第3話 変化が起きているようだ
「あれ、あなたセツカ?」
「え、あ、うん」
そんな声しか出てこなかった。
「へー。こんな感じなのね。顔的にもっと俺様系かと思ってたけど」
なんてことを口にする女。
「それじゃね」
そう言って女は去っていった。
あんなキャラいたっけ?
とか思う。
「まぁいいや。モブなんていくらでもいるしな」
俺はそう言って酒場の中に入る。
中に入って適当に飲み食いしてから家に帰って寝る。
こんなイケメンに生まれてそれしか出来ないテクゴミの自分が情けねぇぜ。
ちくしょう!
翌日。
いつものように癖でギノス爺さんの所へ向かった俺だったが
ガラッと急に扉が開いて俺はビクッとした。
「まだ来ておったのかお前は」
「え、あ、うん」
ギノスの爺さんはもう大分年寄りだが昔冒険者をやっていたせいで偉く貫禄がある。
その背の高さから出される圧はすげぇ。
俺みたいなテクゴミじゃ出せない圧だ。
「本当に最後だ。セツカ」
そう言ってギノスの爺さんは出てきた。
「え?」
「貴様のような熱心な男にワシも冷たくせんよ」
そう言って剣を持ってズカズカ俺の近くに歩いてきた。
「ワシとクエストに行こう」
あの、この世界に女の子はいないんでしょうか?
ゲームやってる時は女キャラ率90%くらいのゲームに思えたのに同行キャラが男ばっかじゃねぇかよ!
「何じゃその目は。ワシが美少女ならなぁとか思っておるのか?」
「うん」
そう答えるとギノスの爺さんは幻惑魔法と言って俺に魔法をかけてきた。
すると俺の目の前の爺さんは爆乳ドエロい姉ちゃんに早変わりした。
「これでいいじゃろ?」
ありがとう爺さん。
姉ちゃんはそんな喋り方しないだろうけどいいよ。
魔法って便利だね。
そんなことを思いながら俺は爆乳爺さんについて行くことにした。
一瞬で矛盾した気がするが細けぇことは気にしない男なのだ俺は。
見た目良ければ全てよし。
ザッザッと俺の前をエロいケツを揺らして歩く爆乳爺さん。
幻惑魔法すげぇよ!
でもこいつは爺さんなんだと思うと俺にかけられた魔法は解けた。
目の前にいたのはいつものギノスの爺さんになった。
「あーあ」
「疑うからじゃ。しかしこれで幻惑魔法の解き方も分かったな?とにかく疑うことじゃ」
と教えてくれる爺さん。
すげぇ!
俺にサービスしながら魔法の解き方もレクチャーしてたなんて無駄がねぇぜこの爺さん。
流石チュートリアルの人。
そのまま爺さんは歩いていく。
「ワシが昔冒険者をやっていたのは知っているな?」
「あぁ」
俺がそう答えると爺さんは目の前のダンジョンを指さした。
全ての冒険者が最終的に目指すことになるダンジョンだった。
それは
「ラグナロクタワー」
それがダンジョンの名前。
爺さんはタワーを指さしながらダンジョンの入口へ向かっていく。
「こ、これはギノス様!」
入口で警備をしていた連中が直ぐに敬礼する。
「老いぼれだ。そんなことしなくていい」
そう言いながら爺さんは中に入っていく。
すげぇ、顔パスだ。
そんなことを思っていたら
「ぐえっ」
俺の襟首を掴む警備員にギノスが口を開いた。
「ワシの弟子だ。通せ」
「で、ですが」
「通せ」
そう言われると渋々と言った感じで俺の襟首から手を離す警備員。
俺は爺さんについて行ってダンジョンの中に入った。
ちなみにこのダンジョンはゲームで最後まで攻略されることがなかった。
その前にサービス終了したからだ。
だから何がこの先に待ち受けているのかも分からない。
表向きは、だが。
「歩いてみろ」
爺さんにそう言われたので俺はダンジョンを歩いていく。
そうしながら罠を潰していく。
「ほう?これは驚いた。すごいな。まるで罠の位置を知っているみたいだな。鮮やかじゃ」
みたい、と言うより俺は罠の位置を知っているから。
そう思いながら俺は進んでいく。
先ずは第1層、その中ボス戦だった。
「ブモォォォォォォォォォ!!!!!!!!」
雄叫びをあげるのはミノタウロス。
それよりも、先客がいたようだ。
「きゃぁぁぁぁ!!!!」
そこにいたのはミーナだった。
他のメンバーは既に倒れていて彼女が最後に残っていてミノタウロスに殴られようとしているところ、俺は誰よりも先に動いた。
カァァァァァァァン!!!!!
