第12話 捕獲
そうして10層の街で過ごしていた俺達のところにシュラインがやって来た。
「テクゴミの癖にやるじゃないか」
そんなことを言いに来たらしい。
セツカは1部のプレイヤーにテクゴミって呼ばれてた。
というより余りにも性能が酷すぎて上級プレイヤーはほぼテクゴミ呼びだった。
愛称みたいなもんさ。
俺はそれでもセツカ呼びだったけど。分かる?このキャラ愛。
それでも使い続けられないキャラだったのだ、セツカは。
「まぁやはり僕のアルミナ編成の足元にも及ばないみたいだが?」
アルミナ編成を自慢しに来たらしい相変わらずだなこいつは。
そんなことを思う。
「どこまで攻略は進んだよ?」
そう聞いてみるとシュラインはこう答えた。
「15階層まで到達した」
と口にした。
実はゲームは11階層から先は解放されてなかった。
15階層まで解放しまーすと言うだけ言ってサービス終了した。
データが消し飛んだから。
だからここからはゲームでやった世界じゃないので俺はいつ行くべきかと悩んでいたがシュライン達はもう15階層まで進んだらしい。
「流石最強構成だな」
そうとだけ口にする。
「お前もアルフのパーティ抜けなかったら今頃1強じゃなかっただろうにね」
そう言いながらシュラインはどこかへ歩いていった。
その時ギルド内に15階層が突破された報せが届いた。
どうやらこの世界でも初の突破者だったらしい。
そしてこれから15階層にキャンプ地を作りに行くらしい。
そこから街にするそうだ。
「さて」
俺は座っていた椅子から立ち上がった。
「どうしたんだ、セツカ」
そう聞いてくるマーズに答える。
「奴らが動くかもしれないからな。シュライン達の見張りでもしてやろうと思って」
タワー教だ。
15階層が突破されたという報せは奴らも聞いている事だと思う。
本当のところ15階層を突破するのはアルミナじゃなかった。
解析サイトに流れていたストーリーに俺は目を通してあるからストーリーは把握している。
だとしたら次狙われるのは恐らく突破したアルフやミーナ達という事になる。
シュラインはともかくアルミナをここで欠けさせるのは論外だ。
「私も行こう」
サーシャ達は宿にいろと指示を出して俺はマーズを連れてシュラインの事を追うことにした。
怪我をするかもしれないが、囮になってもらおう。
今までの傾向でアルフやミーナが狙われる可能性は少ないと思うが一応俺は声をかけて一緒に来てもらっている。
「シュラインの野郎が襲われるかもだって?」
そう聞いてくるアルフに頷く。
「恐らく、な」
そう答えて見守っていると
「がっ!」
シュラインが殴られていた。
相手は3人。
これまでの襲撃が失敗したからか人員を増やしたのか?
「マーズは1人、アルフとミーナで1人頼む」
3人の返事を聞いて俺は残り1人の小柄な奴に向かう。
「きゃっ!」
動きが取れないようにタックルをしてから押し倒すとその体に石を押し付ける。
「な、なんで!自爆が!」
女は驚いていた。
「アンチマジックさ」
俺はネタバラシをしてやる。
アンチマジック、魔力を吸収して魔法を使えなくするものだ。
こいつらは魔力を使って自爆するからこうしてやると自爆が出来なくなる。
残りの2人には自爆されたらしいが1人残っている。
問題ないな。
そう思い俺は女を縛り上げて歩かせる。
無駄に喋らないように口をテープで塞ぐ。
「歩けよ」
「んん!!」
アルフにシュラインのことを任せながら俺は買い取ったボロ屋に女を連れ込んだ。
テープを剥がして突き飛ばす。
「も、もっと優しくしなさいよ!」
「優しくして貰えると思ってるわけ?」
俺がそう言いながら近付くと女が顔を赤めた。
「や、優しくしてよ……」
何でそんな顔をするんだよお前は。
そんなことを思いながら訊ねる。
「話せば身の安全は保証してやる」
「話すことなんて何も無い」
そう言って俺は投げナイフを女の顔の横に投げた。
「ひっ!」
驚いている。
使い捨てのコマなのかそこまで教育されていないみたいだな。
少し拷問してやると吐きそうだな。
そう思った俺はペンチを持ち出した。
「う、嘘よね……」
「ホントだよ。話せば楽になるよ?」
「は、話すから待って!」
ほら、脅してやるとこうだ。
そう言いながらも俺はペンチでとりあえず指を挟んでやる。
「わ、私の名前はリリア」
そう名乗ってきたリリア。
「誰に命令された?」
「そ、それは」
「質問を変える。アヴァンという名前を知らないか?」
「あの人は関係ない!!」
分かりやすすぎない?この人。
それにしてもおかしいと思ってたんだよ。
ギルマスが死んだと思われてから、1夜経ったらもうギルマス交代だぜ?
