第5話 使えるものは使う

ゲーム内のラグナロク杯は3VS3のパーティで別れて戦うトーナメント戦だったがこっちでもどうやら同じらしい。

ちなみにセツカ入のパーティは全部初戦敗退だ。

セツカのいるパーティと当たればボーナスゲームだった。


悲しいね。


そんなことを思いながら俺はアルフ達と離れて保険をかけにいく。

一応ラグナロク杯の勝ち筋は見えているが、もしもがある。


何たって俺達のパーティには敗北を司る神セツカ様がいるからな。

正直マジメに勝ち上がろうだなんてことは思っていない。


「さて、」


俺は次の対戦相手のパーティに所属する女の子を呼び出した。


「あ、あのセツカさんですよね?」


そう聞いてくる女の子に頷く。

出来るだけ本物のセツカに似せて話す。


「次の試合負けてくれよ」

「え?、そ、そんな」

「俺の頼み事だよ。聞いてくれよ」


壁ドンしてその手を掴む。

セツカ様はこんなことしても許されるんだよ。


「え、えとその……」


目をぐるぐる回り始める女の子。


「俺勝てる自信がないんだよ。頼むよ。報酬の金の方は俺たちが優勝したら分けるからさ、どう?」


とんでもなく情けない事を言っている気がする。


「は、はい!私負けます!」


そう言ってくれる少女。


「ありがとう。嬉しいよ俺」


そう言ってアルフ達の元に戻る。

どうよ。これで勝てるはずさ。


なんとも情けない仕込みだが勝てればいいんだよ!!


その次の試合俺は少女を軽く殴りつけると


「ぐぅ……流石セツカ様です……」


パタリと倒れてくれる少女。


俺はアルフ達に目をやった。


「後はよろしく」


そんな事をして俺たちは順調に勝ち上がっていった。


そうして勝ち上がり続けて俺たちは決勝戦まで来た。


持ってる武器は全部使わないとな。

これまでのように俺は相手のチームに仕込みをしに行ったが


「負けて欲しい、だと?私を傷付けたくない、だと?」


あれ?反応が違う?


「貴様。それでも男か」


と文句を付けてくる女。

思い出した、こいつは。


堅物エルザだ。

唯一こういう事を許さない堅物だった!


しまった!


「貴様はそうやって勝ち上がってきたのか?この神聖なラグナロク杯を」


薄汚いヤツめと俺を見てくる。


「決勝で実力の差を見せてやろう」


そう言ってエルザは戻っていってしまった。

く、任務失敗だ!!!!!


そうして迎えた決勝戦。

試合は終盤に差し掛かった。


何とかアルフ達が2人を倒してくれて最後に立っていたのはエルザだった。


「ホーリーシールド!」


エルザの貼ったシールドは全ての攻撃を1ダメージに抑えるシールドだった。

耐久値は50。つまり50回攻撃すれば打ち破れる訳だが


「くっ!」


アルフが吹き飛んだ。


残されたのは俺とゼスタのみ。


「ゼスタ、俺が削る」


そう言って連撃をねじ込む。


「ぐぅ!!!!」


俺は倒れても構わない。

こいつのシールドを指輪を装備して削るのが俺の役目。


体力がどんどん減っていくのを感じるが退かない。


「こ、こいつ!正気なのか?!」


そんな俺を見て言ってくるエルザ。

俺は剣で斬られようが殴られようが、退かずにエルザに食いつく。

コンボさえ途切れさせなければ連撃の速度は上がる。


「も、もう戦闘不能になるんだぞ?!お前!」

「関係ない。俺はゼスタを信じてお前のシールドを削り切るんだよ」


巡り合わせ悪かったな。


「お前、俺を舐めただろ?ここに残ったのがアルフならシールドを削りきれなかっただろうな」


このパーティの中で手数を出せるのは俺だ。

どうせシールドの効果でダメージが1になるなら、指輪のコンボボーナス消滅というデメリットも気にならない。


「くっ!シールドが!」


その時シールドが割れた!


