第4話 いけそう、かな

いつもの男3人で依頼を受けた。


「おう、アルフ。すっかりメスの顔になっちまいやがって」


この2バカの会話を頭に入れるのはやめておこう。

というより脳が理解を拒む。


「後あれだ、パーティ内恋愛はギスギスする元になるからなアルフ」


と、ゼスタが言ってるが勝手にしてろ!

俺は知らねぇよ!興味ねぇから!


ていうかゼスタが公式設定でそっち系なのは知ってたけどさ、そこまで再現せんでええわ!


「悪いなセツカ。俺ら付き合ってるんだわ。そのへん宜しくな」

「勝手にしろ!後俺を夜のクエストに勧誘すんなよ?!」


俺は叫んでもう何も聞かないというように先に歩き出す。

どうでもいいことを報告すんな!


あーやだやだ、なんてことを思いながら歩いて


「よっと」


2人が今日もモンスターを倒していく。

その経験値に俺もありつく訳だが。


【レベルが上がりました】


と表示された。

おぉ、久しぶりに見たなこれ。


そう思いながら俺は続きを待つと


【獲得スキルを選んでください】


と表示されて


→4回目のコンボ猶予時間+


というものが一つだけ表示された。

なんだこれ?

そう思いながらそれしか選べないから選んでみると


【コンボ4回目の猶予が+0.06されました、と出てきた】


「!!!」


0.06も+してくれんのか?

ほんとに?


そう思いながら俺は指輪を外して連撃を試してみた。


ブン!ブン!ブン!


剣を振り回す。

3回目の0.09秒までは安定して出せる。


問題はその次だったが、


ブン!


俺は追加で入力できたがその次は、振れなかった。


どうやら今のスキルで4回目のコンボ猶予だけが増えたしい。


うし。

内心ガッツポーズ。


正直言うと0.09秒ですら厳しいが人間慣れるとコンボを繋げられるものである。

0.03秒はどう足掻いても無理でした。


一応感覚を掴むためにもう一度振ってみたが、4回目まで出せるな。

いける!いけるぞ!0.09なら!


多分5回目、6回目とどんどん猶予を伸ばせるようになると思う。


とりあえずレベルを上げるのは優先だな。

なんてことを思う。


今日の依頼は終了した。

別に気を使わなくていいのにアルフとゼスタは今日は一緒に帰らないらしい。

1夜だけの関係ならいいんだが、とか思いつつ今日も酒場に向かうことにした。



俺は友達がいないのでカウンターに座って料理を頼む。

のだがその時


「隣、いい?」


そうやって座ってきたのはこの前酒場から出てきたフードの女だった。


「あ、うん」


そんな返事しかせず、俺は童貞なので、椅子に載せる体の位置をズラして出来るだけ女と距離を取ってみたが、女は逆にずいっと近付いてきた。


おのれ……こいつ。


「ねぇ、セツカ、あんた本当にセツカなの?」


と聞いてくる女。


「はぁ?」


俺はそう返事すると


「セツカってそんな事言わないしね。もっとクールだったもん」


とか言ってくる。

何でこいつゲームのセツカを知ってるんだ?


「私、転生者なんだ」


と口にして知ってる?って聞いてくる。

今その話をしたってことは察しがついてるのかな。


「分かってると思うけど俺も転生者さ。セツカで生まれてきた」


と口にする。


「へー、残念だったね。セツカのキャラ性能ほんとにゴミだったもんね」


知っていたようだこの女も。

セツカのゴミ性能を。

つまりファイラグをプレイしていた、という事だな。


「見た目めっちゃいいから使ってたのにゴミ過ぎて使うのやめちゃったよ私ー」


と口にする女。


「でもー」


と俺の体を触ってくる。


「夜の性能高いんでしょ?」

「知らん」


そう答えて俺は立ち上がる。

この女が何者か知らないけどこんな色んなやつが聞いてる場でする話じゃないような気がした。

俺は代金を支払って酒場を出たが付いてくる女。


「あんた、名前は?」

「ミズノ」


と答えてくるミズノ。

知らない名前だななんて思ってたら。


「だって私モブキャラに転生したもん」


と口にする。

多分セツカに転生するよりモブキャラ転生のが楽なんだろうなぁとか思いながらいつのも爺さんの家の前に来た。

ここは人が来ない。


「下らない話するために声掛けた訳じゃないんだろ?」

「うん」


そう返してくるミズノという女。


「この前少し話して分かったんだ。あ、これセツカじゃないって」


それでねーと続けるミズノ。


「情報交換したいなーって」

「なんの?」

「この世界の。なんか色々変わってるよね。ゲームと」


俺もそれは感じていたな。

俺は昨日あったことを話した。


「そういうのも出てくるんだ」


そう言って爪を噛むミズノ。


「ゲームは結構やってたのか?」

「やってたよ。セツカが強化されるの期待してたのに結局あのまんまだし」


そう言って俺を見てくるミズノ。


「ぶっちゃけどう?」

「めっちゃ弱い。ゲームと同じ難易度」


そう答えるしかない。


「やっぱそうなんだ。私0.09秒の入力から無理だったもん」

「え?0.09はいけるけど」


俺はそう返す。

0.09もきついと言えばキツイけどまぁまだいけるよ。

0.03に比べたら。


「無理だって無理無理無理。ほんとに悲惨だよねセツカに転生なんて」


そう答えるミズノ。


まぁ最弱キャラの名は伊達じゃないということがよく分かるが。


「次のラグナロク杯出るの?」


そう聞いてくるミズノ。


「アルフ達と出ることになってる」

「アルフとセツカってゲーム内でも仲良かったもんねー」


そのあともいろいろと話し合った。


さて、情報は集まった。

現状何もかもが分からないという情報が集まっただけだが。


「俺はあの塔を攻略するつもりだよ」


そう言ってメインのダンジョンに目をやった。


「セツカで?」

「セツカ以外使えねぇんだから仕方ない」


普通にミーナでバフってアルフに殴らせた方が強えんだもんお手軽で。

でも俺はアルフでもミーナでもないしな。


そういえばアルフのDPSはセツカをミーナでバフる時の3倍くらいだったか。

不遇すぎる。


「せっかくこの世界に来れたんだ。ゲームで見れなかったあの塔を進んでみたいってそう思う」


俺はそう言ってミズノと別れた。


ミズノはミズノで俺たちを襲った奴らについて調べてくれるようだ。


とりあえずはラグナロク杯をどうにかして勝ち抜こうか。

ラグナロク杯の優勝商品は限定アイテムだったはず。

是非とも欲しいものだ。

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