第10話 初めてのストーリー改変
ギルド主体の3階の攻略が始まったがシュラインのパーティがやはりガンガン進んでいく。
序盤どころか揺りかごから墓場まで最強構成だったアルミナ編成だから並べる者がいるとすれば
「俺の前に立つな」
ゼスタのいるパーティくらいだった。
あの2パーティがとにかく序盤は強い。
進めばスキル解放による成長で強くなるキャラもいるが序盤はとにかくこいつらの2強だ。
ゼスタなんかは動きこそ鈍いが殴れば大体の敵が沈む。
分かりやすい脳筋キャラ。
セツカだけは揺りかごから墓場までゴミだった。
テクニカルなゴミの名は伊達では無い。
さて、そんなアイツらがいるから勝手に攻略が進んでいくわけ、だが。
俺は何もしてない。
セツカにヤレるのは女だけって言われてたから原作再現ね。これ。
そんなこんなで3階の攻略は進んだ。
みんなが頑張ってくれるだけで俺は不労所得ってわけ。
そんな中知識を披露したいのかシュラインが口を開く。
「ギルマス。この後ドラゴンが出てきてあんたは死ぬんすよ」
「何を馬鹿なことを言っている。この階層にドラゴンが出るわけが無いだろう」
そう口にする彼女。
しかしシュラインは続ける。
「撤退しましょうよ。ギルマス」
「妄言も程々にな」
と付き合わないマーズにギリっと歯を食いしばるシュライン。
「僕がこんなに親切にしてるのにな、死んじまえよそのまま」
そんなことを口にするシュライン。
周りに煙たがられているのを理解していないらしいが。
そのまま攻略は続く。
そうしてギルドマスターのマーズが口を開いた。
「皆の者ご苦労だった。ここで3階は攻略完了である」
そう告げられたその瞬間。
「キュゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!」
そんな鳴き声と共に凄まじい羽音が聞こえてきた。
俺達の上を覆う謎の影。
それは、
「ドラゴン、何故ここに……」
マーズがそう呟いて。
全員に撤退指示を出す。
「総員撤退せよ!」
彼女がそう告げると参加していた冒険者が逃げ出す。
実際ここにいるヤツらであのドラゴンは倒せない。
アルフ達ですら撤退を始める。
ドラゴンと出逢えば撤退しろ。
これはこの世界の常識だった。
蹂躙されるだけだから。
唯一まともに戦えるヤツらがいるとするならそれこそギルマスのマーズくらい。
彼女はそれくらい強かった。
「わ、私達も逃げましょう!」
メイルにそう言われたが。
「2人で逃げろ。俺はやる事がある」
そう言って2人と別れて俺は1人岩陰に隠れた。
ドラゴンに見つかったら自慢じゃないが一瞬でぶっ殺される未来しか見えない。
だってセツカだもん。
「はぁ、はぁ……」
ザン!!!!
マーズは大怪我を負いながらドラゴンを撃退した。
腹には大穴が空いている。
生きているのが不思議なくらい。
「くそ……」
倒れようとするギルマスのところに向かい抱き抱えると俺はこの場を離れた。
そして2階に直ぐに逃げ込める位置でマーズの手当を始める。
「生きてるか」
「な、何故残っている……」
声をかけてみたがきっちり生きてるらしいな。
「あんたに死なれちゃ困るから」
そう言って答えるが
「この怪我で助かると思ってるのか?」
ニヒルに笑いながら聞いてくるマーズ。
そんな顔を出来るくらいならまだ大丈夫だな。
そう思いながら俺はアイテムを取り出した。
「な、何を持っている?」
意識が朦朧としているのか分からないようだ。
「秘密だよ」
そう答えて俺はそのアイテムを彼女の傷に近付けると、パァァァァァァっとマーズの体が光り出した。
そして次の瞬間、
「あ、あれ?」
はっきりとパッチリと目を開けるマーズ。
俺が昨日手に入れたのは神獣であるフェニックスの羽というアイテム。
どんな傷だって即座に治してしまうそんなアイテムだ。
一説によると死者すら蘇らせるらしいが。
リスクが高すぎるから生きてるうちに使った。
「な、何故生きてるのだ?私は」
そんなことを口にするマーズ。
その後に喚き出した。
「な、何故あの男はドラゴンが現れるのを知っていたのだ?そ、それよりお前も何故残っていた?撤退指示を出しただろ?」
転生者、だなんて言っても信じられないだろうなと思った俺はこう答えた。
「俺には未来が見えるのさ」