ミノタウロスの持つ棍棒を俺は自分の剣で受け止めた。
「ブモォォォォォォォォォ!!!」
その棍棒を弾くと、その体に連撃を叩き込んでいく。
ミノタウロスのような中ボスはコンボを決められている時動作が遅くなる。
その間に削れるだけ削る。
叩き込めば叩き込むほど連撃の速度が上がっていく。
(セツカってこんな仕様があったんだな)
「ブモォォォォォォォォォ!!!!!!」
殴ってこようとするその拳を、バラバラにする。
オートコンボの指輪。
それで俺のコンボは途切れることなく、どんどんと連撃の速度が加速していく。
やがて、バラバラになってミノタウロスは細切れとなった。
「意外とやれるな」
そう呟いて俺は剣を地面に突き刺した。
その様子を見ていたミーナが後ろから抱きついてきた。
「セツカさぁぁぁぁん!!!!助かりましたぁぁぁ!!!」
と
「凄いです!!ミノタウロスをあんなに一方的に倒してしまうなんて!!!」
そう言ってくる中爺さんも俺に近付いてきた。
「セツカやるな」
と俺の実力を認めながら近付いてくる爺さん。
その時だった。
殺気を感じて俺はミーナを抱えてその場から飛び良いた。
俺のいた場所にはアイシクルランスが刺さっていた。
そしてそれを投げたであろう人物が2階層に続く階段を駆け上がろうとしていたそれを
「ま、待……」
「ふん!!!!」
俺の止めようとした声も虚しく虎のように走り出した爺さんが捉えていた。
「がぁぁぁぁ!!!!」
取り押さえられた男の声が響いてくる。
しかしその時だった。
「離れろ!セツカ!」
爺さんがそう声を張り上げて俺はそれを信じて飛び退いた。
その瞬間、ドーーーン!!!!
と激しい爆発が起こった。
「きゃぁぁ!!!」
吹き飛ばされる俺とミーナ。
何だあの爆発は、とそう思って煙が晴れたそこには
男の装備品と傷だらけの爺さんの姿があった。
「なんじゃこいつらは……」
そう言いながら俺達の元に戻ってくる爺さん。
「だ、大丈夫かよ」
俺は爺さんに問いかけた。
「何とか生きてはいるが」
爺さんは自分の足を見た。
片足無くなっていた。
「あいつ自爆しおった」
そう口にする爺さん。
あの爆発だもんな。
自分の中の魔力を全て使い自爆したようだ。
何者かは分からないが。
あんなキャラゲームにいなかったぞ。
だがまぁ、そんな事は後回しだ。
爺さんとミーナのパーティメンバーを連れてこのダンジョンを出よう。
幸いギノスの爺さんは生き残った。
命に別状はないらしいが、もう俺の稽古くらいはできてもあんな風に冒険を共にしてくれることは無いらしい。
「ワシがやらかしたからじゃよ」
そう言ってくるギノスの爺さん。
俺は止めようとしたが爺さんが走っていたから止められなかった。
「よく分からないやつには迂闊に手を出さない。その方がいいはずなのにな」
そう言って爺さんは俺の頬を手で撫でてくる。
「子供の頃から面倒見とるお前が心配で走ってしまったわ」
「俺のせいとか言うなよ?」
「言わんさ」
そう言って手を離す爺さん。
こうなったのは正直爺さんの自業自得だ。
だが、敵討ちという訳では無いが、一発目俺を狙っていたからなあいつ。
「安心しろよ爺さん。俺があいつらのことは突き止める」
単独で動いていた、とも思えないよなあの自爆は。
捕まったら自爆しろ、と言われていたような感じだ。
「無茶はするなよ」
そう言ってくる爺さんに頷く。
無茶はしないさ。
そう答えて俺は立ち上がると爺さんの家を出る。
厄介なことが山積みだなそれにしても。
爺さんには悪いけどさ。
「面白くなってきた」
既知の出来事ばかり起こってもゲームはつまらない。
こういう風に全く知らないアクシデントが少しばかり起きてくれた方が面白いってもんよ。
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