05 父親への報告

「なるほど。 そんな事が……」


 ミユリス家に戻った後、メルアとフレアは父親に報告をするために、領主室にいた。

 ポーションを作るために必要な洞穴水が採れる【カラメル洞穴】で、タンカーの青年を保護した事と彼が勇者パーティーから追放された事を父親に伝えたのだ。

 それを聞いた父親はすぐに表情を歪ませる。


「勇者パーティーに必須な【タンカー】を追放するとは前代未聞だ。 国王様はこの事を知ってるのだろうか確認を取るさ」


「そうした方がよさそうですね」


 父親の話に、メルアも同意する。

 勇者パーティーに必須な【タンカー】が追放されたと言うのが事実であれば前代未聞の事件になる。

 国王がそれを知っているのかどうか、確認を取る必要があると父親は言ったのだ。


「リリアは?」


「あの子はその追放されたタンカーの人……クリフ・オーガストさんの傍で看病してるわ」


「そうか……」


「リリア姉様も似たような被害に遭ってますから……放っておけないのでしょうね」


 そして、父親はリリアの事についてメルアとフレアに聞いてみた。

 リリアは、現在クリフの看病をしている様子だ。

 彼は応急処置を施しただけなので、空き部屋にて彼を寝かせて治療をしているのだろう。

 また、リリア自身も同じ目に遭っているという事でクリフを放っておけなかったようだ。


「リリアから医者の要請もしているわ。 どうなの?」


「こっちもすぐに出しておく」


 フレアからリリアが医者の要請をしていた事を伝えると、父親はすぐに出すと答えた。

 確実な治療のためには、医者の存在が不可欠だ。

 聖女の回復魔法やポーションなどの回復アイテムはあくまでも応急処置みたいな位置づけだからだ。


「話は戻るが、クリフ君は同じ勇者パーティーにいた魔術師によって追放されたと言ってたんだな?」


「そうです。 私もセイン様も聞いたので間違いはないです」


「そうなるとその魔術師は、サウスベイと繋がってるか、そこのスパイなのかも知れんな。 それも国王様に報告しておくよ」


 再度クリフの件に触れ、彼が同じ勇者パーティーに居た魔術師によって追放されたのは間違いないのかとの確認に入る。

 メルアやセイン、フレアとライネスはリリアと同じく彼の発言を聞いていたので間違いないと言ったところ、父親はその魔術師がサウスベイと繋がってるかスパイではと予想し、それも同時に国王に報告すると言った。

 彼にとってもサウスベイの考えは流石に看過できないのだろう。


「それで、彼は……クリフさんはどうされるんですか?」


 国王に伝える事を父親が言った後で、メルアはクリフを今後どうするかと聞いた。


「彼は暫くリリアの護衛を頼もうと思う。 勇者パーティーを追放された者は、経緯いきさつ問わず再度勇者パーティーに戻る事は不可能だからな。 彼が望めばだが……」


「サウスベイの考えを正義とするサンドールの息子の取り巻きが未だにリリアの命を狙ってるしね。 奴の取り巻きの多さにはげんなりするけどね」


「そうですね。 サウスベイの者が直接そうしに来る可能性もありますし」


「勇者パーティーに選ばれる程だ。 実力はあるだろう。 だから彼にリリアを頼もうと思う」


 父親はクリフの意思次第では、リリアの護衛などを頼もうと考えていた。

 未だにサンドールの息子の取り巻きが錬金術師であるリリアの命を狙って来る状況だ。

 いつでもリリアを守れる存在が必要だろうというのが父親の考えだ。

 フレアとメルアは、その取り巻きがかなりの数がいると言う事にげんなりしていたようだ。


「まずは彼を医者に診てもらう事からだな。 リリアの護衛もご苦労だった。 リリアと彼はこのジョセフ・ミユリスの名に懸けて守ってみせよう」


 リリアの父親……ジョセフ・ミユリスは何としてもリリアとクリフをサウスベイから守り通す事を娘の前で誓った。

 そして、護衛の件でも労う事を忘れない。


 メルアとフレアを下がらせたジョセフは、すぐに医者の手配と国王への報告を行ったのだった。


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