有名だったかしら?」


 王都でそんな美味しい料理なんて食べたことはなかったし、有名とも聞いたことがないわ。それとも庶民の間では美味しいものが広がってるのかしら?


「正直、食材は素晴らしいのですが、料理はいまいちでした。ですが、マゴットさんからお嬢様の話を聞いて、是非、その知恵をお教えください!」


 マゴットはなにを言ったの? わたし、あれ食べたいこれ食べたいとしか言ってないわよ。前世から料理なんてそんなにしてないし。


「この館で出される料理はチェレミー様の知恵で作られたものでしょう。調味料もそうですし」


 まあ、調味料がないと美味しいものはできないからね。調味料類は材料をとにかく集めて錬金壺に放り込み、片っ端から創ったわ。


「うーん。まずはあなたが作るものを食べさせてちょうだい。材料や調味料は好きに使って構わないから。マクライ。ガイルに話を通しててちょうだい」


 顔会わせとかそちらに任せるわ。料理人同士、腹を割って料理道を極めてちょうだいな。まあ、反発し合うようならわたしが出るけどね。


「畏まりましたお嬢様。レイドーラ。こちらに」


「はい! ありがとうございます!」


 嬉しそうにマクライについていくレイドーラ。そんなに嬉しいものなの?


「レシピは門外不出だからな。その家の味を教えてもらうなんてなかなかないんだよ。特に貴族が抱えている料理人のレシピはさ」


「そう言うものなのね。美味しいはどんどん広めたほうがさらに美味しい料理が生まれるものなのにもったいないわね」


 レシピがあろうと最後に求められるのは料理人の腕。極めた者が料理を美味しくするものなるものだわ。


「そう言えるチェレミー様だから連れてきたのさ」


「あなたは出会い運がありそうね。今後もこれはと思った者は連れてきなさい。わたしが仕事を与えるから」


 手駒は多くあったほうが快適なスローライフが送れるってものですからね。


「はい。お任せください」


 マゴットは商人より人材発掘が向いてそうね。今のうちに転職させようかしら?


「しかし、よくこれだけのものを買えたわね? お金、大丈夫だったの?」


 わたし、そんなに儲けさせたかしら? 


「豆を集めて帝国の商人に売ったんだよ」


 ん? どう言うこと?


「帝国じゃ豆を家畜のエサにするらしく、バナリアッテじゃ高値で取引されているんだよ」


「豆って今が時期だったかしら?」


 それほど詳しくはないけど、春の半ばと秋の終わりくらいじゃなかったかしら? 種類によっては夏も採れるとは聞いたことあるけど。


「去年の乾燥豆を買ったんだよ。古いのは畑の肥料となるからね」


 へー。そんなのがあるのね。おもしろいことを聞いたわ。

 

「近隣の村から買いつけて帝国の商人に売りつけたのさ」


 なるほど。あの鞄があれば馬一頭で近隣の村を回るのも難しくもないわね。


「寝る間も惜しんだみたいね」


「チェレミー様にはお見通しか」


「あなたはそう言う性格ですからね。あまり無理しないのよ。もう一つ創ったから」


 アマリアがきてくれたことで鞄にも魔力を回せた。二つあればもっと余裕が出るでしょうよ。


「ありがとうございます。これからもチェレミー様のために働かせていただきます」


 いつにない真面目な顔で一礼するマゴット。あなたらしくないわね。


「米はこれだけなの?」


 麻袋が六袋あった。これが米でしょう。


「米と言っても数種類あったからな、試しに三種類買ってきた。好みのがあったら次はたくさん買ってくるよ」


 数種類もあるんだ。帝国では米が主食なの?


「そう。それは楽しみだわ」


 炊いてよし。お酒にしてよし。お米は美味しいもの。いろんな試してみますかね。 

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