第11話 次の町へ


俺は1つの仮説を立てた。

1度目襲われた時はギノスの爺さんとタワーに来た時だったな。


あの人は本来チュートリアルの先生というだけでそれ以上のキャラじゃない。

で、そんな人がダンジョンに入ったら襲われたな。


そして2度目は俺がマーズを救った時。

大きく本来のストーリーから逸れる様なことをした時に襲われているような気がする。


狙いはよく分からないが。

まぁ今は考えても仕方ないな。


恐らく襲ってきているのはタワー教と呼ばれる連中でほぼ確定していいと思うが。

だってこんなイベントゲーム中になかったしな。

解析のデータにもなかったはずだ。


まぁ頭痛くなるような話はやめよう。


「さ、倒してくれセツカ」


俺はマーズにモンスターの体力をギリギリまで削ってもらい美味しいとこだけ貰っていくという戦法で経験値を稼いでいた。


ゲームの仕様通り最後に殴ったやつに経験値が多く入るから出来ることだった。

マーズも経験値は要らないと言っていたし。


ちなみに時折サーシャ達にも倒させている。

これでアタッカーのレベルばかり上がってしまうという問題も解消できる。


「問題はここからだな」

「どういうことだ?」


そう聞いてくるマーズ。


「序盤は別に誰でもクリア出来るのさ」


俺はマーズには転生者だと説明してある。

フェニックスの尾の件もあって何か知ってるんだろうと聞かれて吐いた。

そしてセツカというキャラが最低の評価を受けていたことも。


「こんな俺でも突破出来るくらいの難易度なんだよ序盤は」


どのゲームだってそうなように大してレベリングせずともセツカだろうがなんだろうが序盤はクリア出来る。


問題があるとすればその序盤を過ぎてから。

セツカじゃ無理な難易度になったが


「指輪でも何とかなるだろうが、俺のコンボボーナスは他のキャラのコンボボーナスより大きいらしい」


だから指輪なしでコンボを繋げるようになるのがベスト。

そうすれば一応セツカの強みというのを活かせると思う多分。


「なるほどな。大変なのだなセツカも」

「あぁ、めっちゃ大変」


アルミナなら数秒で突破できるクエストも俺なら数分かかるんだから。


と、その時


「よう、兄弟」


ゼスタのパーティが近くにいたようで俺たちに話しかけてきた。

何気にこいつと2人になることあんまり無かったなぁとか思う。


アルフは放っておいても勝手に喋るから2人でも何も思わないけどこいつってどんな話題が好きなのか俺はイマイチ掴みかねていた。


「今週のイくぜ♂男祭りは読んだか?」


へっ?何それ。

俺全然知らないし初めて聞いたんだけどそんな単語。


「私は読みましたよゼスタさん!」


その謎の雑誌を読んだ報告をするのはメイルだった。

特殊な人向けの雑誌なんだろうけど何てものをお読みになってるんだお前は。


「ほう。話が分かりそうなやつだなお前は」


そんな事を言って話始めようとするゼスタだが用件を聞く。


「それなんだがな。次の街まで一緒に行かねぇかと思ってな」

「なるほど。まぁいいんじゃないか」


ゼスタのパーティは雑魚処理がどうしても遅くなるらしいし。それを俺に任せたい、と言ったところか。

まぁ、別に拒否するものでもない。


「つまり男祭りとはな」


歩きながら語り出すゼスタ。

右から左に言葉が抜けていく中歩き続ける。

俺を変な沼に引き込もうとするなお前は。


雑魚はマーズがやってくれるし、単体相手はゼスタがやってくれるし楽チン楽チン。

俺は戦わずにこうやって仲間引き連れるのが1番正しいセツカの運用法な気がしてきた。


「おっと、男祭りについて語っていたらもう次の街まで来てしまったな」


10階層の街までゼスタが俺を連れてきた。

おぉ、流石環境キャラ。

まぁマーズがいるのもあるけど。


「まぁ、また会おうぜ兄弟」


そう言って先に街に入っていくゼスタ。

俺達も中に入っていく。


さてと。


「これからどうするつもりだ?」


そう聞いてくるマーズに答えて俺は路地裏へ入っていく。


ここには限定アイテムがあるはずだ。

