第14話 几帳面な性格からか?

 置き去りにしてしまったが、楓花が飲んだ異物は、育てることで開花する? 


 神々が玉手箱という、宇宙の中心の中に淀んだものは、元素からもぎ取った触手で、人間を覚醒に導くことのできる優れものに変化を遂げていた。


 反発するものを繋ぐための役割を果たすのが本来の役割だが、切り離されたことで想いだけが独立して育まれるから、別の特質を見出だす可能性が生まれた。それが隠れているものの存在を知る手段に相当したからである。


 感性がもしも、その触手に詞を掛けたなら、人間に見えないだけでなく、変化するための呪文となり、化けても不思議はなくなる。それが魔法の習わしだからだが、感性には見えることから、人間の皮膚を護る役割をする体毛に酷似しているので、靡くことで熱を逃がす役割を特化したのだろう? という想像に至った。取り込んだ熱量を利用して、牛耳る(取り込み、封印を謀る)ことに成功した、となる。


 もともと元素の一部いちぶである以上、力は壮大であり、当たり前にするための努力を必要とするが、努力家の元素が多いことから、そこに不安は生まれなかった。

 切り離されたことで然るべき処置を施され、元素に昇格するために生まれ変わることを宿命とし、新元素となったのである。人間の云う再生は循環であることから、流れを造るか? もとに戻すことが原則となる。それを、当たり前にするためには時間が必要となり、想像すると現在に当て嵌まるのは当然で、気付かせるために起こる現象を、人々は奇跡と云うが、違和感はそこに生まれない。ならば、違和感の所在は、欲という悪意の存在に導くためのもの?となる。



 話しを戻すが、効果は努力の賜物であり、繋ぐための縄(紐類)の役割を背負うから、無力にするための思案に毒素(冷や汗)が発生した。他元素の効力を奪う特性が目覚めざめたのは想定内で、努力に対するご褒美のようなものという認識であった。そして、奪った特性を抹殺するために、自身の質量の糧として仕舞い込んでいた。

 人間で云うところの抗生物質とみるしかなく、薬としての役割が発生し、新元素として変化を遂げたのだ。なので全てが、感性の妙と云うしかできないことから、奇跡という感覚が芽生えたのだった。

 万物の母の名称が伊達ではないことを証明するなら、経験が実体験であり、想いから実物を産みだすことから、創世主が感性なのである。


 科学者が薬と毒の両方を造り出すように、元素の効力を奪う元素が誕生したことで、毒に対する抑制効果は覿面であり、存在が果たす役割は、制御不能の事態を回避する結果をもたらした。それが、感性の気休めになったから、混沌も少しずつ緩和へ向かい、おざなりに繋がるものも減り、希に起こる奇跡的現象は、心を動かすのである。

 生み出すためのエネルギーも変化で調整できるならば、必要絶対数は目減めべりして、循環の法則性の妙を編み出した。それが円満に治まったことから、何時しか宇宙の理となり、暗黙の了解が後に続いていた。


 神々が先行きに拘りすぎたから? うさぎの効力が眼になったが、楓花の飲んだものがその薬だったならば、時空間内に漂う時世がほっするものが育つはずで、楓花の意識が向く方向次第? となる。だからだろう、時代の寵児ちょうじと呼ばれた者たちは、気儘を絵に描いたような性格と云われるのである。


 まだたどり着けていないが、てなもんだ? と洒落を咬ますのが人間なので、生きているうちにお届けできることが、うさぎの当面の祈りであり、それを七夕に捧げていた。


 楓花が、訝しげにみていたので、うさぎはそれをおとぎ話調に話していた。


「それが、お母さんを神車だしにして話したかったことなの? 間違いなく なの」

 楓花が念を押したのは画策があるからだった。

「正直に云うと、風情を含め、失くしたものを紐解くつもり、でした」

 うさぎは微妙に話しをずらし、楓花の天の邪鬼を引き出すつもりでいた。

「失くしたもの?」

「はい、風鈴や打ち水などなど・・・」

「良かった」

「なぜ? 良いのです」

「お盆が近いから、そっち系か? と、想ったからね」

赤瞳わたしが、ミキの代弁をしたから? と想いましたが、お盆? ときましたか」

「そうだった? 御祖父おじいさんの骨もまだだし、お母さんの骨も、サキの実家に預けたままだった。どうするか相談に来たのが切欠だったけれど、色々ありすぎて、忘れていたよ」

