第7話 別れと出会いとダンジョンと
俺はアルフレッドのパーティを抜けた。
「悪い。2人とも」
「ぬ、抜けるってまじかよ?!俺たちズッ友だょ!って言ったじゃねぇか!」
それとこれとは関係ないだろうと思っていたら
ゼスタが止めてくれる。
「そう引き止めてやるな。俺たちはいずれ離れ離れになることは分かっていただろう。なぁ?兄弟」
そう言ってくるゼスタに頷くとゼスタが続ける。
「アルフ、俺も抜けることにする。お前達とは真剣にヤリ合ってみたいからな。お前達がよりいい男になるのを期待している」
お前が言うと違う意味にしか聞こえねぇんだよ。
いや、違う意味もクソもそういう意味で言ってるのかもしれないが。
「ぜ、ゼスタまでかよ!俺ら一夜を共にしたじゃねぇか!」
「悪いなアルフレッド。許せ、お前の体は良かったぞ」
俺の前でそんな話をするなボケ共。
そう思いながら俺は2人から離れることにした。
何はともあれもうこれからはライバル同士になる訳だろう。
さて、ミーナの勧誘にでも行こうか。
俺はギルドに足を運んでミーナの帰りを待っていたのだが。
「ミーナ」
俺はやってきたミーナに声をかけた。
「ひゃぁっ!セツカさん?」
どうやら驚かせたようだ。すまないと謝ってからパーティに勧誘する。
「どうだろうか?」
「ご、ごめんなさい。私のパーティのリーダーが多分許してくれません」
そう言ってくる彼女。
その時ミーナのパーティのリーダーがやってきた。
「ちらっと聞こえたがミーナを引き抜きたいのか?」
そう聞いてくるのはミーナのパーティのリーダー。
「この前は危ないところを助けてくれたようだが、ミーナは渡せないなセツカ」
そう言ってくるのはシュラインという男。
「悪いねセツカ。ミーナは僕達のパーティにも必要なんだ」
「そうか。なら仕方ないな」
パーティメンバーの引き抜きは余り褒められたものでは無い。
だから落ち度があるとしたら俺だし責める気にはなれないし責めるのはお門違い、というやつだ。
「ヒーラーを探してるのか?セツカ」
そんな中シュラインがそう聞いてきた。
「そうだな。ヒールだけできたらとりあえず問題ないが」
ヒーラーになるだけなら正直1番簡単だ。
アタッカーになるのは攻撃スキルや攻撃的な技を持っていないといけないし、敵に突っ込んでいく勇気、というのも必要になるが、ヒーラーはヒールさえ使えれば名乗るだけなら出来る。
だから数は多い。
今も入れてくれるパーティを探しているヒーラーの子がいる。
だが有名だったり実力のあるヒーラーは直ぐに高ランクパーティに勧誘されて残るのは始めたての子ばかり。
ちなみに男もヒーラーになれるが需要はない。
男なら前に出て戦え!というのがこの世界だからだ。
まぁ仕方ないな。
俺はシュラインに適当に礼を言ってから、さっきからずっと余っている子の所に近づいた。
「え?」
俺が前に立つと少女は顔を上げた。
そして両手で口を抑える。
「え?!セツカさんですよね?」
と聞いてくる。
「うん。今パーティメンバー募集してるんだけど、良かったら入らない?」
「い、いいんですか?」
そう聞いてくる彼女。
「もちろん」
そう答えると泣き始める少女。
その時アルフが入ってきたようで
「うわ!あいつまた女の子泣かしてる!すげぇな!セツカは!」
なんて叫んでいたが、通りがかったゼスタに連行されていた。
「どうしたのさ?あんま泣かないで欲しいんだけど」
そうやって聞くと
「そ、その嬉しくて。私ここで1週間くらい入れてくれないかって頼んでて、全部断れてたからセツカさんみたいなかっこいい人に拾ってもらえて嬉しいんです」
と言ってきた。
まだ泣き続けてるんだけどこの子。
あんまり見られるのもあれだから俺は少女を連れて家まで戻ってきた。
サーシャにも紹介しないといけないしな。