アヴァンが敵かどうかは置いといてギルドの内部には、マーズが死ぬことを把握していたやつがいるはずだ。
だから前もってギルマスになる準備をしていた。
リリアは口を滑らせたことを理解したのか諦めたような顔をしていた。
「何故狙う?」
「知らない、狙えって言われたから」
「誰に?」
「知らない。私下っ端だから。でも神様が言うんだよ。襲えば幸せになれるって」
そう言ってくる。
神様?
あー、タワー教の教祖のことかな。
「神様は何でも知ってるの。これから起こることも全部話してくれたの。この前の作戦でマーズがドラゴンに襲われることも全部教えてくれたの」
転生者、かな。
その神様ってのは。
厄介なものだ。
これから先に起きることも理解しているのなら解析サイトでストーリーを見たかどうかは分かるか。
「16階層で何が起きるかは知ってるか?」
「16階層は還らずのフロアって呼ばれてたよ。何人たりとも挑んではならないって」
俺の記憶の中の16階層と一致する。
16階層から難易度が一段上がるせいでそう呼ばれていた。
もちろん、ゲームではプレイ出来なかったからストーリー上は、だけど。
間違いない。向こうもストーリーは把握してると思っていいか。
タワー教とやらの教祖は転生者、か。
ここまでは確定したが俺達を狙う理由がイマイチ分からんな。
「俺たちについて何か言っていたか?その神様とやらは」
「何も言ってないよ」
まぁ、分からないけど。
この世界にはまだ転生者がいる、ということは理解した。
どこかでこのタワー教とやらに接触してみたいが。
「その宗教団体の集まりは何処にある?」
「教えないもん」
俺はペンチを少し上にあげる素振りをすると
「教えるから待ってぇぇぇ!!!」
リリアの監視をアルフ達に任せて俺はリリアに教えられた教会までやってきた。
街の中にあって、なんかそんな邪教の集まりみたいな感じはしないが。
「ここか」
中に入ってみると早速信徒が俺とマーズを出迎える。
「ようこそタワー教へ」
通称とかじゃなくてホントに名前がタワー教なのか、とか思いつつ中に入ると本を渡してくる。
一応受け取っておく。
何か書いてあるかもしれないからな。
そうしているとこの教会の偉そうな人が俺たちに近付いてきた。
女の人だ。
「ようこそお越しくださいました。入信希望の方ですか?」
違うと答える。
「教祖に会いに来たんだが」
と聞いてみても
「教祖様ですか?私達もお会いしたことないのですよ。一般の方ではお会いできないのです」
とのこと。
「そうか」
教祖に会えないならここに用はないしこの女もこれ以上のことは知らないんだろう。
「また何かあったら来るかもしれない」
そうとだけ言い残して俺は教会を後にする。
結局リリアから聞いた事以上のものは何も無かったな。
これ以上の情報を手っ取り早く入手するなら、アヴァンに直接聞くくらいしか無さそうだが。
さて、どうしたもんかね。
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