04 倒れた男性は【タンカー】の男だった
「とにかくまず応急処置……しなきゃ……。 メルア」
「はい。 光よ、彼の者を癒せ! 【ホスピ】!!」
倒れている勇者パーティーのタンカーの男性に対して応急処置するために、まずはメルアの回復魔法を使った。
使った魔法は初級回復魔法【ホスピ】。
ただ、メルアの魔力が高いのこの魔法でもかなりの傷を癒すことが出来る。
みるみるうちに男性の傷は癒されていく。
「後は失った体力を……これで……」
そこに失った体力を回復させるためにリリアの鞄からポーションを取り出す。
フレアが男性の身体を起こして、リリアがポーションを少しずつ男性の口に流し込んでいく。
「う……、こ、ここは……」
「気が付いた?」
傷が癒え、体力が戻ったタンカーの男性が意識を取り戻す。
「ここは【カラメル洞穴】。 あなたはこの洞穴水が湧く場所で倒れてたの」
「倒れてた……、俺は……」
何か思うとところがあるだろうか。
男性は俯いて考え込んだ。
「姉様、ここで話すのは得策ではないです。 一旦水を採取してからこの方を連れて町へ戻りましょう」
「そうだね……」
「じゃあ、彼は私が見てるよ」
「お願い、フレア姉様」
タンカーの男性をフレアに任せて、リリアは鑑定魔法【スペクタクルズ】を使い、鮮度を調べてレベルが高いものを採取することにした。
なお、水の鮮度は水質の良さという意味であり、水質が良ければ鮮度レベルが高いという事になる。
メルアに鑑定魔法で高い鮮度を持った水をくみ取って貰い、魔法のツボに全て移した。
「リリア姉様、これでいいですか?」
「うん、十分。 これを魔法のツボに移して……。 よし、完了」
これで必要な水の量を確保したので、リリアは再度男性に近づく。
「ひとまず、町に戻るよ。 ここの近くには……私達の町があるから。 領主である私達の父に相談するよ」
「……分かった。 そこに一緒に行こう」
「じゃあ、彼は私が支えよう」
「ライネスさん、お願い」
「君はライネスと言うのか。 済まないな……」
リリアが水を持っていくので、タンカーの男性をライネスが支え、町まで一緒に行く事にした。
リリアは気になっていた。
この男性は、どこか疲れているのではと……。
そして、どうも他人とは思えない何かの事情を抱えているのではと感じていた。
「そういえば……、あなたの名前、教えてもらってないね。 私はリリア・ミユリス。 職業は【錬金術師】なの。 あなたは?」
「そう……だったな。 俺はクリフ・オーガスト。 見ての通りの【タンカー】で勇者パーティーに入っていた男さ」
「入っていた……? どういう事なの?」
タンカーの男性ことクリフは、自分の事を勇者パーティーに入っていたと過去形で自己紹介をしていたのだ。
リリアはそれに引っかかり、不意に聞き返した。
「俺は……、勇者パーティーを追放されてな……」
「え……!?」
「追放……された……!?」
クリフの発言にリリアを始めとした一同が固まる。
勇者パーティを追放されるのは、前代未聞だ。
「何で……追放されたの……?」
「俺が【タンカー】だかららしい。 俺をそう言う理由で追放したのは魔術師の男だ」
「何て酷い……」
追放された理由がクリフが【タンカー】だからだという事と、それを理由に追放したのは魔術師の男だという事を聞いたリリアは、怒りに震えていた。
リリアも【錬金術師】が理由で婚約破棄をされただけでなく、意識を刈り取られた後で暴行を受けたからだ。
「もしかしたら、あの魔術師はサウスベイの回し者なのかもしれないですね」
「確かに。 しかし、【錬金術師】だけでなく、【タンカー】も無能扱いされるのか」
「とにかく、町に戻りましょう。 父様なら何か調べてくれるとは思いますから」
「うん、急ごう」
セインやライネスが色々考察をしているのだが、今は町に戻ることを優先しようとメルアが言う。
リリアも同意し、急いで町に戻る事にした。
リリアとクリフ。
無能扱いされた【錬金術師】の少女と【タンカー】の男が出会った事で、二人はここから仲を深めていく事になるだろう。
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