第12話 アマリア

 目を覚ますとそこに巨乳が。手を伸ばしたところにわたしの求めるものがあった。


 あぁ、神様、いただきます。


 手を上げたら誰かにつかまれてしまった。そ、そんな~!


「お嬢様。気分は如何ですか?」


 巨乳から顔が出てきた。あ、アマリアか。見慣れない巨乳だからすぐにわからなかったわ。


「気分は悪くないわ。魔力切れはいつものことだからね」


 使い切ると死んでしまうこともあるけど、わたしはリミッターをつけて九割までしか出せないようにしてある。どうせ、倒れたらメイドがベッドに運んでくれるんだから気にせず使っちゃいなよ、ユー! だ。


「お水をちょうだい」


 よっこらせと上半身を起こした。


 すぐにクッションを背中に入れてくれ、水差しからコップに注いでくれて渡してくれた。


 やはり、ここにくる前に教育はしてきたみたいね。


「ありがとう。起きるわ」


 まだ明るいところをみると、三時間くらい眠ったみたいね。


 こんなことやってたからわたしの魔力回復は飛び抜けている。九割使い切っても三時間あれば八割以上は回復できるようになったわ。


「だ、大丈夫なのですか?」


「大丈夫大丈夫。でも、魔力を消費したからガイルに食事を運ぶように言ってちょうだい。お腹空いて仕方がないわ」


 お昼前に魔力を使い切っちゃったからお腹の虫が大合唱しているわ。


「は、はい! すぐに用意します!」


 寝室を飛び出していってしまった。あ、うん、まだ教育し切ってないうちに連れてきたのね。


「マレア。いるのでしょう。着替えを手伝ってちょうだい」


 呼びかけたらすぐにマレアが入ってきた。


「お嬢様にはお見通しですか」


「あなたはいつもわたしの近くにいたでしょう」


 五歳まではわたし付きだったし、なんだかんだとわたしの世話をしていた人。ほんと、マレアの目を盗みながら行動するのが大変だったわ。


 マレアの手を借りてコテコテの寝巻きから薄手のワンピースに着替えた。


「いつも一人で着替えているのですか?」


「人の手を借りるほどの服ではないからね。ここに移ってからは着替えは一人でしてるわ」


 友達の伯爵令嬢はすべて人の手を借りて生きているし、わたしも王都の屋敷では四人のメイドにすべてを任せていたわ。


 伯爵令嬢に自由なし。背丈の近いメイドに変化の腕輪をさせて身代わりにするのも一苦労だったものよ。


「そう言えば、誰かの手で着替えされるのが心底嫌と言う感じでしたね」


 当たり前って顔はしてたんだけど、思いまでは隠し通せなかったみたいね。いや、マレアだから気がついたんでしょうけどね。


 薄手のワンピースに着替えたら自分の部屋に移った。


 机について、引き出しから紅茶を出して食前の一茶でお腹を調えた。


 飲んでいる途中で、ラティアとアマリアがワゴンに料理を乗せてやってきた。


 机の上に並べてもらい、三人に見られながらいただいた。


 トイレすら誰かに見られながらしなくちゃならない伯爵令嬢。なんの羞恥プレーだよ! と思いながら堪えたわたしには、食事を見られているからって動じない精神を身につけられたわ。


 普通令嬢ならとても食べられない量の食事を終えたら口をしっかりと灌ぎ、椅子を倒しておやすみなさい。残り二割を回復させた。


 魔力全回復させた頃には夕暮れの時。今日は外にも出れなかったわね。


「おはよう、ラティア。右の棚から三十八番の壺を出してちょうだい」


 あくびを一つして、午前中に魔力を注いだ壺を出してもらった。


 出してもらった壺を机の左端に置いてもらい、アマリアに壺を触ってもらった。 


「アマリア。あなたの魔力をその壺に貯める。まず手のひらから魔力を出すようなイメージをして」


「は、はい。畏まりました」


「緊張しなくていいわよ。今日はあなたの魔力を壺に覚えさせるために三割だけもらうわ。明日からは午前中に半分だけ籠めて。回復のために午前中は休んで午後からはわたしの補佐を頼むわ」


「は、半分でよろしいのですか?」


「しばらくは半分でいいわ。魔力をいきなり失うと言うのは意外と体に悪いの。まあ、それが魔族の血が流れているあなたにも該当するかはわからないけど、しばらくの間は半分だけもらうわ」


 引き出しから片眼鏡、モノクルを左にする。


「これは魔力の容量を見るためのもの。うん。さすがわたしの十倍と言うだけはある。凄い魔力量だわ」


 これは色で表示させたものだけど、アマリアが光に満ちていて白く輝いている。確かに人の域を出ているわね。


「少しずつ魔力を放ってちょうだい。わたしが判断するから」


「か、畏まりました」


 集中するためにアマリアが目を閉じると、魔力が壺へ流れ始めた。


 意外とスムーズに出しているわね。


 見た目は完全に人だ。角があったり羽が生えてたりはしない。となれば、服の下が人ではないなにかが出ているのね。仲良くなれたら一緒にお風呂に入りましょうっと。


 アマリアの光が白から金になったので、そこで止めさせた。


「うん。わたしの一日分くらいにはなったわね。アマリア。体調はどう?」


「少し、体が重くなったような気がします」


「生きるだけなら魔力なんて使わないからね。慣れたら三割使っても気にもならなくなるわ。少し休んでなさい」


 さっそくその魔力で指輪ライターに、嵌めてる者の魔力を使って火を出す付与をつけていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る