第3話今日は、日記作りをします

[おい、光樹起きろ」

友人が肩をゆすって起こしてくる

なんだぁ~人が気持ちよく寝ているのに 重いまぶたを無理やりあけ周囲を見渡す すると、俺以外のみんなは、起立をしている 前を向くとにこりと笑っている先生がいる

「やべっ」

急いで起立をする

「何がやばいのかな光樹くん」

「あっいやなんでもないです」

周りの生徒がクスクスと笑っている

「そうですか 昼休み職員室に来てください」

いつも優しい先生が怒っている顔ではなく、にこっとしている顔が余計に怖い 

「はい わかりました」


【昼休み】

「光樹お前バカだろ」

友人がからかうように言ってくる

「最悪だよ あの先生話が長ぇんだよ 今日も昼休み寝ようと思っていたのに」

「どうせ、また、夜遅くまでゲームしてたんだろ」

「誰かが、今日放課後遊びに行くって言うからその分もやったんだよ」

「人のせいにするなよ 寝てたお前が悪い」

ぐっ そのとおりだ何も言い返せない

「あまり見ない組み合わせだね なになに放課後遊びに行くの?」

突然話しかけてきたのは、君嶋 実咲だ 

俺たちは放課後やペア組の時こそ一緒だが基本学校では、あまり話さない 女子は体育も別だし、俺と友人が話してるのがめずらしかったのだろう

「おう 今日光樹と放課後ちょっとな」

「へぇ、たまに一緒に帰っているのは見かけるけど、あまり学校では話てないよね?」

「そうだっけ?」

「へぇぁ あっ、そ、そうだな」

やばいびっくりしすぎて変な声でた 気持ちわるっ俺

「そういえば、話すのは初めてだよね 光樹くんでいいのかな?」

「あっ うん そうだね 君嶋さん だよね?」

「そうそう よく知ってるね」

「友人から聞いたことがあるからね」

「えっ?俺そんなはなし…」

俺は無意識に友人のすねを蹴る

「痛った なにすんだよ」

「ごめんごめん足が滑った」

苦し紛れの言い訳をしてでもなんとか、この場を乗り越えなければ

「ンフフ おもしろいね光樹くんって」

 おもしろい?俺が? やべぇ なんでこんな一言で心臓がうるさいくらいに脈を打つのだろう?

それはわかりきっている、この君嶋 実咲という女性は俺が生まれて初めて恋した女性なのだ

「あはは そうかな」

「いいなー私も行きたいなー遊びに」

かわいい かわいすぎる ただ、かわいすぎるがゆえに気づいてしまう

自分とは違うのだと 俺に興味があり、話しかけてきたのではないということに

「俺、実は今日、用事があ…」

「悪いな 実咲 今日は男二人で遊ぶんだ 今度一緒にみんなで遊びに行こうぜ」

友人が俺の話を遮って話す

「そっか そうだよね 急にわがまま言ってごめん 光樹くんもごめんね」

「いや べつに俺は 全然大丈夫」

てくてくと君嶋 実咲がほかの女子がいるところに歩いていく

「よかったのか あれ絶対お前が好きだろ」

「なに言ってるんだ?実咲を好きなのは光樹だろ」

「なっなにいってるんだ そんなわけないだろ」

やっぱりばれてたか 俺ってそんなにわかりやすいかな?

「なんだ それで隠してるつもりだったのか?」

「うるせぇ 誰にも言うなよ」

念のため口止めしておく

「誰にもって お前、俺以外に友達いないじゃん?」

グサッ なんだ胸が痛いぞさっきの激しいドキドキでどこか血管切れたかな?

「お前 もうちょっとオブラートに包めよ お前の変な噂流すぞ」

「だから 友達いないのにどうやってだよ?」

やばい 俺HPはもう0だこれ以上オーバーキルしないでくれ 頼む!

「俺、明日から学校来れないかもしれない」


【放課後】

「それで今日は どこにいくんだ?」

「ん?まだ決めてないぞ」

「は? なんで決めてないんだよ昨日から考える時間はあっただろ」

誘っておきながら目的地も決めてないとは、いったいなにがしたいんだ?

