03 採取先の洞穴で見つけたのは……?
「リリア、準備はいい?」
「ん……」
母親から一週間くらい仕事禁止の命令を受け、身体を休めた。
父親からは気分転換に、外を見回ることを勧めたが、リリアは怖がった。
どこかで、サンドールの手の者が潜んでるかもという理由で。
父親がサンドールは取り壊されているからと言ったが、いち早く気配を感じたフレアが窓の外に隠れていたサンドールの息子の取り巻きだった者を仕留め、町の自警団に引き渡された。
狙いはやはり、リリアの命。
サンドールの息子や取り巻き達にとっては、無能の証である【錬金術師】の存在をどうしても抹消したいのだろう。
サンドール家が取り壊されても尚、取り巻き達が意思を引き継いで、南の【サウスベイ王国】と連携を取って無能扱いの職業を持つ者を抹殺すべく動いているのだ。
それがあってか、リリアは未だに外に出るのが怖いようだ。
「今回は、私達が姉様を守りますよ」
「僕達に任せて下さい」
「サウスベイの手の者に成り下がった奴らには私が制裁してやるさ」
「だから、安心して私達を頼ってね。 特に今回は、リリアがいないと分からない素材を取りに行くんだし」
「うん、お願い」
今回のリリアの外出は、どうしてもリリアがいないと分からない素材を採取しに行くためだ。
護衛には姉のフレアと妹のメルア。
そして、フレアの婚約者であるライネス・ラーネッドとメルアの婚約者のセイル・メルロードが担うようだ。
「剣士の二人と聖女のメルア、魔術師の私がいるからね。 奴らの亡霊や魔物から必ず貴方を守ってみせるからね」
「ありがとう、フレア姉様。 じゃあ……、目的地の【カラメル洞穴】へ……」
目的の素材があるとされる【カラメル洞穴】へ向けて、リリアと護衛四人は出発するのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここね」
「うん。 ここの奧に【済んだ水】の元となる【洞穴水】があるから。 鮮度レベルが高い場所を探して……水を汲んでおきたい」
「ポーションの材料の一つですからね。 一旦ここで水を汲んでから、魔力を与えてろ過させるのですね」
「その通り。 じゃあ、入るよ」
町を出て、1時間程歩いた所にある近場の洞穴。
ここが【カラメル洞穴】であり、ポーションの材料の一つである【済んだ水】の元となる【洞穴水】が取れる場所である。
リリアは、何とか四人に護衛を頼んだのは、これの為。
洞穴水の鮮度は、リリアでないと分からないからだ。
婚約破棄事件がきっかけで外出が怖くなったリリアの為に四人は護衛としての同行を受け入れたのだ。
「洞穴の中は油断しないようにしましょう。 姉様を狙う輩が先回りしてる可能性もあるから」
「ええ、そう……ねっ!」
「ぐわぁ!」
「ひぅっ!」
洞穴の中に入り、早速リリアを狙う輩が隠れていたようで、フレアが魔法で駆逐した。
「本当にこいつらは呆れますね。 国王から職業差別を禁じられているのに」
「だからだろうな。 連中はその政策が気にくわない。 魔術師や剣士、聖女がいれば世界は保てるとサンドールの息子は主張していたからな」
「奴らにとっては錬金術師などただの物を作るだけの無能でしかないと」
「そうさ。 だから、奴らは父親に黙って南のサウスベイ王国に接近していたんだ」
残りの刺客を屠りながら、ライネスとセインが話をし始める。
やはり、二人もサンドールの息子の掲げる職業差別主義に不快感を抱いているようだ。
「大丈夫ですか、リリア姉様」
「う、うん」
「本当にこの亡霊どもは最悪ね。 リリアが錬金術師だからって」
全てが片付き、メルアがリリアに声をかける。
震えたままだが、リリアは何とか大丈夫とアピールした。
「それじゃ、行こうか。 目的の場所はもうすぐよね?」
「うん。 というより、すぐそこ……」
「あれか……ん?」
「どうしたの、ライネス?」
「洞穴水の場所に人が倒れている」
「本当だ……!」
刺客を駆逐しながら進んだのか、目的の洞穴水がある場所が見えた途端、その付近に人が倒れているのをライネスが発見した。
リリア達は、迷わずその人の元へ駆け寄る。
「大丈夫!?」
「う、うぅ……」
リリアが真っ先に倒れた男性に声を掛ける。
全身に傷や火傷が見受けられ、鎧もボロボロだ。
だが、男性は何とか生きてはいるみたいだ。
「この鎧、まさか……!?」
「メルア、知ってるの?」
メルアが男性が着ている鎧を見て驚いた様子なので、リリアは恐る恐る聞いてみた。
そして、メルアから返ってきた答えは、衝撃的なものだった。
「この鎧は、王家の鎧です。 勇者パーティーに招かれた【タンカー】が着用する鎧です」
「じゃあ、この人は勇者パーティーの一人!?」
「はい。 でも、何故勇者パーティーに加わってる筈のタンカーの人がこんな所に……」
メルアが言うには、倒れた男性は勇者パーティーに加わっている筈のタンカーの人間だというのだ。
それを聞いたフレア達も驚きのあまり、固まってしまったようだ。
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