6話 女の子のランチタイム(1/2)
昼食を食べるためやってきたのは街でいちばん大きな大衆食堂。
ちなみにもっとお財布に優しくてハンターがよく昼間から利用する酒場は別にあるのだが、今回そちらはパスした。
理由は単純で、若い女の子同士に似合うような場所ではないし、なにより今のリベリカは他のハンターと顔を合わせるのが嫌だったから。
テーブルにつくとアリーシャが独断と偏見で注文を済ませる。
肉に魚とメインディッシュ級の料理をどんどん頼んでいたので、リベリカは全部食べ切れるか心配になったが、アリーシャいわく「朝から何も食べてないから余裕」とのことだった。
ひとまず先に届いたパンを口にしながら料理の到着をしばし待っていると、アリーシャがなにやらソワソワした様子でチラチラ目線を向けてくる。
「……なんでしょう?」
「そのぉ、リベリカちゃんのこといろいろ聞きたいなーって。……聞いていい?」
「構いませんけど」
わざわざ確認を取るようなことでもないのに何を気にしているんだろうか? と不思議に思いつつリベリカが答える。
すると、アリーシャは「やった!」と頬を紅潮させて身を乗り出してきた。
「リベリカちゃん、歳は⁉」
「16です」
「16歳! じゃあ私の方がひとつ年上か! あ、でも別に気を遣わなくていいからね?」
「わ、わかりました」
「あと呼び方どうしよっか? アタシのこと呼び捨てでいいし、リベリカって呼んでいい?」
「どうぞご自由に……」
思っていた10倍くらいのテンションでまくしたられて、リベリカの口元が若干引きつる。
しかし、いまだ距離を測りかねているリベリカにアリーシャはまだまだ距離を詰めてくる。
「じゃあさ、リベリカはいつからハンターに?」
「ギルドに加入したのは去年からです」
「ほぇ、じゃあまだハンターになって2年目だ? フレッシュでいいねぇ、昨日もビュンって飛び出していったのすごかったし!」
「いえ、それほどでも……」
自分なんかより、あの
というのも、「ギルド所属外のハンターの手を借りた」なんてことを公の場で口にするのはまずいのだ。
それはまずいのだが、アリーシャの実力の秘密は気になって仕方がない。
なので少しだけ言葉を濁しながら質問することにした。
「それを言うならアリーシャさんだって……、いったい今までどんな経験を?」
「アタシ? うーん、いろいろあるけど」
アリーシャは明後日の方向に視線を向けて、ブロンドの毛先を指でくるくるさせる。
それからしばらく悩む素振りを見せていたが、やがて集中の糸がプツンと切れたように頬杖をついて答えた。
「ざーっくり言うと辺境の村を転々としながら、適当に依頼を受けてきた感じ?」
「それってもしかして……」
「あー違う違う。
アリーシャはあっけらかんと言って笑うが、それは実に反応に困る答えだった。
王国の統治が行き届かない辺境での狩猟はともかく、この近辺での勝手な狩猟活動は認められていないので、もしも無資格だったなら昨日の狩猟は立派な犯罪行為ということになる。
「アタシは
「なるほど分かりました。……というか、そう言われても今ここで確認する方法はないんですけど」
こちらであれば昨日の狩猟自体は国の法的には問題が無い。
基本的にハンターはどこかの街のギルドを拠点にして活動するものだが、生い立ちや過去の経歴に何か問題のある者は、どこのギルドにも所属しない
リベリカが返答に
気になって振り返ると、ちょうど注文した料理がこちらに運ばれてきている。
「うぉぉ! 肉きたぁぁぁッ!!!」
最初に運ばれてきたのはトリの丸焼き。
どう見ても年頃の女の子がひとりで食べるようなサイズではないが、アリーシャは早くもナイフとフォークを両手に握りしめて目を輝かせている。
その様子を見て、リベリカも一旦話を忘れて食事に集中することにした。
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