「いいだろ? 行き当たりばったりの方がおもしろいぞ」

俺にはよくわからないことを言ってく友人

「計画性がなさすぎるだろ」

「計画性ってそんなんだから友達や彼女できないんだぞ」

「それは関係ないだろ」

なにをいってるんだ?こいつは

「はあ~ お前女の子にメールや遊びに誘うのも計画性がどうとか考えてるだろ?」

「そりゃ 計画もなしで遊びに誘ったりしても、つまらないかもしれないだろ?」

「まぁたしかに、プランは大事だ だけど、お前みたいなやつは計画性どうのこうのとか言う前に、つまらないかもしれないとか、迷惑かもしれないとか考えて結局、計画しても行動を起こすことはできないままだろ?」

「うっ たしかに」

「以外に勢いってのは大事なんだぞ」

なんか妙に説得力があるな

「まあ行きたい場所はないが目的ならある」

行きたいとこじゃなくて目的?なんだ?

「なんだ?目的って?」

「それは 日記を作りだ!」

カバンから文庫本くらいの大きさのメモ帳?を取り出しにこにこ笑う

は?日記?わざわざいまどき紙に書く?スマホがあるのにか?

「日記?なんでまた?」

「それは俺がいつ死ぬかわからないからだ」

「また肺がんの話か?」

「おう」

「いつまで続けるんだ?その設定」

こんなに長いうそは、初めてだ

「設定も何も本当だからな ほらこれ見てみろよ」

友人はカバンから一枚の紙を出して見せてきた そこには、確かに肺がんと文字が書いてあった そうか本当なのか ん?まてまてまて たしかに三人か二人のうち一人はがんになるとか聞いたことあるが 本当にこいつが肺がんなのか?

「本当に肺がんなのか?」

「だからそうだって言ってるだろ」

クスクス笑いながら言ってくる友人

たしかにこの前 盲腸高とか理由で一週間学校は休んでたが本当の理由は肺がんだったのか?

「いつからだ? なんで今まで黙ってたんだよ!」

友人の思いもよらぬ事実に困惑し 声を荒げてしまう

「おうおう いきなり大きな声出すなよ」

「大きな声って お前…肺がんって大丈夫なのか?」

少し冷静になり、詳しく聞いてみる

「まぁ そんな余命宣告されるほど進行してるわけじゃないし 早期発見ていうのかな そんなすぐにどうこうとは、ならないらしい」

「ならないらしいって お前っ」

自分が死ぬかもしれない病気にかかっているってのに 一番知っとかないといけないことだろ まったくこいつは

「すぐに俺が死ぬかもって 悲しんでんのか?」

ニヤニヤした顔で言ってくる友人

イラっ こんな時に人の気も知らないで

クソっ こいつ殴りたい まじで殴りたい

「なわけないだろ だいだい、お前が本当に肺がんかどうかも、怪しいしな」

そうだ こいつが本当に肺がんかどうかも分かったもんじゃない 

いつものうそを 今回は、手の込んだうそにしている可能性もなくはない

なのに、なぜ、俺はこんなに胸が詰まったような感じがするのだろう

「へぇ~ さっきはすごい声出してたけど」

「お前の勘違いだろ」

「そうか 今回はそういうことにしといてやろう」

友人の病気が本当ならなぜ、こんなにも笑っていられるのだろうか

本当にうそでからかっているみたいに、まるで自分のことが分っていないような笑顔を浮かべている

「お前は今から、いつどうなるか分からない俺の頼みを断れないよな?」

「まぁ そうだな その病気が本当なら」

「よしっ それでは改めて 俺の日記作りに協力してくれ 頼む」

「…わかった お前の病気がうそだと分かるまでは 協力しよう」

「あぁ それじゃ うそだとばれないよう気をつけなきゃな」


俺はこの時、なんとなくだが、この何でもない日常がそう長くは続かないと分かっていた ただ、何も起こらないと目を背けていた

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