第15話 二章⑤ 『揺れる決意』
「いや、全くもってやられたね」
〝ケルベロス〟本拠地『禁后』でモニターを見ながら『フィーア』が呟いた。
映像には先ほどの戦闘が映し出されている。
「悪い、取り押さえるどころか逆にやられちまった」
冥夜も同じように画面を見ながら反省をしていた。
あれから人払いの術式が解除されたのか、繁華街は凄い騒ぎになっていた。
戻って来た人たちは口々に何があったのか分からないと答えていてちょっとしたニュースにもなっていた。
それもそのはず、気付いた時には繁華街が地震でも起きたのかというほどの壊れっぷりだったのだ。
そこも深く反省をしていた。
「いや、仕方がない。今回も〝
映像でも分かるほど戦闘力というのが桁違いだった。
ナイフ一本で戦車を相手にしているほどの戦力差があった。
「もう少し大太刀を改良した方がいいか…………だがそうなると武器への負担が大きくなるな」
ふむ、と考え込んでいると暗い表情をしている冥夜に気付いた。
「なんだ? わたしは気にするなと言ったはずだぞ。今回は規格外過ぎだ」
だが、冥夜は静かに首を横に振ると口を開く。
「なぁ、彩羽って一体何なんだ?」
突然の質問に『フィーア』は冥夜を見た。
「なんだ突然」
「俺は――――――――アイツが不幸体質だって分かった気でいたけど、実際は全然理解しちゃいなかったんだなって。あのシャトラってヤツに言われたよ。本気でそう思ってるのかって」
その言葉がまるで呪詛のように頭から離れない。
一度疑問を持ってしまうと身体が思うように動かなくなってしまった。
「冥夜」
ごっっっす!! と冥夜の脳天を『フィーア』が辞書ほどある本の角で思い切りどついた。
「jjふmjぢしけふぃd4いうdfyj5kgfkしぉhgldぃh;dllfkll!!??」
言葉にならないほどの声を上げフロアを転がりまわる冥夜。
「前から思ったんだが、キミはアホだろ?」
人の脳天を直撃しといて言う台詞ではない。
と言うよりも今まさに脳細胞は数万は死滅してしまったと思う。
「確かにわたしたち〝ケルベロス〟は神代彩羽について色々思うところはある。知っての通りわたしの目的はあくまでキミと、そして
『フィーア』は回転椅子に座ったままクルクルと回っている。
「恐らく
「ッ!?」
ふと、十年前に『フィーア』と出会った時を思い出す。
その時も、同じようなことを言っていたのではなかったか?
そして、そんな
「そういう事だ。わたし――――――――〝ケルベロス〟の『フィーア』ではなく、研究者としてのわたしの見解はあるにはある。だが確実に知るにはあのシャトラが所属する〝聖堂教会〟の情報が不可欠だ。それは分かるね?」
まるで子供に言い聞かせるように優しい声で『フィーア』は言った。
冥夜はその言葉を噛みしめる様に自身にその言葉を浸透させていく。
「そう、だな」
冥夜は前を向き、自分の頬を両手で叩いた。
ジンジンと頬が疼く。
「(そうだ。俺は自分で決めたんじゃねーか――――――――アイツを守るって)」
ならばもう迷う必要はどこにもない。
冥夜のすることはただ一つ。
「やってやるよ、〝聖堂教会〟」
次は、必ず勝つ。
そう決意を胸に秘め拳を強く握りしめる。
彼の瞳にはもう迷いは無い。
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