「腐りませんから、良しですが、本人の希望は訊いてあるのですか?」

赤瞳とうさんこそ? 訊いてるの。御祖父おじいさんは、荼毘にも伏してないんだからね」

 うさぎは自身の口下手と、下手の勘繰りを弁えて、モジモジするしかできなかった。


 一寸わずかの間が流れ

「ピンポーン」と、チャイムが鳴り、ふたりが幻想から引き摺り戻された。

「サキ・・・」

「視ちゃいけない場面を想定して、チャイムを鳴らしただけだよ」

 朝宮サキは笑顔で言い訳して、

「男女の共同生活にあざしいことがないから、鍵をしてないことは承知しているけれど、身内というだけでお他人に代わりないからね。でも安心したよ。わたしが住んでいた時と、なにも変わってなくて」

「痣しい?」

「男女の営みが、肌と肌を併せるから、もちいたのでしょう」

 うさぎは囁くように、楓花に教えていた。

 楓花はそんな天然娘のサキを姉の様に感じているからか? なにも応えず

「結果としてこの家から嫁いだ形だけれども、この家は、楓花あたし赤瞳とうさんのものだよ。それよりも、母さんの遺骨がまだあるのか? 連絡を取ってくれないかな?」

「やっと、香をあげる決心がついたのね」

「正直に云うと、赤瞳とうさんの存在意味が解らなかったから、罵声のひとつでも浴びせること? ついでに、縁を断ちきるつもりで、この家に来たんだ。でも親身に狼狽える姿を眼にして、それが本物か? もう少しみてみようって想ったんだ」

「なんとなくだけど、それは解るよ」

「なんとなく? なんでよ。赤瞳とうさん為人ひととなりを知るだけに、そこは、解るわよ、でしょう」

「だって、楓花が気にしていたその傷も、今は隠されていないし、何よりも笑顔に血が流れていて、人間臭くなったよ」

 楓花は、はっとして自身の手で、自らの顔を触っていた。

 うさぎはそれを、ただ見守っていて、詞を発しないでいた。

「実子が言い負けそうなんだから、援護くらいしても、罰は当たらないはずだよね?」

 とおチャラげて誤魔化していた。

 うさぎはおもむろ

「記憶したものが経験で、情けを発生させました。それは奇跡ではなく、努力に見合うご褒美なんです。ご褒美が発生することが善行ですし、空想から産まれたのが、人間ですしね」と、答えた。

 楓花は少し考えてから

「まだ、要らない。もっともっと大きく育んでから、頂戴するわ」と、陳べた。

「業突張りにならずに、受け取りなさいよ」

 と、朝宮サキが、天の邪鬼を見極めて云った。

「だって、頂いて終えば、お母さんの里帰りが、悪意の妨害に遇うかも知れないからね」

「きっと大丈夫。消えそうな灯火だった楓花の灯火も、今は誰にでも見える標のように解りやすいからね」

「そのために、努力したんだから」

「当たり前にしないで下さい。妥協が堕落を生みますし、迷宮の入り口が玉手箱と違う点は,堕ちるからです。同じなのは、何処からでも進入できる点ですからね」

「堕とされるから、阿弥陀籤だと考えていたよ」

「籤に欲が憑きものだからですか?」

赤瞳とうさんが、化学を得意とする理由が解ったわ」

「だから、化学ミステリを専攻したのね」

「サキはその事を知っていて、楓花あたしに黙っていたの?」

「だって、ミステリアスな男の人って、魅惑を秘めているでしょう?」

「興味深いのが、人の深層心理、だったよね、赤瞳とうさん?」

「繋げるのが簡単なことを、経験できましたね」

「天然のサキのことだから、そこに悪意は存在してないから、・・・」

「怒るに、怒れません? よね」

「何なに?」

 楓花は、暗黙の了解に繋がったことで、諦めるしかできなかった。それでもサキが黙って要るわけもなく、ふたりは姦しく喧騒を囃し立てていた。

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