「よくやった。兄弟、後は俺に任せろ」


その時ゼスタがその巨体を揺らしながら走ってきた。


「じゃあな、エルザ」


俺はそれを確認して横に転がる。


「これが鋼鉄の拳だ。全てを打ち砕く」


低い声でゼスタがそう言いエルザをワンパンする。

これがゼスタの強み。


手数は出せないが圧倒的な火力で敵を粉砕する。


「がはっ……」


吹っ飛ばされるエルザ。

ジャッジが出た。

俺達の勝ちだ。


優勝賞品が俺たちに渡された。

この大会の優勝賞品は【青の装飾品】というアイテム。


ゲームを進めれば手に入るらしいアイテムだが、序盤ではかなり強いものだ。


「うっし!アイテムゲッツ!」


アルフが喜んで俺に装飾品を渡してきた。


「ゼスタとは相談してたんだよ。お前にやるのが多分1番いいってさ」


そう言ってくるので有難く受け取ることにした。


名前:青の装飾品

効果:体力の最大値アップ


セツカは体力面でも不遇だ。

このゲームではレベルで体力が上がったりせず、開始からずっと体力330という、全キャラを通しても最低値だ。


だがこの装飾品があればそれも多少はマシになるだろうな。

そんな会話をしていた時だった、エルザが近付いてきた。


「言ったろ?怪我するって」

「あ、あぁ。確かに私達は負けた」


そう言って俺を見てくるエルザに口を開いた。


「言ったろう?傷つけたくなかったって。その綺麗な顔を傷付けたくなかったんだって」

「え、え?」


顔を赤くするエルザ。


「き、きれい?私が?」

「あぁ」


そう言ってやるとエルザはピューっと走って言ってしまった。

その時、ゾロゾロと女の子達が近寄ってきた。


あいつらは、そうだ。負けてくれたらデートの条件に負けさせたヤツらだった。


「あ?あのセツカさん、デートしてくれるんですよね?」

「セツカさん、デートしましょー」


そんなことを言ってくる少女たち。

だが、お互いに顔を見合せていた。


「あんた誰?」

「あんたこそ何よ」


喧嘩を始める少女達。


「セツカさん、デート」

「セツカさんセツカさん」


迫ってくる女の子たち。

やべぇ。タイミングが悪いにも程があるだろう?


「そう喧嘩するなよ。困っちゃうよ俺」


なんていうふうに言ってみると


少女達が俺と腕を組んできた。

両方から


「デート、しましょ?」

「そうですね。お話はデートしながらしましょうか?」


そう言ってにこやかに俺を連行し始める少女達。

俺はアルフを見た。


「また女の子泣かせるんだな」


とか言ってるけど多分泣くのは俺だよ。


そうしてデートを終わらせた。


幸い特に何も言われることは無かったが。

色んな店連れていかれてしんどかったが、青の装飾品をそれで買えたと思えば全然安いものだ。


そんなことを思っていたら


「セツカー」


女が声をかけてきたのでちょっとビビる。


「どうしたのさ」


そこにいたのはミズノだった。

そのまま優勝おめでとーと言ってきてから


「前に言ってた事について少し調べてみたけどゲームにはなかった団体が一応いるっぽいんだよね」


そう言ってくるミズノ。


「なんか宗教団体って言うのかな?そんなのが追加されたのか自然にできたのか分からないけどあるみたい、ここには」


宗教団体、ねぇ。

胡散臭いのが出てきたな。


俺は無神教だから宗教とか胡散臭いとしか思えないんだよぁ。

神に祈って何とかなったら苦労なんてしないぜ?


「現状掴めたのはそれだけかなー」


そう言ってミズノはばいばーいと手を振って歩いていく。


ふむ。なるほどな。

そう思いながら俺は帰宅することにしたがその前に、


「優勝賞金で奴隷でも買いますか」


このゲームには奴隷がある。


ファイラグは自由度が高かった、NPCと結婚もできたりした。


ふへへへ。

俺は期待を胸に奴隷商館へ向かうことにした。





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