第1話 ゲームにはなかったアイテム
俺はゲームのファイナルラグナロクの世界に転生した。
ファイナルラグナロク、サービス開始して直ぐにデータを吹き飛ばしてサービス終了した伝説のゲームである。
そんなゲームの世界に何故か俺は転生していた。
その事に気づいたのは、実際に痛みを感じたりするからだ。夢では無い。
そして俺は誰に転生したかと言うと1番の外れキャラ、モブより弱いと言われている
女のような容姿をした男で女性人気が凄く高かったキャラだが運営が何を思ったのか超残念な性能に設定していた。
使いこなすのが難しいくせに使いこなしても大したことないという、テクニカルなゴミという残念な評価を受けていたキャラ。
それに気付いた俺はとにかく必死に修行した。
このままではテクゴミのまま抜け出せない。
テクゴミでは死んでしまう。
そう思った俺は必死に何年も修行した。それでもやはりゴミはゴミだったらしく、大したことにはならなかった。
そんな俺の容姿に釣られたのか今日も女の子が声をかけに来た。
「せ、セツカさんですよね」
「うん、そうだけど」
ちなみにゲームのセツカはこんなこと言わない。
『話しかけるなよ。怪我するぞ?見える?この俺の闇が』
みたいなこと言う俺様キャラだったらしいが今のテクゴミの俺にそんなことする勇気はなかった。
だと言うのに
「あー、なんか想像と違ったー。もっとグイグイ来るのかと思ってたー」
そう言って女の子は俺から離れていった。
ちくしょー!!!!!
俺も違和感ありまくりだよ。セツカの顔でうん、とか言わないもん!
おかげで俺は未だにDTだ。
ゲームのセツカは夜のテクニックだけは凄まじいらしいけどそのテクニックをちょっとは戦闘面に回せよ!としか思えない。
こんなんでどうするよ。なんてことを思っていたら
「よーっすセツカ」
男が話しかけてきた。
見覚えのある俺の友達のアルフレッドという男だった。
「おう、セツカ。また女の子泣かしてんのか?」
泣かされてるんだよ!!!
見て分かんねぇのかよ!!!
心の中で悔しくて涙が出てくる。
そんな俺にアルフは続ける。
「セツカ。これから模擬戦やんだけどどうよ?相手女の子だぜ?持ち帰ろうぜ」
この世界ではこういう風に気軽に模擬戦が行われてそれが合コンみたいになっているようだ。
「仕方ないな」
◇
「がはっ!」
俺は負けた。
「大丈夫か?!セツカ!!」
アルフ達はまだ戦っているのに俺だけ先に倒れた。
「え?え?」
俺を倒してしまった少女は逆に戸惑っていた。
余りにも俺が弱かったからだと思う。
ちなみに俺はガチガチのアタッカータイプで俺を殴り飛ばしたあの子はヒーラーだ。
どうよ?俺のゴミ性能。
見たかよアルフゥ!!!
おい、運営!何でこんなクソ雑魚キャラいつまで放置してんだよ!!!
ゲームじゃこのキャラでクエスト参加したらクエスト解散されるレベルだったんだぞ?!
