第17話 三章① 『脈動』
翌日、学校の爆発騒ぎは空き教室だった事もあり普通に授業があると言うことできちんと学校に来ていた。
しかし、犬塚冥夜は今年の春で一番のピンチを迎えていた。
「――――――――」
「――――――――」
無言が続く。
何がどうなってこうなったのか分からないが、冥夜は昼休みの教室で、時見と二人、対面に座って、昼食を広げていた。
「いやホント何がどうなってこうなったんっスか?」
「僕が知るわけないだろ」
どうやら時見も何も聞いていないらしい。
しかも冥夜のクラスでの出来事なもんだからクラス中の視線は二人に集中していた。
「何でキミと顔を合わせなきゃいけないんだ。僕は神代さんに用があったのに」
「そりゃ残念っスね。彩羽は今職員室に呼び出しっスよ」
一切目を合わせない二人にクラスの女子はキャアキャア、男子はハラハラとした顔をしていた。
冥夜はどうにもこの
どうやら向こうも同じ気持ちらしく不機嫌な顔を隠そうともしない。
早く帰ってこないかな、と思うと同時にいややっぱり帰ってくるなと思っている自分もいた。
『本当にキミたちは観察し甲斐があるよ』
耳元では『フィーア』が楽しそうに言ってくる。
内心「やかましい」と思いつつも返答するわけにもいかず、ただ不貞腐れたように机に肘をついていた。
「――――――――――――――――」
「――――――――――――――――」
無言が続く最中、不意に時見が口を開いた。
「犬塚くんは、神代さんの事をどう思っているんだ?」
いきなり直球が飛んできた。
「どうって…………」
答えようが無かった。
もちろん影ながら見守っていると答えればストーカー扱いになるだろうし、〝ケルベロス〟の一員ですと答えれば重度の中二病患者に認定されてしまう。
どう答えるべきか迷っていると、
「僕は神代さんが好きだ」
と大胆に告白をかました。
もちろんクラスは阿鼻叫喚の地獄絵図。
冥夜も他人事ならば一緒に騒いでいたかも知れなかったが生憎とどうやら
この状況下で、さてどう言おうか考えていると、クラスの女子があれ? と声を出した。
「そう言えば神代さん、帰ってこないね」
ふと、冥夜は時計に目を向ける。
確かに遅い。
もうかれこれ十分以上待っている。
いくら呼び出しがあったとは言えもうすぐ昼休みも終わってしまうのに戻ってくる気配がない。
嫌な予感がした。
すると同時にイヤホンから慌てた声が聞こえた。
『冥夜!! 学校に潜伏していたアルファチームとの連絡が途絶えた!!』
その報告を聞いた冥夜は素早く立ち上がり教室を出る。
嫌な予感というのは当たるときは当たってしまうものだとそんなことを思った。
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