そうしてメイルと名乗った少女と、サーシャも連れて、3人一緒に俺たちはダンジョンにやってきた。
場所は勿論ラグナロクタワー。
メインのダンジョンだ。
その中に入っていく。
パーティ結成申請を出せば入れるようになる。
そうして入ってきた俺たち。
改めて俺は2人に確認を行う。
「2人はひたすら俺をヒールし続けてくれたらいい」
「はい!」
と二人で返事をする。
このパーティの核は俺だがその俺のスキルが揃わない内はダンジョン攻略もままならないだろうな。
そう思いながらとりあえずモンスターを倒しながら突き進む。
「ひ、ひぃぃ!!!!」
「ちぃ!」
サーシャを襲おうとしたゴブリンを蹴りつけて弾き飛ばす。
今度はメイルの方のゴブリンも蹴り飛ばす。
2人とも自衛がまだまだ甘いなとか思いつつ前世で働いていた頃のように忙しく走り回る。
「ぜぇ……はぁ……」
きっつ。
こんなにキツイかよってくらい走り回った。
「ご、ごめんなさい」
2人は同時にシュンとなったけど。
「気にするなよ」
ヒーラーを守るのもアタッカーの仕事だが、最低限の自衛くらいは覚えてもらおう。
一流のパーティに所属するヒーラーは出来るからね。
俺はミーナに殴り倒されたことを思い出す。
ほらね?
ちゃんと自衛出来るでしょ?
凄いわかりやすい参考例ですなぁ!
それを思い出してしょんぼりする。
俺がミーナに殴り飛ばされてるしそれを考えたら2人を責められないな。
なんてことを思いながらモンスターを倒し続ける、のだが。
指輪は外す。
コンボの感覚を今出来るだけの分は完璧にしておこうと思って。
ザン!ザン!ザン!ザン!
4回目まではリズムゲーの感覚ですんなり出せるが5回目がやっぱり難しいな。
だって今んとこ0.03だからね猶予。
無理です。ここで止まります。
慣れたらいけるのかもしれないけど。
それにしても良かったな。4回目まででゴブリンが倒せるくらいの体力で。
「今日はこの辺りにしようか」
俺は2人にそう言ってテントを貼らせていく。
街には帰らない。非効率だから。
食料が尽きるまではこうやってダンジョン内の宿泊エリアで寝泊まりするつもりだ。
ダンジョンの至る所にキャンプ場みたいなのがあってそこでキャンプ出来るようになっている。
そうしてる間も俺は1人で無限にモンスターが湧いてくる場所でゴブリン退治に勤しんでいた。
セツカの必要経験値は大体他キャラの2倍と言われている。
だから他の奴らが寝てる間もどんどんと練習していかないと本当はいけないのだ。
休んでいる暇なんてない。
ゲームのセツカは休みまくってたがな!
「セツカ様。ご飯の準備出来ましたよー」
呼びに来てくれるサーシャの声に返事してまたゴブリンを倒し続ける。
そしてキリがいい所で切り上げてキャンプに戻ると2人は焚き火の周りで座り込んでいた。
「悪いんだけど2人には最低限自衛を覚えてもらいたいと思う」
俺はそんな中切り出す。
「この先どんどん敵が強くなると思うけど一々俺がフォローに回れる状況じゃ無くなると思うんだ」
ほんとは俺がフォローに回れたらいいんだろうけどそんなこと中々厳しいだろう。
だからファイラグではヒーラーは1人でアタッカー2枚編成が1番使われていた。
メインアタッカーとサブだ。
「俺の力不足で悪いけど。頼むよ」
俺がそう言ってみると2人は頑張ると言ってくれた。
いい心構えだな。
俺はそう思って食事を終えるとサーシャを連れてテントに向かっていった。
メイルだけは別にパーティメンバーだから別のテントだ。
「い、いいですか?セツカ様」
テントに入って寝転ぶと、もぞもぞと俺の足の間に潜り込んできたサーシャ。
「今日もか?」
「お、お願いしましゅ……」
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