「だだだ、大丈夫ですか?」
そうやって近付いてこようとする少女。
そんなこんなで模擬戦は終わった。
そりゃそうだ。俺が殴り飛ばされて殴り飛ばした側が声をかけようとするんだから。
まぁ元々合コンみたいなもんだから戦績なんてどうでもいいか。
「あ、あの」
少女と俺は目が合った。
「わ、わざと負けてくれたんですよね?」
そう聞いてくる少女。
いや、俺はガチガチで戦って負けたぞ。
この子をぶっ飛ばすつもりで殴りに行って反撃貰ってこの有様だ。
いや、違うといいたかったけど。
「わ、私、倒した敵の数が0だったのでとても嬉しいです!初めて誰かを倒せました!」
そう言って微笑んでくれる少女。
その笑顔を見ていると思い出した。
セツカはPVPで来たら対戦相手はボーナスゲームだって言われてたのを。
それから思う。
負けるのも悪くないなこの笑顔が見れるなら。
「セツカ?じゃあ俺たちは行くからよ」
そう言ってアルフ達はこの場を去っていってしまった。
取り残された俺と少女。
俺はこの子とデートでもしろと言いたいらしい。
まぁ正直対戦した相手の中じゃ見た目1番好みだったけど。
俺は立ち上がりながら口を開いた。
「お前も帰っていいぞ」
「え?」
「俺はこれから修行する。お前がいては傷つけてしまうからな」
やっと、セツカらしいセリフを吐いた気がする。
そう言いながら俺は歩いていくが少女は俺の袖を掴んできた。
「ご一緒していいですか?私も強くなりたいんです」
そう言ってくる。
確かこの子はファイナルラグナロクでは結構な当たりキャラだった気がする。
たしか
「ミーナって言います」
よろしくお願いします。と頭を下げてくる。
思い出した略してファイラグではかなりの強キャラと呼ばれてた子だな。
ファイラグでは3人1組になってクエストに行ったり、PVPをしたりしてたのだが大体この子が編成に入ってきてた。
ちなみにテンプレは先程のアルフにミーナ、それから自由枠みたいな感じだったかな。
アルフが突っ込んでミーナがヒールしてみたいなそんな感じだったことを思い出す。
それがいわゆる万能構成。
「怪我しても後悔すんなよ?」
柄にもなくそんなことを言いながら俺は歩いていく。
ちなみに協力モードの自由枠でもセツカで入ったらブロックされるレベルだ。
そんな悲しいことを思い出しながら俺は歩いていく。
いつも練習している場所に向かう。
そこは
「セツカ、よく来たな」
その場所は山の中にあった。
そこにいるのは俺の師範代のギノスという男。
「よくきたなセツカ。どれ今日も相手してやろう」
チュートリアルの場所だ。
でも俺は未だにこの人にチュートリアルをやってもらっていた。
チュートリアルの相手にすら勝てないからだ。
剣を構えて睨み合う。
セツカはコンボキャラだ。
しかし、キン、キン、キン!
剣を3度振ってその先が出せない。
無理やり出すことは出来るだろうがダメージは殆ど入らないだろう。
セツカが難しいと言われている理由はここだ。
最初の一撃目は誰でも入れることができた。
ボタンを押せば勝手に斬りかかってくれる。
しかし次の2発目の入力猶予が0.3秒。
そのタイミングで入力出来なければコンボが続かなかった。
次の3発目の猶予は0.09秒で、それ以降はなんと0.03秒。
ちなみに0.09秒は音ゲーのパーフェクトの猶予時間くらいらしい。
俺だけアクションゲーやりながら音ゲーやらされてる。
0.09までは何とか入力出来る人が多かったけど、その後は0.03だ。どこかで絶対ミスってコンボが続かない。
だから難しいと言われていた。
「相変わらずコンボが出ないようだな」
そう言いながらギノスの爺さんが見てくる。
俺は頷いた。
この世界でも特定のタイミングで体を動かなさいとコンボが続かないようだ。
「お前がここに来て何年目じゃったか」
そう聞いてくるギノス。
「10年ちょいだ」
そう答えるとギノスは待ってろ、と口にして自分の家へ入っていった。
ここは彼の家の庭だ。
そうしてしばらく待っていると出てくるギノス。
「これを使え」
そう言って何かを渡してくれた。
「それはオートコンボの指輪というアイテムだ」
使ってみろと言われて俺は指輪を使ってみた。
するとキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン……
急に10を超えるコンボが出せるようになった。
「な、何だこの指輪は」
そう言いながら俺は爺さんに目をやった。
「ワシには分からんが、お前に1番合いそうなアイテムじゃからな。元々は怠け者の冒険者が勝手に武器を振るように作り出したアイテムらしいが」
そう言ってくる爺さん。
とんでもない怠け者がいたもんだな。
でもこれがあれば勝手にコンボを出してくれるってわけか?
「ワシのとこに通い続けたお前じゃ、そんなものくれてやる」
そう言って爺さんは家に向かっていく。
「ワシからの最後の教えだ。最後は己の力で戦うのがいい。その指輪にはコンボボーナスがなくなるというデメリットがあるからのう」
そう言って爺さんは家の中に入ってしまった。
名前:セツカ
レベル:15
年齢:16
所持アイテム:オートコンボの指輪
【あとがき】
もし分かりにくかったようであれば、フルコンボだドン!を目指さないと途中で攻撃が止まるものと思ってください。
ちなみに某ゲーの入力猶予は知りません。
次話からこのあとがきは書きません
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