第18話 三章② 『学校の異変』

 職員室に駆け込むと午後の授業の準備で教師達がバタバタと慌ただしく動いていた。

 その中には彩葉の姿はどこにもない。

 「―――――クソッ!」

 忌々しい顔で舌打ちをした冥夜を見た教師の一人が近付いてくる。

 「犬塚ぁ、どうした? そんな慌ててぇ」

 どこか呆けているような印象を受けたがこの学校でもゴリラ顔で恐いと有名な生活指導の教師であり、冥夜達の担任の教師でもある。

 「ゴリ……センセ! 彩葉は―――――神代見ませんでしたか?」

 気が動転していたのか危うく教師をゴリラ呼びしてしまうところだった。

 「かじろぉ? いやぁ~わからないなぁ」

 どこか呂律の回らない口調で、目線も何処を見ているか分からない。

 と言うか明らかに様子がおかしい。

 「あの………センセ」

 教師に触れようとした時、奇妙な悪寒が走る。

 視線を動かし感じる違和感を探し出す。

 教師達全員が自分に注目している。

 目の前の生活指導教師ゴリセンも自分を見ていた。

 

 そこで冥夜は気付く。

 同時に授業開始のチャイムが鳴り響く。

 だが教師たちは誰も動かない。

 

 「(ヤベぇッ! 罠か!?)」

 冥夜が動こうとした時、

 「おい犬塚君! 急に教室を出てどうしたって言うんだ!?」

 時見が扉を開けて入ってきてしまった。

 最悪なタイミングでだ。

 それを合図と取ったのか一斉に教師達が二人に襲いかかる。

 目の前にいた生活指導教師がその豪腕で冥夜の首を目掛け手を伸ばす。

 「あぁもう畜生がァァァァァァァァァッッッッッ!!」

 冥夜が叫ぶと生活指導教師の迫る手を払い退け襟元を掴み投げ飛ばす。

 悲鳴を上げること無く気絶をするとすかさず次の教師へ当て身をしていく。

 多少の罪悪感と時見に見られてしまったと言う開き直りから今の冥夜は容赦がない。

 「お、おい! キミは先生達に何を―――――」

 「邪魔ッスよセンパイ!!」

 これでも十分に手加減はしているが多勢に無勢。

 冥夜はある程度教師達を気絶させるとそのまま職員室を飛び出す。

 「おいおい! 一体何がッ!?」

 「いいから今はしゃべってねぇで逃げの一手だよ!!」

 逃げながらも『フィーア』からの連絡を待つが返事がない。

 恐らく妨害でもされているのかもしれないが今は余計なお荷物ときみが一緒にいるのだから堂々と銃を廊抜く訳にもいかない。

 「(クソったれ! 彩葉は職員室に居なかったって事は何処かに拉致られたのかッ!?)」

 廊下を走っていると妙な違和感があった。

 思わず足を止める冥夜に釣られて時見もその足を止める。

 「どうしたんだ?」

 冥夜は答えない。

 一番近くの教室の扉に手をかける。

 無造作に、何の躊躇いもなく開け放たれた扉の向こう側は生徒が全員席について五時間目の授業準備をしていた。

 そう、

 

 あまりの異様な光景に思わず二人は息を飲む。

 「クソが――――――――

 ギョロリ、と一斉に視線を集める。

 二十五人ほどの視線をだ。

 これにはさすがに二人も思わず後退る。

 「お邪魔しましたッッッッッ!!」

 そう言い残し冥夜は扉を思い切り閉め立ち去る。

 時見に至っては普段はイケメンの顔を恐怖で歪めていた。

 「一体何がどうなってるんだ!?」

 「生憎と分かんねーよッ!!」

 分かるのは彩葉がさらわれ、

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