第10話 一章⑦ 『シスターの心中』
冥夜が予想していた通り、学校は急遽休校になり生徒たちは帰宅させられた。
外は凄い騒ぎで警察や消防車、マスコミや野次馬なども大勢来ており学校周辺はちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。
そんな野次馬が大勢いる中、一際目立つ女性が感情の読めない瞳を学校へ向けていた。
金髪碧眼で白のTシャツにデニムのジーンズとシンプルな姿に周囲の視線は釘付け―――――にはならなかった。
そんな目立つ彼女には誰も触れる事はない。
まるでそんな女性は最初からここにはいなかったような事になっている。
『派手にやったな、シスターシャトラ』
どこからか声が聞こえる。
もちろんその声は彼女にしか聞こえない物だった。
「申し訳ありません
教室を破壊したことに対してではなく、あくまでも
『仕方がないことだ。この国の組織も捨てたものではない………シスターシャトラの攻撃を見切る者がいるとは思わなかったよ。キミが本気ではなかったとはいえ、な』
男の声も感情という感情はない。
ただ業務的に淡々と発言をしているだけだ。
「やはり、鍵はあの少年ですか?」
『どうだろうな。だが私も見ていたが何かしらのキーパーソンにはなりうるだろう』
意味が分からないやり取りを軽く交わし、神父を名乗る男は再度シャトラへ宣告する。
『シスターシャトラ、主の命によりあの番犬を速やかに排除せよ。その次は魔女に裁きを与えん』
「
それだけ言うとシャトラはその場を去った。
その瞳には少し、ほんの少しだけ同情にも似た感情が浮かび上がっていた。
この世界に破滅を齎す『
そしてその魔女を守る番犬〝ケルベロス〟の名を関する少年。
誰が悪いわけでもない。
ただこの二人は運が悪かったのだ。
〝聖堂教会〟に狙われたらそれが人間だろうが悪魔だろうが何であれ異端者は等しく神の名のもとに裁きが下される。
だから彼女は感情を押し殺す。
疑問に思ってはいけない。
それが彼女が所属する組織の教えなのだから。
だが、
それでも、
先ほどの少年とのやり取りを思い出してしまう。
『テメェ、それ以上つまんねー事言うなら脳天ぶち抜くぞ!!』
自分が少女の事を魔女、と呼んだ時に見せた怒りの感情。
少年は危ない目に遭っても怒りに触れる事はなかった。
唯一感情がむき出しになったのはその一瞬だけだった。
親しい者を貶されて怒る事が出来る人間は、もしかしたら神に選ばれた自分たちよりも余程人間に近いのではないだろうか?
色々な事を思ってしまう。
今まではこんな感情を持ったことは無かった。
いや、持つ前に異端者は全て一瞬で排除してきた。
今回は手加減したとはいえ排除しきれなかったせいで余計なことまで考えてしまう。
「(余計な事を考えてはダメです。今は任務に集中を)」
次にあの少年に会った時、それは本気で排除しなければいけないだろう。
悲しいかな、少年に万が一は無く。
その後は少女もなす術もなく少年の後を追う形になってしまう。
だが、
どうしてもシャトラの心にはしこりのようなモノが消える事はなかった。
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