解析のデータを見ながら俺が探し出した場所だ。


路地裏の1つの建物の前で足を止めた。


その横に座り込んでいた男が声をかけてくる。


「合言葉は?」

「のばら」


そう答えると男は中に入って俺を案内してくれる。

中の本棚に手をかけると、ガガガと扉が開いて地下への入口が開いた。

そこを下る男について行くと、中には男がいた。


「ようこそって、ギルマスが何でここに?」


マーズを見て聞いてくる男に今は違うと答える。


「まぁいい。見ていけよ」


そう言って店の商品リストを見せてくる男。

全て破格の値段設定だ。


その中に一際安いものがある。

それは


「この、スキル石を10くれ」

「1つ200ナイルで合計2000ナイルだ」


俺は金を支払う。


「また来いよ」


そう口にする男に礼を言って俺は外に出る。


「い、今の場所は?」


そう聞いてくるマーズ。


「さぁ?俺も詳しくは知らんよ」


解析サイトにこうすればものを売ってくれるNPCがいるという情報を見ただけだ。


書いとったスキル石を見てみたが偽物とかではなく、大きさが均一ではなく、大量生産品の合格落ちした商品を裏で売っている、とかそんなものだろう。


まぁ相場よりかなり安いのでその辺はどうでもいい。

そう思いながら俺は次の場所を目指す。


「よう。客か?」


客の入っていない武具屋に足を運んだ。

ここは序盤では払えないくらいの金額で装備を売ってきたり作ったりするところだが。

その腕は1級品。


「スキル石にスキルのインストールを頼む」


そう言って俺は偏屈そうな男にスキル石を渡す。


「ユニークスキルのインストールはできるか?」

「出来る」


俺はコンボ猶予時間の延長スキルのインストールを頼む。

残りの6個のスキル石はそれぞれ2つずつミーナ達に渡した。


後は好きに使え、ということだ。


「ほらよ」


そうして待っているとインストールの終わったスキル石を渡してくる男。

しかもこの男はスキル石を正規品のような大きさや形で渡してくる。


この男にはそういう加工技術なんかも備わっているのだ。


【コンボ猶予時間の延長するスキル石を入手しました】


と、出てくる。

それを俺のスキル石装備欄に装備すると


【6回目のコンボ猶予時間が+0.06秒されました】

【7回目のコンボ猶予時間が+0.06秒されました】

【8回目のコンボ猶予時間が+0.06秒されました】

【9回目のコンボ猶予時間が+0.06秒されました】


と出てくる。

これで俺は9回目まで安定してコンボを続けられるようになった。


ミーナ達ヒーラーには魔力量増加のスキルがオススメと教えてあげると、2人も男に作成を頼んでいたが。


「マーズはいらないのか?怪しい男から買い取ったものじゃちょっと気になるとか?」

「そういうものだが、まぁスキル石はスキル石っぽいし」


そう言うと吹っ切れたのか彼女もまた男に作成を頼んでいた。


そして俺はみんなを連れて冒険者ギルドにあるダミー人形を殴りに来ていた。


15,17,19,26,36


6回目50ダメージ!

7回目66ダメージ!

8回目78ダメージ!

9回目92ダメージ!


合計399ダメージ!!


連撃を重ねると、やっぱりどんどんコンボボーナスで攻撃力が上がるようだ。

俺は自分の手をみた。


「いけそうだな、これだと」


このままレベルをあげてスキルを獲得し続ければ、とんでもない火力を出せるようになるかもしれない。


問題があるとすれば、1度連撃を失敗したらまた15ダメージからのスタートになるところだが。

後は自分の意思でコンボを中断してもそうなる。


だから全力で回復してもらいながらコンボを途切れさせずに削り切るのが正しい使い方。


「俺にできることはコンボの精度を上げることだけ、か」


にしても俺だけ音ゲーやらされるのも大変だよ。

何でアクションゲーやりながら音ゲーやらされるんだよこのキャラは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る