そう答えてピンピンに回復したマーズを連れて2階に戻る。
タワー教の事もある。
出来るだけ街の方が安全だろうということだが。
街に戻るとすっかり夜になっていた俺はマーズにフードを被らせて宿を取った。
マーズくらいにはタワー教の事を話してもいいかもしれないな。何か知ってるかもしれないし。
「ふむ。タワー教か。確かにココ最近聞くことになった連中だが」
と教えてくれるマーズ。
その時だった。
俺達の宿の扉が開いて、覆面が襲いかかってきた。
「ちぃ!」
マーズが応戦していたが、この前の奴らなら自爆される恐れがある。
「マーズ離れろ」
「ホーリーシールド!」
彼女はバリアを覆面に覆い被せて自爆を防いでいた。
これならそのバリア内にしか爆発の効果は出ない。
あー、そういう方法もあるのか。
ってホーリーシールドズルいよなぁって思う。
どんな攻撃もダメージ1に抑えるんだから。
「こいつらがタワー教か」
そう言いながらマーズは俺の近くに戻ってきた。
「厄介だな」
こいつら自爆を躊躇なくしてくるから本当に厄介だ。
「今日は眠らない方がいいかもな」
俺はそう言ってマーズと交代で夜を明かすことにしたがその後の襲撃はなかった。
襲ってくる時は1回きりなのだろうか。
それなら有難い話なのだが。
そんなことを思いながら俺はマーズと共にギルドをめざした。
ギルド前にたどり着くと大変なことになっていた。
マーズの遺影が飾られて葬式が執り行われていた。
「ギルマスゥゥゥゥ!!!!」
沢山の冒険者がマーズの死を悲しんでいたが、マーズはここにいるんだが。
そんなことを思いながら俺はマーズに先にギルドの中に行かせた。
サーシャ達にはいつもの宿で待機するように命じてあるので後で向かえに行こう。
そう思いながら俺もギルドの中に入ると
「前のギルマスか」
と口にする男がいた。
「何故お前がギルマスの腕章をつけている」
マーズが男に声をかけた。
「俺は新ギルマスのアヴァンという者だ」
そう口にするアヴァン。
変だな。
俺はさりげなくマーズの視界の端に移る場所に移動して一旦外に出るように指でそれとなく指示する。
ここに来る前に念の為俺たちは関係ないという体を取ろうという話をしていた。
「君の席は無いマーズ。今日から俺がギルマスの座にあるからだ」
ぐっと拳を握りしめて外に出ていくマーズ。
そのまま人気のないところまで歩いてから声をかけようとしたが、その様子を見ていたシュラインも近寄ってきていた。
「どうなってんだよこれ」
流石のシュラインも驚きを隠せないようだ。
「ゲームじゃマーズの後任は弱そうな女の子だった。何であんな強そうな男がギルマスになってんだよ」
アルフ達が首を傾げる中ここで言い合うのもあれだと思い俺はサーシャ達を回収して場所を変えることにした。
町外れの草原で最初に口を開いたのはマーズ。
「セツカだったな。私はとりあえず君と行動しようと思う」
そう言ってきた。
このゲーム序盤超最強NPCが仲間になってくれるなんて心強いな。
PVPモードは3vs3だがストーリー攻略とかにおいて別に人数制限は無い。
「アヴァンなんて知らない男が急にギルマスになってるのが気味が悪い」
と口にする。
それを受けてシュラインも口を開いた。
「どうなってるんだよ本当に。ギルマスは生きてるし」
それについてはこれまでのことをマーズが説明した。
「お前、助けたのかよ。確定死するマーズを。ど、どうやって……何をどうやったってマーズは助けられなかったはずなのに」
と言ってきたが答えずに話を進める。
「とにかく俺はこのまま攻略を進めてみようと思ってる」
タワーの攻略を進めれば進めるほどストーリーも進む。
現状特に何も見えていないし。
「分かった。私はセツカに従う」
そう言ってくれるマーズ。
とりあえず俺達の当面の目標は決まった。
シュラインに目を向けずに告げる。
「お前はどうだっていい。好きにしろ」
そう言って俺はマーズを連れて宿に戻ることにした。
正直シュラインは敵かとも思ったがこの状況に一応戸惑っているらしいし、まだ結論付けるには早いか。
もう少し様子見をしてもいいかもしれない。
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